akinoshiroihana
2025-04-14 21:38:13
11167文字
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名刺置き場1

2022入院頃~、ゲッター


20232.22

竜馬が猫を殺しかけた

かの、クレイジー·ビーム騒動の粗方片付いた頃である。
ブラウン管の向こうの各界の重鎮が見せたのが至ってわかりやすい「故障」であったのに比すればそれはいささか陰険だった

研究所に毎度のごとくあらわれたその宿無しとおぼしき猫はつややかな黒猫で、これは久々に非の打ち所のない「ハヤト」だと、ミチル手ずから深紅の絹のリボンをかけてももらっていたというのに。
「たのむからそいつに誰も近付くな!」
そう主張するいっぽうで自分で餌ひとつ与えることもしない。いい加減にしやがれと静かに腹を立てた隼人が猫を抱き上げれば竜馬はこの世の終わりのような顔になった。

「虐待だの、殺したいとかじゃないんだ、ただもう今の俺はあのビームの影響が抜けていなくて、本当に変で」
「いいぜ、笑わねえよ」
「猫のハヤトの方も人間の隼人に見えてる、ただし赤のマフラーしか纏っていない格好で!」
「」
「イヤだわ、ハヤトのあれはリボンなんですけど?」

「今ならウェルテルの悩みがよくわかる」
心の全てで愛し崇めた女性を抱く夢を見たショックで自らの脳天をぶち抜いてしまうゲーテの短編小説だっただろうか、学業優秀ながら、サボれるところは抜かりなくサボる竜馬がその薄さに読書感想用に選んでみて頭を抱え、結局隼人がシニカルな感想文を書くに至ったのだが━━━さりとて早まった真似をされては困る
「あと隼人がハヤトをかわいがっ━━━優しくしているのを見ていると物凄く倒錯的で見てはいけないものを目の当たりにしているわけで、とても辛いのに目が離せない」
さりとてビームの効果が消えるまで、彼にはもう何一つ告白も懺悔もなしで寝ていてもらうのが一番平和ではなかろうか、彼らは言葉にすることなく目線を交わし、隼人はいつぞやの全員特攻作戦以来でその拳を固めた。

かくて

ふわふわの毛布から身を起こした竜馬は目の前の存在におそるおそるといったふうに手を伸ばし、その感触にほっとした様子でちゅ、と額にキスしてから言った。

「聞いてくれ、隼人が消えて、猫隼人が二匹になった」


いいぜ、笑わねえよ
笑えねえ。竜馬の手の中の黒猫が、聞き慣れたあの声で物言いじたばたと身をよじった。