きなこ
2025-02-23 23:14:08
4992文字
Public ワグボク
 

【ワグボク】ボクオーンがワグ・ノエ・スビの3人の関係に嫉妬しているような感じの話2本

ワグボク、ワグ←ブケを含む。
内容はタイトルのまま。
1本目は酔い潰れたボクオーンがぶつぶつと呟いているような話
2本目は「ワグナス殿とスービエは、実はできているんですか?」とか聞いちゃうような話
時系列順です。

この辺が同じ世界観の話。時系列順
ロックブーケを泣かしちゃう話。
https://privatter.me/page/677fd5d964219
ワグ・ノエ・スビの関係に嫉妬している話。(これ)
https://privatter.me/page/67bb2d30ae48a
ワグボクで過ごす休日
https://privatter.me/page/67e795a669019
ノエルとお話をしている話
https://privatter.me/page/67f3d1eec52df
ワグナスとスービエの深夜の飲み会
https://privatter.me/page/6807a10425466


『「ワグナス殿とスービエは、実はできているんですか?」とか聞いちゃうような話』


「あなた達って、実はできているんですか?」
 茶会の席で、ボクオーンは素朴な疑問を口にした。
 テーブルに座っているのはワグナス、ノエル、スービエ、ロックブーケ、ダンターグ、そしてボクオーン。
 あなた達と言われた二人はそれぞれシュガーポットとティーカップを手にしたまま、揃って大きく瞬きをした。そのタイミングも一致している。
 そのうちの一人であるワグナスは困ったように眉根を下げて、もう一人のスービエへと視線をやる。スービエの方もタイミングを合わせて視線を交わすものだから、ボクオーンは苦笑を浮かべるしかなかった。
 目と目で何を会話したのか、代表をしてスービエが答える。
「そんなはずないだろう」
「アウトですわ」
 傍で見ていたロックブーケが判定を下す。正直、ボクオーンも同意見であった。ダンターグもカップケーキを食べながら頷いた。
 最後の審判員であるノエルは腕を組みながら目を伏せて、沈黙を貫いていた。

 起こった事象はなんてことはない。
 紅茶を飲もうとしたワグナスがテーブルの上に視線を滑らせたのと同時にスービエがシュガーポットを手に取った。その後に二人は視線を交わして、ワグナスがティーカップを差し出してスービエがその中に砂糖を二つ入れた。ただ、それだけだ。
 しかしその動きには迷いが一切なかった。
 ボクオーンとてワグナスのことは常日頃から観察をしているので、紅茶に入れる砂糖の量だとか、視線を追えば何をするつもりなのかを理解することはできる。だがそれは予測して待ち構えているからこそだ。スービエのように他のことに心を配りながら実施できる自信はない。
 
「も、もしかしてっ。ワグナス様がボクオーンと交際を宣言しているのは、スービエとの仲を隠すためですの? 従兄弟同士だと反対をされるから、なんて」
「馬鹿なことを言わないでくれ。……っな。ボクオーン、そんな目で見ないでくれ」
 疑惑の視線を向けているつもりはなかったが、無意識のうちに表に出てしまっていたようだ。慌てて言い繕おうとしたが、あまり効果的でない言葉をしどろもどろと紡ぐことになる。
「なんと言いますか……恋人というより、夫婦。……むしろ熟年老夫婦のような阿吽の呼吸っぷりですね。いえ、もちろん咎めるつもりはなくて、感心しているだけなのですが」
 ロックブーケは立ち上がり、ボクオーンの背後に立つとその肩に触れる。労りをこめたような顔をして「ボクオーン、かわいそう」と呟いた。
 いや、本気でワグナスとスービエの仲を疑っているわけではないし、別にそこまで深刻に思っているわけではないので可哀想ではない。――とボクオーンは思ったが、思いの外肩を強く掴まれているので、彼女の意を汲んで無言でいた。
 横目で他の仲間達を見る。ノエルは相変わらず我関せずであるし、ダンターグはスコーンを齧りながらニヤニヤとしていた。

「お兄様もですからね」
 突然話の矛先を向けられたノエルが驚いたように目を見開く。
「以前からワグナス様と目と目で通じ合って。私のことは心配だからと遠ざけるくせに、ワグナス様と二人で仲良く討伐に行かれて、いつも羨ましかったのです」
「戦闘中の息の合い方がすげぇんだよな。子供の頃から一緒に剣を学んだ兄弟弟子とかいうなら分かるんだが、そういうわけでもねぇみてえだから驚いたぜ」
 まさかのダンターグの参戦に、ワグナスもノエルも狼狽えるばかり。
「お兄様とワグナス様って恋人同士なのでは? と疑った時期もありましたわ」
「ロ、ロックブーケ。おかしなことを言うんじゃない」
 ノエルのその声は、わははと豪快に笑うダンターグの声にかき消された。
 ロックブーケに腕を引っ張られてボクオーンは立ち上がった。
「ボクオーン、今日は私たちと出かけましょう。ダンターグも、ほら」
 ボクオーンは素直に従って立ち上がるダンターグへ訝しげな視線を送り、そのままテーブルへ座る面々へと目線を流した。ワグナスは途方に暮れたような顔をしているし、ノエルとスービエは眉間に皺を寄せて顔を顰めている。
 彼らが悪いことをしているわけではないが、胸の内に思うところがないと言えば嘘になるので、まあいいかとロックブーケにされるがままにその場を立ち去ることになった。

「あー、スッキリしましたわぁ。いつか言ってやりたいと思っていましたの」
 くすくすと晴れやかな笑顔を見せながらロックブーケが軽やかに足を運ぶ。それに引っ張られるようにしてボクオーンも往来を歩いていた。
「まあ、良いんじゃねぇか。別にあいつらが悪いわけじゃねぇが、そんなもんを腹に抱えたままだとしんどいだろ」
「本当に。そんな関係ではないと分かっているのに、羨ましくて羨ましくて。少し意地悪をしてみたかったのです」
 二人の瞳がボクオーンを向く。
「仕掛け人はどちらですか?」
 ボクオーンは苦笑を漏らして、問うてみる。
 身長差がある、非常に珍しい凸凹コンビは顔を見合わせて、同時に首を傾げて見せた。ロックブーケはともかく、ダンターグは全く可愛くないぞと心の中でツッコミを入れる。
 思い返せば、最初にワグナスとスービエの仲を疑う発言をしたのはボクオーンだったような気がしてきた。あれは他意があったわけではなく、ついつい口からこぼれてしまった言葉だ。
 ――ああ、そうか。この二人はそれを大事にしないために、ボクオーンに加勢してくれたのかもしれない。
 なんとなく空を仰ぐ。
 とても高い位置にある青空には雲ひとつなくて、目に眩しいほど澄んでいた。――ボクオーンのつぶやきなど全て吸い込んで、かき消してくれそうなくらいに。
「こんなことを言うと面倒臭い恋人のようで、ワグナス殿を困らせるだけだと思っていたので、一生心にしまっておくつもりでしたが。……正直、あの三人の関係を、少し、妬ましく思ます」
「それを理由に会うなとか要求するんじゃなけりゃ、別に可愛いもんだ。ワグナスの方がよっぽど面倒な執着してんだろ」
……ダンターグに助言をもらう日が来るなんて、明日は槍でも降りそうですね」
 衝撃を受けて思わず口から言葉がこぼれていく。ダンターグは自分でも柄にもないことをしたと思っているのか、ふんっと鼻をならせて髪を掻きむしった。
「あーん。でも、やっぱりボクオーンが一番羨ましいですわぁ。私もワグナス様の寵愛を受けたいです」
 それを言われると返す言葉もない。
 何やら気を使わせてしまったことは事実なので、今日はボクオーンのおすすめの店で食事でも奢ってやろうかと思いながら、苦笑を浮かべたのだった。

 
 珍しい組み合わせの三人で食事と少しのお酒を楽しみ、お開きになった後はロックブーケの送迎をダンターグに任せてボクオーンは帰路に着いた。ほろ酔い気分で自宅へと戻れば、玄関前に腕を組んで仁王立ちしたワグナスが待ち構えていた。
 部屋に入るなり、ワグナスは誤解だとかつてないほど必死に弁明をして、ボクオーンへの愛を語り始めた。
 自分もロックブーケも本気で疑っているわけではないと伝えたが、ダンターグ曰くの面倒な執着をしているワグナス様がそれで収まるわけはなく。一晩かけて、どれだけワグナスがボクオーンのことを思っているのかを、切実に訴えられた。
 多少なりとも責任を感じているらしいスービエとノエルが仕事を肩代わりしてくれたこともあり、その後たっぷりと愛情を注がれたボクオーンが解放されるのは翌々日の昼になるのだった。