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紫輝
2024-10-12 10:49:53
36174文字
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リオヌヴィ
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【リオヌヴィ】200年振りのただいまを【原神】
人間としてヌ様と添い遂げて星に還った200年後に記憶を置き忘れて転生したセスリ殿が忘れ物を取り戻してヌ様に逢いに行く話です
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とある社員が語ることには
俺はフォンテーヌ邸内、とある会社のしがない社員だ。
この会社はざっくり言えば警備員の派遣を業務として行なっている。ボス
…
社長の意向でお子様の登下校の付き添いから紳士淑女のパーティーへの同伴まで、それはもう手広く。
組織力を活かした会場警備は特にお客様からの評価も高い。ホームパーティーや各種発表会、講演会などの予定がございましたら是非うちへ
…
なんてな。
この会社を率いるボス
…
じゃない社長
…
言いにくいな、もうボスでいいか。ボスの人を見る目はとにかくすごい。一応『警備会社』であるはずのここには腕っぷしの強い奴の他、マシナリーに詳しかったり、交渉術に長けていたりと各方面に特化した人間が何故かやたらといる。かく言う俺も読唇のスキルを買われて入社したクチだ。「双眼鏡一つで情報を得られるなんて便利だろ?」とはボスの言だが、活躍の場が来るたびプレッシャーが凄い。期待されてるのは誇らしいんだけどな。
下が有能だと俺が楽できるからな、とボスは笑うが、そんな尖った人材をこうやってまとめ上げて組織だって動かすこの人が一番有能だとみんな知っている。社長でなく『ボス』と呼ぶのだってそういう尊敬の表れだ。ちなみに本人も頗る強い。
そんなボスはある日ランチタイムに外へ出てにわか雨に降られて帰ってきた。その後ひどく覇気のない顔をしていたがどうも雨に降られたから、という理由ではなさそうで。
終業時間まで何かを思い悩んでいたかと思うと、一週間ほど休みを取る、と口にした。急ぎの案件があれば知らせてくれて構わないと言いながらボスが手早く作った不在中の引き継ぎ書を前に、俺たちはお任せくださいと拳を握った。何せこの人と来たら俺たちに休みを取らせるくせに自分は暦通りに仕事に励んでいる。やりたいことも思いつかないからなどと言うボスに、契約書に定められている休暇を全員で合わせてボスをキャンプにでも連れ出そうかなんて計画が本気で話し合われたことすらあるのだ。
そんなボスの「長期休暇宣言」だ。歓迎しない社員なんていない。浮かない顔の理由が気にはなったが、皆でゆっくりしてきてくださいと見送ったのだ。
そうして突然の休暇を経て戻ってきたボスは何やら晴れやかな顔をしていた。稲妻出身の同僚曰く、あれは「憑き物が落ちたような顔」と表現するらしい。
素敵な休暇を過ごされたんですね、とかけられた声に「失くしていた大事なものを見つけたんだ」と。言葉の通り宝物を慈しむように瞳を細めたボスになんとも言えない気持ちになって、その日は休憩が重なった同僚とランチを奮発した。
そんなこんなで帰ってきたボスはこれまでより生き生きとしていて、社内の雰囲気も明るい。フォンテーヌで一番いい職場、なんて、前から思っていたことを皆で改めて噛み締めつつ日々仕事に励んでいたある日の夕暮れ時の事だ。
通りに接する窓の外に人が立っていた。それだけなら別に不思議でもなんでもないのだが、その人は一見して「普通」と片付けるには無理があった。背を覆う見事な白
…
銀だろうか、美しく珍しい髪の色と、すっと伸びた背筋。後ろ姿だけでここまで高貴なオーラを纏える人なんて中々いない。背が高いのは窓との対比でわかるが性別まではわからない。少なくとも「逞しい」という表現はそぐわないな、というくらいだ。役者さんだろうか。最近は他国から役者志望の人たちがフォンテーヌに沢山やってきていると聞くし。こんな人が舞台に立てば大スター間違い無しだろう。
一人、また一人と興味は伝染し、窓の外を代わる代わる見つめては書類へ目を戻すという奇妙な光景が無事出来上がったところで集中力を欠いている俺たちが気になったのか、ボスがそちらへと目をやって。
すごい勢いで立ち上がり、凄まじい速さで外へ出ていった。あれは本気の動きだった。あの役者さん(仮)、そんなに有名な人なんだろうか。
滅多に見たことのない、というか初めて見たかもしれない慌てたボスがその人の肩に触れる。ボスを見上げたその人の顔と言ったら、この距離のガラス越しの横顔でも息が止まるかと思ったほどの美しさだった。それとなく成り行きを見守っていた同僚たちの声にならない呻きとため息が聞こえる。わかる。
ボスが口を開く、その動きを注視する。すいませんボス、まずそうな話だったら見なかったことにするので。
『
――
、なんでここに』
前半は判別できない。恐らく役者さん(仮)の名前だろう。
『業務が早く片付いたので、君と帰れるかと思って待っていた』
業務。どうも役者さんではなさそうだ。独特の言い回しはパレ・メルモニアの人を思わせる。
『だったら入ってきてくれていいのに』
『君の職務を妨げるつもりはなかった』
首を振ったその人が答えるのにボスはため息をついたようだ。
『ここに立たせておくほうが俺の職務の妨げになる』
美人さんがしゅんと肩を落とす。そんな言い方しなくても。美人さん悲しそうじゃないですか。いつもならそんなこと言う人じゃないのに。
『あんたみたいな美人がこんなとこにつっ立ってたら妙な奴に目をつけられるかもしれないだろ。心配で仕事どころじゃない』
限りなく自然な動作で美人さんの頬を撫でるボスの顔が笑っている。これはあれだ。ジョークってやつだ。ちょっとタチが悪いけど。
『
…
君はわざとそういう物言いをする』
同じことに気づいたらしい美人さんの眉が寄る。怒った美人からはある種の迫力を感じるものだがそれがないことを見るに、本気で怒っているわけではないのだろう。揶揄われて拗ねたのかもしれない。ボスが罪な男すぎる。
『悪かった。あんたの感情が顔に出るのが嬉しくてな』
いやボスが罪な男すぎる。これで彼女の一人もいなかったのが信じられない。
返す言葉に迷ったのか口を閉じた美人さんの頬に、ボスが唇を寄せる。あんなスマートなキス見たことないぞ劇場か?
『リオセスリ殿、』
『支度してくる。三分くれ』
劇場だったかもしれないと納得してしまうほどの洗練されたやり取りに惚れ惚れする。是非実践したい。恋人を作るところからだけど。ところで今あの美人さんボスのこと「殿」って敬称つけて呼んだよな。ますますどういう関係なのかこんがらがってきた。ステディな関係であることは間違いないけど。
美人さんの首が縦に動いたのを見た辺りで視線を室内へ戻す。同じように二人を見ていたのだろう皆と目が合った。誰からともなくうなずき合う。ガチャリと入り口の扉が開き、戻ってきたボスが大股に社内を横切って、無駄のなさすぎる動きでデスクを整え始めるのを素知らぬ顔で見守って。
「命より大事な用ができた。悪いが今日は帰らせてもらう」
「お疲れ様です」
荷物を手にそう宣言するボスへ皆がかけた応えは見事に唱和していた。
入口へと向かうボスが、扉の間際で振り返り。
「
一時
いっとき
の好奇心で騒ぎ立てない君たちを俺はとても信頼している。
…
日を改めてちゃんと紹介するよ」
それはもうくすぐったいようなあたたかいようなドキリとするような
――
一言で言うなら幸せそうな笑みで告げ、扉をくぐっていく。
『すまん、待たせた』
『あと三十秒あるぞ』
笑い合いながらそんなやり取りを交わし寄り添って帰っていく二つの背を見送って。
「情報共有!」
待ってましたとばかりの拍手喝采に迎えられ、俺は先のやり取りを掻い摘んで話す。
後日きちんとご紹介に預かった上で開いたパーティーに、ヌヴィレットさん(と言うそうだ。名前も高貴である)は戸惑っていたしボスはむず痒そうにしていたけれど許して欲しい。
社員一同、尊敬するボスの幸せは自分のことのように嬉しいのだから。
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