葉咲透織
2025-05-19 16:18:27
12537文字
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帰還ifシャアシャリ、全部まとめてみた

帰還ifシャアシャリ企画のために、これまで書いたものをまとめました(一部pixivのリンク)女体化と戻ってこなかったifは抜いてあります。さすがに……。



変香


 「大尉は、花の香りがするな。甘いだけじゃなくて、爽やかでもあり、青くもあり」

 すんすんと首に鼻を近づけて匂いを嗅ぐのが、シャア大佐の癖だった。もちろん、人前ではやらない。ベッドの上、存分に蹂躙した私の体を抱き締めながら、顔を埋めるのだ。

「自分では、わかりません」

 おそらく、大佐以外は誰も気づかない匂いである。何せ私は、オメガとしてはでき損ないだ。フェロモンの分泌量は平均の五分の一未満、発情期もほとんどない。少し熱っぽく感じるだけで、他のオメガのいう耐え難い餓えを知らない。

 だからこそ、木星までの長い旅に出ることもできたし、軍に入ることもできた。オメガは繁殖以外は役に立たないとまでは言わないが、どうしても、できることが限られてしまう。

 一生アルファと縁を結ぶことはないと漠然と感じていた私を、ソドンで迎えた大佐は、すぐにオメガだと見破った。そのときも、「甘い匂いがする」と、鼻を寄せてきたのだったか。

「私のフェロモンを感じ取れるのなんて、大佐だけですよ」

 背後から抱きつかれ、腹に腕が回っている。妊娠するかどうかもわからぬ身だが、少しでもリスクを避けるため、この胎に彼の精子は入れていない。なのに、外から少し押されただけで、きゅうん、と切なくなる。

 セックスなんて、しなくても平気だったのに、最上級のアルファと関係を一度結んでしまえば、あとはズブズブはまりこんでいった。
「他にも感じ取れる人間が現れる可能性もあるだろう」

 そっとシャア大佐が、項に触れる。

 ごつごつと皮膚が盛り上がっているのは、彼が噛み付いたあとだ。

「そんな奴が出てくる前に、つがいになれてよかった……

 心底安堵しているシャア大佐は、私を誤解している。

「そんなにモテないですから、心配しないでください」

 振り返っておおまじめに言えば、ぱちぱちと青く美しい瞳を瞬かせて、はーっと大きな溜息をつく彼。のしっと私の体を押さえにかかり、鎖骨に吸い付いてくる。下腹部にあたる彼の性の象徴は、再び硬く勃ちあがっていた。回復力に、これが若さか……と、思わず口をついて出そうになる。

「君の魅力について、私が直々に教えてやろう」
……お手柔らかにお願いします」

 応じると、彼は嬉しそうに「匂いが濃くなったな」と、抱きついてきた。



……と、可愛い君の匂いもよかったが」

 頭の奥がぼわっとする。なにも感じられない。ニュータイプの力は、加齢とともに徐々に右肩下がりになっていくと推測されているが、私が最年長であるため、他にサンプルがない。

 とうとう焼きが回ったか? なんて考えている間に、大佐の手が視界の中でひらひら手を振っていることに気づく。ようやく夢心地から戻ってきた意識で、つがいである彼の心に触れる。大丈夫。私はまだ、ニュータイプだ。

「昔の私の方が、よかったですか……?」

 空白の五年。肉体的には老いていない彼はまだ二十歳で、こちらは順当に年老いて三十も半ばにさしかかろうとしている。当時ですら、九つの差につがいとなるには葛藤したものだが、年増のオメガとつがいを解消できない大佐が哀れで仕方ない。

「そんなことは一言も言ってないだろう」

 む、と突き出された唇は、お菓子みたいで食べたくなる。私の思考を読んだ大佐は、とろけるようなキスをしてくれた。

「ん、むぅ」

 キスだけですぐに火がつくのは、ヒートのせいだ。

 大佐がゼクノヴァで行方不明になってから、私の体は変質してしまった。フェロモンの分泌量は増え、ヒートの症状は重くなった。初めての発情期には、泣いて暴れて手がつけられず、生まれて初めて懲罰室に入れられ、隔離された。以降、発情サイクルはソドン乗組員たちに周知され、三日前になると仕事を取り上げられる。

 幸い、よく効く薬が見つかったのでなんとか働くことができたが、そうでなければ、大佐を探す任務からは外されていた。仮定しただけで、ゾッとする。

 唇が離れると、すっかり発情しきった体を、私は彼の前に提示する。大きく脚を割り開き、濡れそぼってヒクヒク開閉する孔を見せつける。

「ん……いい匂いだ、シャリア」

 フェロモンの香りも、大佐に言わせればだいぶ変わったという。花よりももっと重い、蜜の香りが強いらしい。スッと消えるのではなく、いつまでも残るような。

 けれど根底には、五年前の私の、彼曰くの奥ゆかしい花の香もするらしい。相変わらず、自分ではまったくわからない。

「君が変わったのは、私のためだと思うとゾクゾクするな」
「ん、ぁ……

 髪型に表情、立ち居振舞いにいたるまで、大佐を探すために変えてきた。

 フェロモンも同じだというのか。つがいである彼にしかわからない匂いを、強く、印象的なものに変えることによって誘い出すつもりで? 

「シャリア。私の可愛いつがい」

 歯の浮くような口説き文句も、シャア大佐だからこそ様になる。

「あなたのためなら……なんにだってなれます」

 目を瞠った彼は、すぐに嬉しそうに細めた。

「なら、なってもらおうか? ……私の子の母親にな」
「え、あ、うっ!? んぁ、あぁっ!?」

 なんですって、と聞き返す前に押し入ってきたペニスにはゴム膜がない。抜き身の状態で、遮るもののない熱さ、心地よさに驚き、喘ぐ。

 私の胎は貪欲で、愛するアルファの精子をようやくもらえるとあって、喜び震えている。発情期中のセックスでの妊娠確率は非常に高い。

 私が大佐の子どもを? 

 戸惑う心よりも、体は正直だった。私の体を穿つ大佐は、ウッと顔をしかめる。

「シャリア……またフェロモンが濃くなったぞ」

 あてられて、鼻血を出しながら容赦なく動かす彼の腰に、私は脚を絡めることで、中にねだる言葉のかわりとした。