【#深淵覗きの断章】ネモと、影の夢の贈り物

ネモフィラが語る、『深淵覗きガーベラ』との出会いの経緯と、異能力“交信”の目覚めの話。
Twitterで連載していたやつの加筆修正版となっております。

⚠原作の諸要素に対する独自解釈・捏造・オリジナル設定あり⚠

Fanmade by チーバオ(QiBao)
#sky創作 #sky二次創作


「ネモ……良かった……あのまま目覚めないかもって思ってた……
 オレの手をずっと握り締めていたガーベラは、その直後に驚いて飛び退いた。

「ガーベラ?!」
……私、いま、私自身を見てた。キミの目で」
「は?」

 最初は訳が分からなかった。
 でも、アイツの提案でもう一度手を繋いで、その言葉の意味を理解した。
 普段以上に、アイツとの『繋がり』が強く感じられたし、アイツの視界を介して、オレはオレ自身を見下ろしていた。

「おいおいおい、どうなってんだよこれ……何でガーベラの視界が……お前、今目は見えてるのか?!」
「落ち着いて……私の目は普通に見えている。今度は、さっきみたいにキミの視界を私に貸してほしい」
「はぁ?!」
「実験だ。そういう風に念じてみてくれ。私は目を閉じてるから」
 仕方なく意識を集中させ、目を瞑り、開く。
 すると、視界は元通り、目を閉じたガーベラからオレのものに切り替わる。
 アイツの手を強く握り、アイツを見上げて、アイツの意識にオレの視界を繋げる様をイメージしながら呼びかけたのさ。
「オーケイ、ガーベラ。目を開けてくれよ」
 ガーベラはオレをじっと見つめて、「成る程、成る程」と笑った。
「ちゃんと、キミの視界が見えてる。キミ、こんな風に『白イタチ』の私を見上げてたんだね……おや?」
「ん?」
 オレも、オレの視界を使っていたガーベラも、ガーベラの背後闇の中で燃える白蝋燭の道のずっと奥に、淡く光る無数の何かを見つけた。
「なあガーベラ、一旦オレの手を離してくれ」
 その通りにしたガーベラは、オレの見ている方向を見つめ直し、困惑した。
「消えた……さっきの光……あれ、もしかしてキミにしか見えないのかい?」
 オレは頷いて、ガーベラに手を差し出した。
「そうらしいな。だから、オレが手を引くし視界も貸してやるぜ」

 きっとあれが道標になってくれる、って予感がしたからな。
 《ずっと前から似たものを知っている》ような、不思議な感覚もあった。

 オレはガーベラの手を引き、靄の怪物のルートを避け、白蝋燭を辿り、淡い光の源を目指した。
 その正体は、精霊や星の子と同じくらいの大きさの、数多くの不確かな霊体だった。
 精霊の記憶に似てるけど、それよりずっと朧げで、弱々しい。
 オレの視界でソイツらを見たガーベラも「こんなもの、生まれて初めて見た」と驚いてたな。

「コイツら、この試練に残留してる思念かもしれねえぞ」
 石窟の第二壁画四つの試練と脱落した精霊達が描かれた壁画を思いだして、そう確信した。
 理由は解らねえけど、オレの目には、遥か昔に試練に挑戦した精霊達や、直近で試練に挑戦した星の子達の思念が視えていた。
 星の子が持つ『精霊の記憶を辿る』能力と、似てるようで異なる力によって。
 精霊と思しい霊体はだいぶ薄れていて、見た目や形も判然としない。きっと物凄く古いヤツだからだ。
 一方、星の子と思しい霊体はまだはっきりしていて、特に輝きが強かったのは、三人組の霊体だった。
 オレに対して呼びかけている。何故だか強くそう感じた。
「この子達、私が触っても、蝋燭で灯しても、何も起きないな」
「多分、見えているオレでないと、ダメなんだ」
 一呼吸置いて、オレは三人組の霊体に近づき、大鳴きで呼びかけた。
 すると、見知らぬ星の子達の姿が、声が、オレの意識に流れ込んできた。

(((わかった、わかったぞ! こっちの道が正しいんだ!)))
(((待って、置いていかないで!)))
(((大丈夫よ、ほら、私の手を握ってなさい)))

「ネモ、今のは」
 アイツにも、オレを介して見えていたし聞こえていたらしい。
「オレ達の前に、ここを踏破した星の子達の記憶だ! 追うぜ!」
 星の子達の記憶はより強く輝き、火の玉となって先へ進み始める。
 そして、時々霊体として現れて、まだ灯していない白蝋燭の道を指し示した。
 オレとガーベラは、喜びと達成感に満ちた記憶を夢中で追いかけて、火の試練の終点力を授かる瞑想の像まで辿り着いていた。

 勇気の知恵の力で靄の怪物を薙ぎ払い、光の翼も手に入れて。
 オレたちはようやく、無事に石窟に帰還した。
「ありがとう、ネモ。キミのおかげで上手くいった!」
 ガーベラに抱き締められた時、いつもの眩暈と記憶混濁の症状に襲われたけど、それは今までで一番軽度で短いものだった。