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nuka_boshi
2025-03-08 17:29:52
25563文字
Public
利吉さんで賽殺しパロ
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【RKRN】転生したら母親が伝子さんだった利吉さん その2【シリアス死ネタ】
前回に続き賽殺しパロ。そろそろこの世界がなんなのか解説され始めます。
前回、まだまだジャブ程度だというのに利吉さんが勝手に発狂しやがったので、不甲斐ない利吉さんの為に予定を大幅に早めてお助けキャラを投入しました。こんなところで発狂するとは情けない。
とは言えあまりにお助けキャラを出しすぎると今後の展開に響いてくるので、なるべく理由を付けて行動を制限する予定です。
とりあえずまだまだしばらくは曇らせの前振りです。前振りですがネタバレ。今回も利吉さんがやっぱり曇ります。
(※ちょっと長くなりすぎたので章タイトル変更、というか分割。)
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5
6
7
翌朝。私は朝の街並みを歩いていた。
図書館への調査に関して、山田伝子は少々渋りはしたものの意外とあっさりと了承した。私が目を覚まさなかった間はともかく、ある程度落ち着いたというならば学生達の為にもなるべく早く復帰してほしいと職場から通達があったらしい。恐らくだが、乱太郎の担任教師という立場上、いつまでも休みを取っていてはマスメディアに嗅ぎつけられかねないという事情が関係しているのだろう。記憶を失い一人で置いておくには心
許
もと
ない『山田利吉』をどうするか考えていた所へ降って沸いた、図書館にて時間を潰すという選択肢。きっと山田伝子にとって渡りに船だったに違いない。
流石に図書館で昼食を取るわけにもいかないので、歩いて帰宅できるようにと早朝の街を私は伝子と共に歩く。
早朝、とは言うものの図書館の開館時間に合わせた為か、意外と通学中の学生の姿が道行く姿が目立つ。伝子が時折投げかけてくる取り止めのない話を適当にいなしながら、
煩
わずら
わしさと格闘していた時だった。
「あっ、お〜い! 待ってくれよ〜!」
一瞬、自分に呼びかけられたのかと思って思わず振り返る。軽やかに駆けてくるその人物は、どうやら私より先を歩いていた二人の学生に呼びかけたつもりだったらしい。見知らぬ他人まで振り向かせてしまった事に驚いたのか、「わわっ」と小さく悲鳴をあげてそのまま地面にすっ転んだ。弾みで鞄の中身が殆ど全てぶち撒けられるのを見て、私はなんとなく、室町の世に残してきた小松田秀作を思い出した。彼も、やることなす事そそっかしくて、よくこんなふうに失敗をしていた。私はそんな彼を見る度にイライラさせられたものだが、今となってはそのイライラさえもがどうしようもなく
郷愁
きょうしゅう
を
煽
あお
る。散乱した荷物を手早く拾い集めながら、私は目の前で転んで突っ伏している人物に声をかける。
「
――
大丈夫ですか?」
「あらやだ、大丈夫?」
「おい大丈夫か? 伊作」
「また派手にすっ転んだな」
私と伝子が転んだ人物に声をかけたのと、前を歩いていた学生二人が声をかけたのは殆ど同時だった。しかし、彼らの言葉に聞き覚えのある名を拾い、私は目を見開く。
「いてて
……
だ、大丈夫、大した事ないから。あっ、そちらの方もすみません、荷物拾ってもらっちゃって」
顔をあげた彼のやや吊り目がちな、でもどこか人の良さを隠せない顔立ちは、間違いなく見覚えのあるものだった。
――
善法寺伊作。元・忍術学園生で、不運な保健委員。思わぬ形での知人との邂逅に私が驚き目を見開いていると、「
……
えっと、なにか?」と遠慮がちに首を傾げてくる。その反応で分かった。彼もまた、室町の世の記憶がないのだ。「なんでもありませんよ」と私が誤魔化すと、彼は不思議そうに首を傾げながらも冊子や筆箱を受け取った。
「おいおい、しっかりしろよ〜。医者目指したいのに自分が怪我してちゃ世話ないだろ」
「うぅ
……
それは言わないでくれよ留三郎
……
」
揶揄
からか
うように伊作に手を差し伸べたのは、私の知るかつての世界では彼と同室のクラスメイトだった、食満留三郎だ。
「まったく、留の言うとおり、ぼーっとしすぎだ。ところで、荷物はこれで全部か?」
呆れた口調で潮江文次郎が数冊の冊子を手渡す。伊作は「うん、多分大丈夫」と明るい声でそれを受け取ると、「ありがとうございます」と私に改めて頭を下げた。
三人は私など気にも留めずにさっさと歩き出していく。きっと彼らにとってはいつもの日常なのだろう。
「っていうかお前の高校、もう一本早い電車じゃないと間に合わないんじゃなかったか?」
「そうなんだけど目覚ましが壊れててうっかり寝坊しちゃって
……
。あぁもう、やっぱり僕みたいなのが医大を目指すなんて無茶かなぁ〜。仙蔵の要領の良さが羨ましいよ
……
」
「まあアイツは将来設計考えるのが早すぎる気がするがな。だいたい普通、高一で志望校どころか就職希望先まで決めてる方がどうかしてる」
「そうそう、進路のこと考えてるだけ偉いって。俺も文次も、進路なんてまだ何も考えてないぜ?」
談笑する姿は、本当に仲が良い友人そのものだ。
――
だが、私は決定的な違和感を感じていた。確かに私は、彼らの事をそれほど知らない。だが、留三郎と文次郎は、顔を合わせれば喧嘩せずにはいられない程に仲が悪くは無かったか? それに、留三郎は、不運体質の伊作に対し何かと「気にするな、同室だろ」と手を差し伸べていたはずで、こんな風に雑にあしらったりしただろうか。文次郎は、もっと上昇意識が高く、生真面目な努力家ではなかったか。伊作だって、医術に関して確固たる意志を持っていて、こんな風に医者になれるか悩んだりする人間ではなかった筈ではないのか。何か、私の知る三人とは決定的に何かが違う。そう思わずにはいられなかった。
「
――
それより伊作、ちょうど良かった! 文次が新作のス◯ブラ買ったらしくてな、日曜にいつもの面子で長次の家に集まるんだけどよ、お前も来ないか?」
「えっ、うーんどうしよう
……
僕、課題たくさん出てるからなぁ
……
」
「んなもん仙蔵のやつに教えてもらえ。人数が増えればその分長次の菓子作りも長引くだろ。その間に二人で協力して今度こそ小平太をぶっ倒す! 俺が正面、留が背後取って挟み撃ちで行くぞ!」
「おう、任せとけ!」
「
……
真っ向から勝とうとは思わないんだ
……
?」
「「あの二人を同時に相手できるわけあるか!!」」
やいやいと楽しそうに会話する三人は、誰がどう見ても微笑ましい青年達の姿そのものだ。しかし私は、彼らの姿に一種の気持ち悪さを覚えずにはいられなかった。例えるなら、肌身離さず持っていた筈の自分の
元結
もとゆい
を、見知らぬ誰かがいつのまにか身に付けており、それを突然目の前で返されたような、不快感と嫌悪感。
「うふふ、お母さん出る幕無かったわね。利吉はやっぱり優しいわ」
何も知らず笑う山田伝子の声すらも、気色悪い。私は生唾を飲み込み、「さっさと行きましょう」と伝子を促す。伝子はしかしどこか懐かしそうに、彼らの後ろ姿を目で追っていた。
「それにしても、増えたわねえ」
「
――
え?」
「あらやだ、ごめんね利吉。こっちの話よ」
そう言われると、逆に気になるものだ。「そんな妙なところで話をやめないでくださいよ」と一応告げてみると、伝子は困ったように笑う。
「名前よ、名前。利吉が生まれたばかりの頃は、もっとこう、ハイカラな名前が人気だったのよ。例えばハルトとかリクとかサナとかエマとか。だから、利吉の名前も古風すぎて浮いちゃうんじゃないかってお祖父ちゃんが心配してね。リッキーにしたらどうかだなんて言うんですもの。思わずお母さん、猛反対しちゃったけど」
「私も嫌ですよ、なんですかリッキーって」
反射的に答えた私の反応がどうもツボに入ったらしい。ホホと楽しげに笑いながら、伝子は口元を押さえる。
「そうでしょう? なのにね、お祖父ちゃんったら何度も真面目な顔して『やはりリッキーの方が良かったのでは』なんて言うんだもの。せめてあだ名だけでも、だなんて言ったりして。でも、利吉が生まれた翌年くらいだったかしらね? ちょうど空前の室町ブームが巻き起こってね。アニメとかドラマとかの影響で、古風な名前の子がすごく増えたのよ。室町時代の研究もぐんと進んで、研究してる学者さんたちが泣いて喜んでるんですって」
何がおかしいのか、クスクスと笑う伝子に、私はなんとも言えない表情で
曖昧
あいまい
に「そうですか」とだけ返事をした。どうせ偽物の世界なのだから名前など別になんだって良い、と言いたいが、珍妙な名前でなく元居た世界と同じ名前だったのは幸いかもしれない。少なくともリッキー呼びは嫌すぎる。
「さ、見えてきたわよ。あそこの角にあるのが市立図書館」
楽しそうに笑う伝子と裏腹に、私はどこまでも大きな溜め息が漏れそうになるのを必死に抑えるのだった。
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