オレが生まれたのは、孤島の預言者の石窟が見出されてから数週間経った頃。
そして、あの厄介な症状に悩まされるようになったのは、石窟の試練
―当時解放されてた水の試練と地の試練を踏破してからだった。
「お願い
……僕の大切な友達
……目を醒まして
……」
「ああ、実験は成功だ。掘り出した標本が蘇生したぞっ!」
「大精霊様ぁ! 我らをお助けくだされ!」
「いやだ、まだ何も
……成し遂げてないのに」
「これが、俺達への罰だというのか」
毎夜見る、知らない精霊や知らない星の子の記憶の悪夢。
嫉妬、怒り、悲しみ、憎しみ、混乱、対立、別離、崩壊、その他色々
……多数の朧げで不穏な記憶がごちゃ混ぜになっている。
目覚めている時も、そいつらの記憶が唐突に、オレの意識に混ざり込む。
そして、激しい眩暈と共に、オレの記憶は少しの間滅茶苦茶になってしまう。いわゆる記憶混濁ってヤツだ。
書庫の『秘密の場所』で手に入れた空色のケープを纏い、オレ自身に「ネモ」という名を付けて名乗るようになってからは、オレが誰なのかすら解らなくなる頻度は多少減らせた。
それでも、ひどい時は錯乱したり、意識を失うこともあった。
出会った星の子は、皆オレを避けた。
腕っぷしの良さそうな奴らまで、雛鳥のオレに怯えた。
オレはこの苦しみを抱えたまま、ひとりで星の子の使命を続けるしかない。
視てきた記憶のようなつらい出来事が、オレにも起こるなら。いっその事そうした方がいいんだ。
助けてくれる奴が、解ってくれる奴が居ようと居まいと、どうでもいい。
どうせオレは拒まれる。
オレの事は、オレひとりでどうにかする。するしかない。
あの日、雨林の神殿付近でいつもの症状が出て、冷たい雨を浴びたまま気絶する寸前
……そう思ってたのさ。
けどな、その後オレは、背の高い白イタチ仮面の星の子に助けられた。
すらりとした黒ズボン服、橙色と臙脂色の重ねケープ、預言のペンダント、捨てられた地の大精霊とお揃いのモヒカン三つ編みヘア、金紫のタッセル髪飾り。
そして、背中のランタン。
「全く、この格好で探索してて大正解だったよ。でなきゃキミを運ぶのに手間取って、キミの大事な翼を散らしてたかもしれない」
大きな木のうろの中で目覚めた時、アイツはオレにそう囁いた。
ああ、この子と仲良くなりたい。
強くそう思ったけど、どうせ無理だと思ってしまって。
「助けてくれてありがとう。オレ、もう大丈夫なんで探索に戻ります。ひとりでどうにか出来るし」
そう言って、アイツと別れる事にした。
「わかった。私も他に色々やる事があるから、ここで『さようなら』だな。でも
……」
少し黙った後、白イタチのアイツは楽しげにこう言った。
「キミとは、また何処かで会える気がするよ」
これが、オレとガーベラの一度目の出会い。
二度目は、草原の交流広場だった。
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