葉咲透織
2025-05-19 16:18:27
12537文字
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帰還ifシャアシャリ、全部まとめてみた

帰還ifシャアシャリ企画のために、これまで書いたものをまとめました(一部pixivのリンク)女体化と戻ってこなかったifは抜いてあります。さすがに……。



ブルーローズ


「シャリア」

 名を呼ぶと、しゃがみこんだままで彼は振り向いた。そこを、パシャリとシャッターを切る。驚きに瞬かせていた目を、シャリアは細めた。

「もう。撮るのは別に構いませんが、不意打ちはやめてください」

 フィルムが勿体ないですよ、という小言はありがたく頂戴するが、聞き入れるかはまた別の話である。シャリアを収めた写真は、失敗作など一枚もない。

「それにしても……
「シャア?」

 言葉を切ったシャアに、シャリアは首を傾げる。ニュータイプの中でも、読心や精神感応に優れた彼は、初対面のときの「心を読みすぎるな」の言葉を、いまだに忠実に守っている。

 もう、本当に隠し事なんてないのに。

 シャアたちの目の前に広がるのは、薔薇園である。様々な色の花を、シャリアはひとつひとつ確かめながら歩いていた。

 自分を取り戻すまでに、五年。相当無理を通してきた彼は、シャアの前でだけは、あの頃のシャリア・ブル大尉に戻る。

 潔癖で従順、純粋な彼。政治のあれこれなど知らず、波にさらわれそうな男に手を差しのべたのを、つい昨日のことのように覚えている。

 シャアは微笑みを浮かべ、シャリアの髪に触れた。グレーグリーンの、淡い色。セットされていたのをわしゃわしゃと崩すと、ますます中佐ではなく、大尉時代に見えてくる。

「君は花に愛されているようだな。君と一緒だと、花がより映える」

 シャリアの淡い翠のイメージが、植物とうまく調和している。どんな場所にいるシャリアのことも撮影したいとカメラを構えてきたが、今日のこの花園が、最も心惹かれた。

 彼は立ち上がり、シャアのことをじっと見つめる。

「どうした?」

 尊大な物言いに、彼は微笑みを浮かべ、シャアの頬を両手で包んだ。家でならまだしも、屋外でこんな風に彼の方から触れてくるのは初めてで、シャアは呆然とする。

 そのうちに、シャリアの指は頬から唇、首筋を擽り離れていった。

「それならば、シャア。あなたは私に愛されるために生まれてきたんですよ」

 金の髪も、青い瞳も。今は着ていないけれど、あなたを象徴する赤も。

「全部、花と同じ色です」

 ほら、と彼が示した指の先には、鮮やかな赤い薔薇。黄色の薔薇もある。

 胸を掴まれた。物理的にではなくて。シャアの心は、彼からの愛で溶けていく。泣きそうになるのは、いつ以来だろう。

……青はないだろう?」
「ありますよ?」

 自信満々に言うが、シャアの瞳ほどに真っ青な薔薇は、自然には存在しないし、遺伝子を組み換えた品種であっても再現は難しい。

 シャアの手を取って、シャリアは自分の胸に当てさせた。鼓動がトクトクと伝わってくる。ニュータイプでなくとも、触れればわかることが、人の身体にはたくさんあるのだと実感する。

「ブルーローズ。この胸と、あなたの胸のうちに」
「あぁ……」 

 不可能を可能にし、奇跡を起こす――……まさしくそんな人生を歩んできたし、これからも戦いは続く。 

 シャリアは、そんなシャアを愛し、支え、輝かせようと努力してくれる。同じだけのものを自分は、返せているだろうか。

 少し不安になったシャアを、シャリアは慰めるように抱き締めた。

「大丈夫。あなたのへ愛で、私は生きているんです」
「シャリア」

 今度こそ、涙が落ちた。真摯な想いを、嘘偽りのない愛情を、彼は自分に注いでくれる。ならば自分も、彼に愛を贈るしかない。

「愛している。ずっと傍にいてくれるか」
……はい。あなたがもういらないと言っても、私は」

 不要だと切り捨てるわけがない。

 抗議のキスをすると、どこからか喝采か聞こえた気がした。