ヒートが明け、数日ぶりに出社すると珍しく藤丸の出迎えが無かった。いつもなら朝一のわし様を捕まえ、一日の予定を頭に叩き込ませてくるというのに。
秘書室と覗くと藤丸はそこにいた。隣にはペペロンチーノもいる。二人ともデスクの前に立って、何を見ているようだ。二人はこちらに背を向けており、視線の先にあるだろうものは陰に隠れて見えない。
「これ
……どうしましょう。先に副社長に相談しましょうか
……?」
「きっと出張先から飛んで帰って来るわねえ。下手したら相手の会社に殴り込んじゃうかも?」
「それは流石に
……ない
…………かなあ?」
「なーにを二人でコソコソしとるのだぁ?」
こっそり背後から近づいて声をかけた。藤丸は素っ頓狂な声をあげて驚いたが、ペペロンチーノは平然と挨拶してきた。相変わらず察しが良すぎてつまらん奴だ。
「社長、お、おはようございます」
藤丸は机の上に乗っているものを隠すように、サッと身を翻した。
「おい藤丸。今何を隠した?」
「えーとぉ
……」
「そら」
「あー!」
「あらやだ、お見事」
往生際の悪い藤丸の腕を取り、ひょいっと重心を右に動かす。ふらついた藤丸を押しのける様にして、二人の間に体を入れた。武術の心得のあるわし様にかかれば、この程度は朝飯前だ。
藤丸が隠していたのは、包装をといたばかりの箱だった。蓋は閉まっているので中身は分からないが、蓋の上面に刻まれているロゴは世界的なハイブランドのものだ。まずこの時点で藤丸のものではないな。うん。ペペロンチーノは同ブランドのアイテムを持っていそうだが、プライベートで買ったブランド品を会社で広げるような常識知らずではない。では何故こんなものがあるのか。
「おーい藤丸、これは一体何だ?」
「
……えーとぉ、そのぉ」
「藤丸」
「
……はい。
……それ、社長宛にいきなり届いて。送付状には、お近づきの印のプレゼントとか何とか
……」
「
……誰からだ?」
気まずそうな顔をした藤丸は、先日の会食相手の名を告げた。
仕事の件は藤丸から断りのメールを出させていたし、万が一連絡があっても対応不要と伝えてある。事前に断りもなく送りつけてくるとは、あの男らしい厚顔無恥なやり方だ。
「中は確認したのか?」
「はい
……盗聴器とか仕掛けられてるかもって、ペペさんが言ったので
……念のため」
「あったのか?」
視線を藤丸からペペロンチーノへと移す。ペペロンチーノは珍しく、瞳にうっすら怒りを滲ませていた。
「大丈夫、その類のものは無かったわよ。
……でもそっちの方がマシだったかもしれないわね。遠慮なく警察に通報できるもの」
盗聴器の方がマシとは、随分な言い様だ。
「
……開けるぞ」
藤丸が横で心配そうに見つめる中、包装箱の蓋を取る。
「
…………」
箱の中には、オメガ用の首輪が台座に収められていた。
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