akinoshiroihana
2025-04-14 21:38:13
11167文字
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名刺置き場1

2022入院頃~、ゲッター



そこの薔薇(そうび)をも少し切れ、繁りすぎじゃよ油虫がきよるわ

庭師が切り落とした花数輪を拾い上げ、ふむと考え事する半蔵は、久し振りに山崎の女のもとを訪ねる気になったか、それとも早世の許嫁の月命日まで花がもつかを案ずるいつものことか。

「アブラムシだとぉ?てっきりあの糞素早うて空も飛びよる方かと目が覚めたわ!」
「アリマキの方じゃよ」
先日、「竜馬」が山奥の道場に引っ込んだ後の時空に旅してからというもの、五右衛門はすっかりこの通りだ。
咬んだり刺したり腐敗をもたらす速攻害のある虫達とは違って免疫のなかったそれが、ほったらかしの酒の肴に、誰に送られたやらなにやらゆかしい醍醐、いやチーズにくっきりと齧り跡をつけており、目にした竜馬が皿ごとそれを素手で叩き潰して以来。

「ああ嫌じゃイヤじゃあの白いハラワタはみ出させながらでも逃げる油虫は、あのゴキブリは本当にきらいじゃ」
あれを追い掛け何度も叩きよった竜馬もいやじゃ!
「隼人からの進物か何ぞであったんであろ」
何があったかわからんが久方振りの。あやつの気持ちもおまえの気持ちもわからんでもないが、しかしの、
「御器被(ごきかぶ)りがそう呼ばれるようになるのはもう二百年ほどあとじゃ」
「あ」
あの虫の名、『猿』も知っておったな、あやつめ、いつの頃に飛んでおるか

茨の花から鋏で棘を落とすことは
「隼人」の所作にならった。彼の周囲に取り入るのがうまい実業家の名刺でも辿り着いてはいないか、飛んでみるかと考えつつ、もう百年ほどして「なぽれおん」の妻が交配を進めてくれねばまだ至ってささやかな花の茎をくるくる回しつつ振り返れば、
「やっぱりゴキブリはいやじゃ」
いつもの布団ではなく畳の上、五右衛門が一寸たりとも動かぬというように寝仏のように転がっている、

半蔵は覚えずうすく笑う。

その貌は神隼人にあまりに似ていた。