河童の皿箱
2025-08-03 08:22:10
13184文字
Public 遊戯王:長め
 

とある少年が持つサイキックについての報告書

Gボーイとファイアと娑楽斎が実験するだけ。


 少年がいつサイキックになったのかは定かではないが、少なくとも明確にサイキックであると判明したのは、リブロマンサー書に宿りし魂を操るものとして目覚めたことにある。本の世界から飛び出したヴィランへの対処のため、急行したエージェント、コードネーム『デスブローカー』が保護したのがそう。新たなるリブロマンサーとなった少年、コードネーム『ファイアスターター』と、その少年が守ろうと奮闘した少女、コードネーム『ミスティガール』であった。
 その後、チームとして組織され、秘密裏に活動を続けては、経験を積み続けてきた。までは良かったのだが、実をいえばこのリブロマンサー、なんの研究もされていない。だが、それも無理はない。なぜなら、彼らが住む地域は突出して科学技術が発展しているわけでもなければ、魔術や超能力に詳しいわけでもないからだ。故に、研究をしようにも施設はない。設備もない。知識もないの無い無い尽くし。そんな街に出現した異端こそが、リブロマンサーなのだ。
 そんな中、少年少女の師たる、組織の代理人が遠い街にて見つけたのが、娑楽斎という浮世絵師であった。かの代表作、驚愕龍 アメイジング・ドラゴンは、絵の実体化能力をフルに活用した特別な作品。意志を持ち、主人に従い、ビル街を駆け巡る龍の鮮やかなる輪郭を、そしてその頭に鎮座する術者の姿を目の当たりにした時、もしやこれは、少年のものに近しいのでは、と。

『ヴィランの凶行を止められるのなら、私は冷酷になり、どんな手でも使おう。だが、罪なき少年少女を実験台に縛り付けるほど、私は残忍にはなれなかった。甘いと謗られても、反論はできない。けれど、私ひとりではこの先には進めないんだ。どうか、協力してくれないか』

 深く刻まれた眉間の皺。その瞳に宿る暗い影。けれど言葉からは少年少女を邪険に扱いたくないと。背をピンと伸ばす、真摯な男の態度に、絵師はふっと笑った。自分に近しい、絵に関するサイキックを持つ少年の世話を見てほしい、なんて不可思議な仕事。興味が湧かないわけがなかった。

『いいぜ。ただし、お前達にとって、俺は邪教の徒。それでも、俺の助力を求めるか?』

 男はただ、頷いた。『構わない』、と。自分が犠牲を払うのならば、悪魔にでもなってやると豪語する男の、迷いのない言葉。メガネ越しの鋭い眼に落ちる、神への失望。混ざり合う色に、一体何があったのかと突っ込みたくなるが、まあ、それはそれとして。
 自らを邪教の徒と表現したのには、過去のとある出来事と、絵師のサイキックの捉え方にあった。

 「あー、まあ。なんだそのこれはあくまで、俺たちの文化圏の話だ。否定するも肯定するも自由だが、ひとまず捉え方の話として、聞いてくれ」。キャンピングカーを荒野に走らせ、ハンドルを握る絵師は、力の源はなんなのかという考察の際、歯切れ悪く切り出した。不思議そうな顔をする戯画と少年が首を傾げれば、絵師は続けた。

 絵師の力の源、八百万の神の招来について。