火の試練を踏破し、石窟壁画の完成を見届けた後。
石窟の浮岩の一つに座り、天井画
―王国の各地の大精霊、王城、そして『金色の人物』
―をぼんやり眺めていた時だった。
「そういえば、さっきネモが試練で見せてくれた力
……アレって、キミが急に倒れた後から使いこなせていたね?」
隣に座る白イタチのガーベラに尋ねられて、オレは頷いた。
「おう、あの時、実はすげえ変な夢見ててさ。影の夢」
「影の夢?」
「そう。最初は大精霊様達より大きめな影が出てきて、オレくらいの背丈に縮んで近づいてきて、光る塊を差し出して。それを受け取った後に、お前が起こしてくれた」
「光る塊、か
……不思議な力に、巨大な影、うーむ
……」
アイツは、天井画の『金色の人物』を見つめ、暫し考え込んだ。でも。
「
……今はまだ、夢の意味の判断材料が足らないな。けれど、その影がくれた光の塊はネモへの贈り物のはずだよ」
「贈り物?」
そう首を傾げるオレの目の前に、ガーベラは座り直す。
「いいかいネモ。今のキミはね、他の星の子では気づけない、忘れ去られ薄れゆく誰かの思念に、呼び掛けて繋がる事ができる。謂わば“交信”と呼べる力さ」
“交信”の力。
オレやガーベラが、オレの能力をそう呼び始めたのはこの時からだ。
「じゃあ、お前の視界とオレの視界を共有したりしてたのも“交信”か?」
「手で触れた他人と直接意識を繋げて、見えるものや聞こえるもの等を共有する
……“直結交信”と呼ぶべきかもね」
オレは、自分の両手を見つめる。
あの夢以降、見た目は変わらずとも、この手で出来る事は大きく変わった。
物を持ったり、使ったり、誰かの手を握ったりするだけじゃねえ。
オレが望めば、それ以上の事も引き起こせるようになった。
「おそらく、キミが初めて石窟を訪れた時から、力が不完全に目覚めて暴走してたんじゃないかな。そして、影の夢を見るまでは思念そのものの姿も見えず、“直結交信”も使えない状態だった」
ガーベラ曰く、旧い先輩達の記録の中には、不思議な力を操れるようになったり、逆に振り回された星の子の話も載っている。
稀な事ではあるが、事例はゼロじゃない。
オレの場合は、『力に振り回される方の事例』に当てはまるんだそうだ。
「キミが見てきた悪夢の中の他人の記憶と、私が集めた旧き星の子達の文書の奇妙な一致。突発的にキミを襲った重度の記憶混濁。振り返ってみると、キミが能力を暴走させていなければ起こり得ない事ばかり」
「悪夢を見てたのも、記憶混濁が起きてたのも
……オレが無自覚で、周囲の精霊や星の子の残留思念を無差別に集め続けた所為って事か?」
ガーベラは少し考えた後、頷いた。
「だと思うよ。キミが夢の中で贈り物を受け取らなければ、“交信”の力は完全に目覚めなかったし、試練の後に出たいつもの症状も軽度では済まなかった。あの症状は、キミが力を使った反動なんだよ、ネモ」
そう言われて、長く抱えていた苦しみが、炎に当てられた氷のように溶けていくような
……心地良い感覚が走ったのをよく覚えている。
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