葉咲透織
2025-05-19 16:18:27
12537文字
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帰還ifシャアシャリ、全部まとめてみた

帰還ifシャアシャリ企画のために、これまで書いたものをまとめました(一部pixivのリンク)女体化と戻ってこなかったifは抜いてあります。さすがに……。



家族ごっこ


「あ、おじさん! 私あれ食べたい!」

 赤い髪の女子学生が、飾ってある食品サンプルを指してはしゃいでいる。パフェとかケーキとか、そんなキラキラしたものかと思えば、海鮮親子丼だった。

 かわい~! と、はしゃいでいるが、若い子の考えていることがわからない。年の近いところでいえば、コモリ少尉やエグザベ少尉だが、彼らとはやはり、別の生き物である。

「マチュさん」

 振り向く彼女は、シャリアと目が合うと、そわそわと忙しなく視線を動かした。

「なんでも好きなのいいよ、って言われたから……あっ、ニャアン! ニャアンはガンダム乗ってないけど、ね、ずっと一緒だったから、ね!? ニャアンもいいでしょ、おじさん!」

 恐縮しきりで、背中を丸めている少女にじゃれついているマチュ。溜息をつきかけて、ニャアンの顔色を伺う。ここで呆れた様子を見せたら、こたえるのはマチュではない。彼女だ。シャリアはぐっと押し込めた。

 ジークアクスを奪い、赤いガンダムとともにクランバトルを荒らし回ったマチュたちに、シャリアは協力を要請した。今日はその、達成のお礼をする日ということで、終日オフなのである。

 本来ならすぐに礼を済ませたかったのだが、そうはいかない事情もあった。すべてが解決してから数ヶ月経って、ようやく動けるようになったのだ。

「マチュさん。君みたいな女子学生に『おじさん』と呼ばれて、あれこれ奢らされるのは、傍から見るとちょっと、誤解を与えるというか」

 マチュはちょっと考えて、「あー。パパ活?」と、無邪気に言い放った。んん、とシャリアは咳払いする。そうなんだけど、口に出して言うべき言葉ではないだろう、それは。

「うーん。でも中佐って呼ぶのは外ではあんまりよくないんでしょ? じゃあやっぱりおじさんしか……あ、お父さんは?」
「君の本当のお父さんに申し訳ないから、やめておきなさい」

 身辺調査は済んでいる。彼女の父は外交官で、めったに自宅に帰ってこない。知らぬ間に、娘がお父さんと呼ぶ男が他にできていると知られたら、ショックで寝込むかもしれない。

「だいたい、君たちみたいな大きい子、何年前に産んだっていうんですか」

 と、ちょっとだけ老けて見られることを気にしているシャリアは反論した。今年三十五歳になる男だ。高校生の娘など、持てるはずがない。

 マチュの目が、じっとりしたものになった。ニャアンもまた。そして、ふたり同時に「あ」と声をあげる。

 なんですか、と振り向く前に、肩を捕まれ、耳を噛まれるほどの至近距離で、声を吹き込まれる。

「ほう。シャリア・ブル中佐。君は子どもを産めるのかな? ならば産むのは、私の子以外にありえない。そうだろう?」

 急なことに、カッと身体が熱くなる。耳を押さえて振り向き、男の胸を押して距離を取ろうとする。なのにがっつりとホールドされてしまい、こんな往来、子どもの目の前ですることじゃない。

「い、言い間違っただけでしょう!? 揚げ足を取らないでください!」

 もうひとりの協力者・シュウジと赤いガンダムについて話をしていて離れていたのは、元々のガンダムのパイロット、シャア・アズナブル大佐である。ネットにもあがっていた仮面は、コロニーでは目立ちすぎるため、大きく色の濃いレンズのサングラスをしている。シャリアに言わせれば、目立ちたくないのなら、赤ではなくもっと地味なジャケットを着てくるべきである。

 三人の協力を募ったのは、彼を取り戻すためであった。無事に帰ってきた彼に、子どもたちの話をすれば、ぜひ自分も礼をしたいと言うものだから、今日になってしまったのだ。

「あ、シュウジシュウジ! これ! 食べたい! 赤いの」
「本当だ。赤くてかっこいいね。ガンダムと同じだ」

 今度はかっこいいときた。本当に、若者の感性はわからない。ついていけない。そう思ったが、同じく若者であるニャアンは複雑そうな顔をしていたから、年齢は関係ないようだ。もしも彼女が部下で、同性であったのなら、肩に両手を置いて、おおいに共感を示すところだ。

「赤い? ならそれは、私専用ということだ。マチュ、シュウジ」
「大佐……

 どうして彼らの言語と思考についていけるのか。シャアはふざけているわけではなく、わりと本音で話していることが、ニュータイプゆえにわかってしまう。

「ずるいよー」

 本気の言い争いに発展する前に止めなければならないと、シャリアは彼らに駆け寄った。




「産んだ覚えのない子が四人もいますねぇ……
「シャリア? 今、私のことも子ども扱いしたな? シャリア? 私は君の夫だ。なぁ、そうだろう?」