河童の皿箱
2025-08-03 08:22:10
13184文字
Public 遊戯王:長め
 

とある少年が持つサイキックについての報告書

Gボーイとファイアと娑楽斎が実験するだけ。


 じゅわりと炙られ滴るは、良い焦げ目にプツプツ浮かぶ、極上の脂。牛肉のブロックがどドンと鎮座し、焼かれる網の上。待ちきれぬ戯画はまだかまだかと目を輝かせ、けれどその隣に並ぶ野菜には目をくれない。
 「野菜も食えよ」と絵師が、肉と野菜の双方を盛り付けてやると、戯画は露骨に嫌そうな顔をしては、唇を尖らせて渋々口にした。けれど一度口にすれば、甘辛のタレをたっぷり絡めた肉とかぼちゃのハーモニーに目を瞠り、絵師と少年はプププと笑った。「ほら、少年。お前も」と、皿に盛られた贅沢を、少年もまたじっくり味わってみれば、けれど戯画と同じ顔。堪能している様を見て、絵師は満足げに微笑んだ。
 「あの、あれ。それは何をしてるの?」。少年がふと、絵師の近くで熱されているメスティンを指さした。「米炊いてんだ。あーっと。俺は極東の生まれでな。こういうのを食う時は米が欲しくなんだよ」、と。ほえーと、クツクツと蓋が震えるメスティンの隙間から、プシューを噴き出る蒸気を眺めれば、優しく、甘い匂いが漂い、ついつい涎が出てしまう。
 「ってか、そうか。お前達の国だとバーベキューつったら直火じゃなくて燻製だったか、わりぃ。俺たちの国だとこんな感じでよ」。苦笑をこぼした絵師に、戯画は笑う。「いいじゃねぇか、異文化交流! 俺はこの肉だって大好物だぜ?」なんて。
 ピピピピと時間を知らせるタイマーと共に、メスティンをひらけばふわり広がるほのかな香りと、真っ白に輝く艶々の米と。「ほら、皿出せ。お前らにも盛るからさ」。言われるがままに皿を差し出し、ホカホカの飯と、切り分けられたステーキと。堪らずかぶりつき、脂にとろける上品なソースに米をかっ込めば、あぁ、なんたることか。これが、異国の味。癖になってしまう。
 ふたりの世話と、火の世話をし続けていた絵師もまた、丼に盛り付けた炊き立てご飯に、これでもかと贅沢に薄切りステーキとにんじん、椎茸やピーマンを盛り付け、ソースも忘れず。「いっただきます!」、力強い宣言ののち、一気に掻っ込めば、あぁ、これこれ。これこそ至福、醍醐味と、口いっぱいの幸福に、舌鼓。



 とっぷり暮れた森広場。絵師はふたりを先にキャンピングカーに乗せ、片付けを済ませては、ひとり。森の静寂に、いや、風鳴りと、虫と鳥の奏でる喧騒に、耳を澄ませた。
 たぶん、こんな感じの音を、あいつも聞いてるんだろう。ふと空を見上げれば、あと少しで満月になる月がぽっかり浮かんでいる。「こういう忙しさが来るたぁ、思っちゃいなかったな」。誰に話すでもなく、けれど、遠くとも同じ空の下にいる仲間たちを想えば。

 「……俺も、頑張らねぇとな」。そう呟いては、今日の宿こと、車に戻る。