きなこ
2025-01-09 22:57:45
2389文字
Public ワグボク
 

ワグボク前提でロックブーケとボクオーンが話しているだけの話

注意書き。以下でもOKな方のみお進みください。
・ワグボク、ワグ←ブケ
・ボクオーンとロックブーケが話しているだけ。ワグナスは出てこないです
・内容は、ロックブーケに宣戦布告をされて、最終的に泣かせちゃうような話(かなり雑)。この話を聞いたらワグナスも多分泣く……

続きは以下
ロックブーケを泣かしちゃう話。(これ)
https://privatter.me/page/677fd5d964219
ワグ・ノエ・スビの関係に嫉妬している話。
https://privatter.me/page/67bb2d30ae48a
ワグボクで過ごす休日
https://privatter.me/page/67e795a669019
ノエルとお話をしている話
https://privatter.me/page/67f3d1eec52df
ワグナスとスービエの深夜の飲み会
https://privatter.me/page/6807a10425466

「私は諦めませんからね」
 ボクオーンが廊下を歩いている時に呼び止められて、宣言をされた。
 振り返るとロックブーケが立っている。
 ボクオーンは視線と気配を頼りに辺りを探る。幸い、近くに人はいないようだ。軍部の上層部の関係者同士で諍いがあるなど外聞に悪い。近くの空き部屋を顎で指すと、その意を察したようでロックブーケはボクオーンの後についてくる。
 窓側にボクオーン、扉の前にロックブーケが位置どり、向かい合って立った。
「ワグナス殿と別れるよう、訴えに来ましたか?」
 それならばワグナスの方に直接伝えて欲しいと、げんなりしながら問う。
「そんなことはしません。でも、私は、ワグナス様のお嫁さんになりたいという夢は諦めませんと、宣戦布告に来たのです」
「ご自由にどうぞ。私が知ったことではありません」
 選ぶのはワグナスだ。ボクオーンがとやかく言えた義理ではない。
 話がそれだけならとっとと失せろと扉を顎で指すが、ロックブーケは動かなかった。
 自分が扉側に立つと女性を部屋に閉じ込めることになるからとの配慮だったが、裏目に出た。話を打ち切ることができない。
「他人事のように言いますけれど、あなたはそれでも良いのですか?」
「選ぶのはワグナス殿です。それに。そもそも、私ではお嫁さんにはなれないでしょう?」
 何を当たり前のことをと、首を傾げる。
 ロックブーケは目を見開いて、唇をギュッと引き結んだ。困惑か、悲しみか。はたまた怒りか。どんな感情が込められているのかはいまいち読みきれない。
「そ、そりゃ、男性なので、その通りかもしれませんが。困難さで言えば、私だって、身分が釣り合わないから――
「慰めの言葉が欲しいと?」
「違いますっ!」
 こんな不毛な問答に付き合っている時間はないのだが、と思いつつ。立ち位置的に逃げられないため、嫌味を込めて大袈裟にため息をついてやった。
「ワグナス殿の身分なら、妾の一人くらいいても問題ありませんよ。既成事実を作って子供を作ってしまえば良い。あなたもご存知のように、責任をとってくれる方です。その子が跡継ぎになれば正妻の座だって狙えます」
「あなたはどうなるの」
「当然ながら妾にもなれませんし、身を引きますよ。ご安心を」
「添い遂げる覚悟もなくお付き合いをしているなんて。本当にワグナス様を愛しているのですかっ。ワグナス様がお可哀想ですわっ」
 泣くのを堪えた震える声で糾弾されるが、本当に勘弁してもらいたい。
 感情的にならないで、理屈で考えれば何もおかしいことは言っていないだろうと思うのに。
「世の中の恋人たちが、必ず結婚をするわけではないでしょう」
「今はあなたたちのお話ですっ」
「同じですよ。今は互いを必要としているから一緒にいますが、ワグナス殿は貴族です。さらには大神官に御目通りが叶うほどの将来有望な方。跡継ぎを望まれるは当然ですし、義務です。男なので、さすがの私でも跡継ぎを産む事は出来ません。ワグナス殿の思惑がどうであれ、別れは来るでしょう。必ず」
 声が掠れる。一気に喋りすぎたせいか他の理由か。喉が渇いたせいだと決めて、軽く咳払いをした。言いたいことは伝えた。もうこれ以上は不要だろう。
 ロックブーケの金色の瞳が憐れみを含んでボクオーンを映している。それが正視に耐えなくて、そっと視線を外した。
 ふと、ワグナスが可哀想だと訴えられたのを思い出す。先ほどは感情的な発言かと思ったが、意外と核心をついているかもしれない。ワグナスは自身と関わりのない無辜の民のためにをするような、優しい人間だ。現在一番身近なところにいるボクオーンにこれ以上情が移る前に、解放してあげた方が彼のためかもしれない。
 だが、今は大事を成そうとしている時だ。他に心を割くわけにはいかない。ワグナスにしても、自分にしても、だ。
 思考に沈んだ意識を戻したのは、ロックブーケの謝罪の声だった。
「ごめんなさい。そんな顔をさせたかったわけではありませんの」
「どんな顔でしょうか?」
「鏡を見てみなさいよっ」
 ぐるりと部屋を一望するも、鏡のような気の利いたものはないようだ。
 仕方なく懐から取り出した手鏡で見てみるも、いつもの見慣れた顔が映るだけ。
「いつもと変わりありませんが」
「ほんっとうに、あなたのそういうところが嫌いよ」
 ロックブーケの大きな双眸からほろほろと涙が溢れてくる。
 泣くべくは嫌いと言われた自分なのでは? いや、彼女に嫌われたところで痛くも痒くもないが。
「ワグナス様のお気持ちも考えないで、勝手なことばかりっ。ワグナス様が可哀想っ」
 彼女はその場にうずくまり、幼子のようにわんわんと声をあげて泣き始めた。
 ボクオーンは顰めっ面を作ってため息をつく。
 じきに彼女の泣き声を聞いた誰かの知らせを受け、鬼の形相の保護者がやってくるだろう。それまではこの場で見守るしかない。
 何をそんなに泣いているのかは正直分からない。ただ、ロックブーケ自身のためではなく、ワグナスの――いや、もしかしたらボクオーンのために涙してくれているのだろう。
 他人のために感情を揺らして、爆発させて。
 我儘なだけの箱入り娘かと思えば、努力家で、根性があって、意外と優しくて。命をかけてもワグナスのことを守り、彼のためならどんな困難も乗り越えていくだろう。
「結構本気で、あなたがワグナス殿の正妻になったら良いなと思いますよ」
「嫌味ですかっ!? あなたなんて嫌いよっ」
 苦笑しながらはいはいと適当に流した。
 窓に寄りかかり外を見る。
 しばらく待つと、赤い鎧を着た男が疾走する姿が眼下に見えた。
 さてはて。自分はここから生きて帰ることができるのかと一抹の不安に駆られながら、ボクオーンはそっと目を伏せた。