ちよど
2025-01-10 11:52:47
12144文字
Public わし様など
 

練習1P 500個記念企画短編化まとめ

#練習1P、のタグで書いていたもの。このたび、読んでくださったみなさまのおかげで500個書けたので記念企画としていくつか短編化しました。
リクエストしてくださった方々ありがとうございました。


生前?カルヨダ
「比翼の鳥」
※死にネタです

■原文■

「もはや勝利などいらん、何でも欲しい物を持っていけばいい。──ただし、条件がひとつある」
 ほとんどの将軍を討ち取られたとはいえ、まだ戦力が残っているカウラヴァの旗頭の言葉にパーンダヴァの面々は胸を撫で下ろした。ドゥリーヨダナが欲しているのがなんであれ、それでこの陰惨な戦争が終わるなら安いものだ。
 クリシュナが感情の見えない笑みを浮かべる。ドゥリーヨダナが口を開いた。
「──カルナを返してくれ。あいつだけでいい。あいつさえいれば俺はこの国から出ていこう」
「それは──」
 アルジュナが弓を引いた手を握り込んだ。彼が無防備だったカルナを射殺したのはつい先日の事だ。
 無理難題をふっかけているにしてはドゥリーヨダナの目は静かだった。
「俺は分かったのだ。あいつがいなければどんな勝利も意味はない」
 ビーマが口を開けて閉じた。ユディシュティラがクリシュナを振り返る。応えて神の化身は歩み出た。
「では、望みをかなえてあげましょう」
 刃が一閃した。ごとりと首が落ちる。
「カルナと共にこの国から旅立つといい」
 パーンダヴァが息を呑む。その中で立つ神の視点には天の国で再会した親友達が映っていた。

■短編化■

 どれほど泣いても目玉は溶けず、どれほど呼んでも応えが返らない事を知った。
 撃ち抜かれたカルナの首と体を豪奢な布で包んで、俺はパーンダヴァとの和平の席につく。
 何人もの将を倒されたがまだカウラヴァに余力はある、俺が徹底抗戦を叫べばパーンダヴァにそれなりの損害を与える事が出来るだろう。
 繰り返し和平を唱えていたアシュヴァッターマンではなく、今までどんな条件も断っていた俺自身が来た事にパーンダヴァの連中は警戒の目を向けている。
 当たり前のそれを受け止めて俺は口を開いた。
「もはや勝利などいらん、何でも欲しい物を持っていけばいい。──ただし、条件がひとつある」
 ほっと空気が緩む。
 事実上の降参宣言に警戒を解くパーンダヴァの連中。以前の俺だったらそのおめでたさに笑い転げていただろう。
 そしてその横でカルナが一見辛辣にしか見えない言葉を吐くのだ。
 カルナ。──カルナ、カルナ、カルナ!!
 俺は感情の見えない笑みを浮かべているクリシュナを見据えた。
「──カルナを返してくれ。あいつだけでいい。あいつさえいれば俺はこの国から出ていこう」
「それは──」
 カルナを殺したアルジュナが口ごもる。
 アルジュナはクリシュナと前世でなにやら親密な関係があったらしい。それでクリシュナはずっとアルジュナに肩入れをしているのだ。──だったら、アルジュナのした事をクリシュナが補填すべきではないか。
 俺はちらりと布に包まれたカルナを見た。
 いつも俺の視線に気づいて振り返ったカルナは今は動かない。今は。
 昔の聖仙は死者を生き返らせたという。ならば半神と神の化身がいるパーンダヴァなら、それが可能ではないのか!?
 アシュヴァッターマンは言った。自分では無理だと。
 ではクリシュナなら? 天候すら操るヴィシュヌの化身なら?
「俺は分かったのだ。あいつがいなければどんな勝利も意味はない」
 国なら渡そう、王位などいらん。ただカルナさえいればいい。
 ただカルナさえ戻ってくれるなら何もいらない。ふたりでこの国から旅立とう。
「カルナに会わせてくれ」
 懇願に神の化身が笑みを深めた気がした。
「では、望みをかなえてあげましょう」
 湧き上がった喜びが一瞬黒く塗り替えられる。
 視界が戻ればそこは見知らぬ場所でカルナが立っていた。
「カルナ!!」
 俺が呼ぶとカルナは振り返る。その目が開かれた。
「ドゥリーヨダナ。──拙速にすぎる」
「おまえほどではないわ」
 言い返すとカルナはくしゃりと顔を歪めた。泣きそうな表情はすぐに戻って、その細い手が差し出される。
「案内しよう。気の多いおまえだけでは迷うだけだ」
 その手を取って俺は笑った。
「わし様とお前の新たなる旅立ちというわけだな」

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読んでくださってありがとうございます。
少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。

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