望月 鏡翠
2025-07-21 23:07:02
10761文字
Public リアタイ
 

シズメ 04

シズメ/三角 麻弓/南国期間


 二ヶ月も学校で過ごすと聞いたとき、インターネットが通じないところで二ヶ月も過ごすなんて、退屈しそうだなぁなんて思っていた。
 しかし同時に、目の前に広がる海に感動もしていた。
 生き物の種類を記録しているだけで、退屈は潰れるかもそれない。
 しかしそんな心配をする必要なんて全くなかったのだ。
 目が覚めると体育館の天井がいつもよりも明るく見えた。窓から差し込む光の色が変わっているのだ。
 外の色が、違う。
 珊瑚礁に色鮮やかなイソギンチャク。鮮やかな魚がエメラルドグリーンの海の中で光を反射しながら泳いでいる。
「生態系が変わってる!!」
 気温や潮の流れが変わっただけではこうはならない。地形や窓の外に見える学校の建物などはそのままだが、泳いでいる生き物が丸ごと変化している。
「すごいすごい!」
 はしゃいでカメラのシャッターを切る。
 窓の外にレンズを向けただけで、まるで宣材写真みたいな綺麗な映像が撮れる。
 どうなっているのかなんて、きっと考えてもわからないのだろうけれど、二ヶ月間退屈するかもしれないなんて思っていた昨日までの自分の背中を蹴り飛ばしたい。
 全然退屈しない。
 この変化は、ずっと続くの?
 それともまた変化をする?
 移り変わって言ってしまうのなら、今目の前にあるものを少しでも多く記録しないと。
 シズメ高校の周辺で観察できる生き物とは全く違う。名前を知っているものの、実物を見るのは初めての生き物がたくさんいる。
 ひょっとして霊山の山頂でみたヤドカリや貝殻も、違う種類になっているのかもしれないし、先週見た渡り鳥が今どうなっているのかも確認したい。
 屋上に向かった麻弓の視界の端を何かが横切った。
 とても小さな、人間ではない大きなの生き物。
「え、なに?」
 ダンゴムシがいなくなっていたから、人間以外の生き物は学校の中には残っていないと思っていたのだけど、もしかして違ったのだろうか。
「でもそれってゴキブリとかもいるってことになるよねぇ」
 視界を横切った生き物がネズミじゃありませんように。