nuka_boshi
2025-03-08 17:29:52
25563文字
Public 利吉さんで賽殺しパロ
 

【RKRN】転生したら母親が伝子さんだった利吉さん その2【シリアス死ネタ】

前回に続き賽殺しパロ。そろそろこの世界がなんなのか解説され始めます。
前回、まだまだジャブ程度だというのに利吉さんが勝手に発狂しやがったので、不甲斐ない利吉さんの為に予定を大幅に早めてお助けキャラを投入しました。こんなところで発狂するとは情けない。
とは言えあまりにお助けキャラを出しすぎると今後の展開に響いてくるので、なるべく理由を付けて行動を制限する予定です。
とりあえずまだまだしばらくは曇らせの前振りです。前振りですがネタバレ。今回も利吉さんがやっぱり曇ります。

(※ちょっと長くなりすぎたので章タイトル変更、というか分割。)



 ――結論から言おう。宝探しは散々だった。乱太郎やしんべヱが持ってきたものといえば、キラキラ尖った硝子ガラスの破片(怪我をすると危ないので流石に取り上げた)、甘い蜜が吸える雑草、中にヒビが入ったビー玉、セミの抜け殻……といった類のものばかりで、なんの参考にもならないのだ。
 仕方なしに私も適当に見つくろったお宝(団栗ドングリだとか松ぼっくりだとか、本当に無価値なものだ)を見せあい、これは乱太郎に一票、これはしんべヱに一票とこれまた適当な評価を付けていく。――まったく、これでは本当にただ遊んでいるだけだ。
「今日はありがとう、良い気分転換になったよ。けど、そろそろ陽が落ちるから帰ろうか」
 私は苦笑しながらそう提案する。
「えっ? ――あっ、ホントだ、もうこんな時間」
「でもどうして分かったの? 利吉さん、時計見てないよね?」
 きょとんと首を傾げる二人に私は苦笑して「さっき猫が通ったからね」と教える。きょとんと首を傾げる二人に、猫の瞳孔の開き具合で大体の時刻がわかるのだと伝えようとして、私は言葉を飲み込んだ。――危ない。今の私は、記憶喪失ということになっているんだった。
「ほら、猫もお腹が空いた頃かなと思って」
「あはは、利吉さんもしんべヱみたいなこと言うことあるんですね」
 苦しい言い訳だったが、なんとか誤魔化せたらしい。「また今度宝探しやろうね」などとはしゃぐ二人をほどほどに相手にしながら帰路に着く。――どこか遠くで、セミの声が聞こえ始めていた。
「それじゃあ利吉さん、また明日ね。ばいばい〜!」
「気をつけて帰るんだよー」
「「はーいっ!」」
 二人を見送り、私は玄関の戸を開ける。
「利吉。お帰りなさい」
……伝子さん。帰っていたんですね」
「んもぅ、そこは『ただいま』でしょう!?」
 わざとらしく怒って見せる伝子に、仕方なく棒読みで「ただいま帰りました」と返す。我ながら心が全くこもっていない言葉だ。
「利吉。せっかくだから一緒に夕飯を作りましょう。カレーライスなんてどうかしら?」
…………ぇ、……いえ。部屋で休みたいので」
 カレーライスだなんて、私は知らない。けれど、彼女が息子を喜ばせたくて、精一杯歩み寄ろうとしていることは、乱太郎達に教えられてもう知ってしまっていた。……けれど。今の『私』は彼女の息子ではない。本物の、彼女の息子の『山田利吉』なら、どう反応するのだろうか。照れる? それとも怒る? ――わからない。
 だから、せめて私は彼女の愛情をやんわりと拒む。それは、この体の持ち主の『山田利吉』が受け取るべきものだ。私が掠め取っていいものではない。――そう思い、私は背を向けて足早に自室へ入ろうとして――そして机の上に置かれた数冊の本を見つけてしまう。
――これは――!」
 今朝訪れた市立図書館で借りたものなのだろう、背表紙に同じような処理がほどこされている数冊の本。このどれもが室町の、つまり私の生きた時代について書かれた本だ。
「あぁ、これ? 利吉、病院で花の御所がどうとか言ってたでしょ? 昨日ね、母校の大川教授に電話してみたら、室町時代に同じ名前の建物があるっておっしゃってたから、ちょっと教授に聞いて室町時代のことが分かる本や伝承を何冊か借りてみたのよ。でもダメね、お母さんにはサッパリで。大川教授に少しだけ崩し字を訳して頂いたんだけど……
 伝子がまだ何か言っているが、それどころではなかった。数冊の本のうち一冊は、明らかに私が探していた本だったのだ。
 きっと、この世界の伝子は、突然変わってしまった息子を必死に理解しようと歩み寄っているだけで、何も悪くない。しかし、私は彼女の息子などではないのだ。積み重なった違和感と苦しさに溺れそうになりながら必死で足掻いている中で、水面に無理矢理顔を押し付けてくる者が居たら、果たして人はどう思うだろう。つまり私の中で伝子は、微笑ましい親の領域などとっくに超え、腹立たしい領域にまで至っていた。
 外見は父に酷似しているが、彼女は私の親ではなく、全くの別人。元の世界へ一日も早く帰ろうとする私を妨害する、ただの邪魔者でしかないのだ。腹の底からカッと熱いものが込み上げ、気付けば私は伝子に向かって衝動のままに怒鳴っていた。
「余計なことはしないでくださいッ!」
――利吉、私は――
「誰が調べてほしいと頼んだんですか!? 当事者でも無いくせに首を突っ込まないでください!」
 机にこぶしを思い切りバンと打ち付けてやれば、伝子は突然の音に混乱し、亀のように縮こまる。――ちょっと迫力があるだけで、怪我も何もないというのに、彼女は怯えたような目でこちらを窺っている。
 ――これで正解だ。言うべきときはきっちり言っておくに限る。私に関わるな。お前達はお前達で、このイカれきった世界で好きにやっていればいい。だから、元の世界へ帰ろうと、元いた『山田利吉』を返そうと必死な私の邪魔をするな!
「ご、ごめんなさい……。この本は明日、図書館に返しておくから……
「いえ、結構です。伝子さんもお忙しいでしょうから。私が責任を持って代わりに返却しておきますので。伝子さんは引っ込んでてください」
 すっかり冷え切った声でそう告げると、私は机の上の本をまとめて回収し、自室へと向かう。
――今日は夕食も湯浴みも結構です」
 尖った声にすっかり身を硬くした伝子に背を向け、私は階段を上がっていく。
 ――イライラする。
 私だって、何もこんな表情が見たいわけじゃない。女装姿のとはいえ、父と全く同じ顔をした人間の、傷つき怯えた表情なんて、世界で最も見たくないというのに。それを作り出したのが自らの手だと言うことが、何よりも気持ち悪く、おぞましい。きっとこの身体の持ち主の『山田利吉』だって、やめてくれと叫ぶに違いない。
 ……けれど、仕方がない。私は、この世界の『山田利吉』ではないのだ。それに、いつかは必ず出ていく世界のことであり、『山田利吉』を返す為に必要なこと。だから――この世界では異端者である私が、彼女に歩み寄れないのは仕方ない事なのだ。
 部屋の扉を閉め、私は床に崩れるように座り込んだ。
――はは、何をしているんだろうな、私は……
 私は顔をそでで覆いながら、いつしか泣いていた。
 ――いいんだ。どうせこの世界はまがい物の世界で、いずれ立ち去る嘘の世界。私が帰るべき世界には、私の大切な人たちが大勢いる。その世界の父は、あんな風に弱い表情を見せたりなど絶対にしないし、あんな些細な事で傷付いたりもしない。
 だから、この知らない世界の、知らない人間を傷付けてしまったって、それは悪い夢の話と同じで、目が覚めたら忘れる笑い話でしかないのだ……
 だからだから、もう二度と流すものかと思っていた涙が止まらないのも、がらにもなく取り乱してしまったのも、絶対に私の感情じゃない。そうさそうとも、そうに違いない、だから今頬を伝うこの大粒の涙はこの身体の持ち主の『山田利吉』の涙であって、断じて私の涙ではないのだ……
 けれど、――私は暫くの間、自分にどう嘘を吐いても、どうしても涙を止めることが出来ずにいた……