ちよど
2025-01-10 11:52:47
12144文字
Public わし様など
 

練習1P 500個記念企画短編化まとめ

#練習1P、のタグで書いていたもの。このたび、読んでくださったみなさまのおかげで500個書けたので記念企画としていくつか短編化しました。
リクエストしてくださった方々ありがとうございました。


生前カルヨダ+モブ
「このふたりは無二の友だと」

■原文■
 街道で座り込んでいた男を拾ったのはクル国での商いが上手くいったからだ。要するに儲けたのでお裾分けだ。
「それはよい心がけだ。おかわり!」
「あんたよく食うね」
 ヴァイシャの食堂で人の奢りで食べまくっている男は汚れているがかなりよい身なりをしている。くるくるとよく動く表情が特徴的な男は粗末な器を抱えて目を細めた。
「あの道からこの街に来たということは行き先はアンガ辺りか?アンガ王なら知り合いだ。食事の礼に渡りをつけてやろう」
 アンガ王はスータの生まれと聞く。その頃の知り合いだろうか。助かると言うと男は笑って、服に付いていた汚れた葉っぱを差し出した。
「アンガ王にこれをドゥリーヨダナからもらったと言うがいい」
「この国の王子の名前じゃねぇか」
 あの時冗談だと笑い飛ばした汚れた葉を俺は必死で掴みだした。冤罪を被せられ絶体絶命の危機に他に縋るものが無かったのだ。小さな葉に命を掛けて捧げ持つ。
「ドゥリーヨダナにこれを貰いました」
 雲より頼りない命綱に震える俺をアンガの異形の王はしばし見つめた。
「報いは受けるべきだろう。──この者に自由と黄金を」
 助かったのだとへたり込んだ俺は思い出した。


■短編化■
 びっくり返された荷物に奇跡的にくっついていた1枚の葉に俺は飛びついた。
 この季節ならどこにでも落ちているただの葉だ。それを握り込んだ俺を衛兵が引きずり戻す。王の前で勝手に動いたのに乱暴にされないのは、これが冤罪だと彼らも分かっているのだろう。
 よくある手段だ。
 豪商の家に盗みに入った強盗が旅人の荷物に盗品を紛れ込ませて身代わりにする事なんて。
 運が悪かったのはその盗品が王が友に贈る予定だった細工物だということだ。
 王宮に引っ立てられた俺を玉座の上からアンガ王が冷たく見下ろしている。人のものとは思えない瞳。その身に纏う黄金の鎧は生まれながらに肌に張り付いたものだという。黒い手足は細く、比類なき武人だと聞くのに俺でも折れそうな体つきをしている。
 俺は震える手で葉を捧げ持った。

「ドゥリーヨダナにこれを貰いました」

 王の友の名を騙った男と出会ったのは数週間。俺がまだクル国にいた頃だ。
 あそこは王族の数が多く商いが活発な割に品がいい。うまい事儲けた俺は街道沿いに座り込んでいた男を拾ったのだ。
 喜捨とまではいかないがお裾分けだ。男の身なりは汚れてはいたが上等なもので、話し方も聞いたことがないくらい綺麗だったのもある。
「うむ。簡単に言えば家出して行き倒れておったのだ。──おかわり!」
 ヴァイシャの食堂で人の奢りだというのに食べまくっている男は、家出だというのに金目の物をひとつも持っていなかった。
「あんた、どう見ても豪商の息子だろう? よりによって金を忘れるなよ」
「金が無いと果実ひとつ手に入らないとは思わなかったのだ!」
 言い訳する男に俺は呆れた。いい歳してどこの箱入りだ。家の名前を知りたい。きっといいカモだろう。
 そんな俺の考えを読んだのか男の瞳がきらりと光った。くるくるとよく動く愛嬌のある表情がぴたりと止まる。
「あの道からこの街に来たということは行き先はアンガ辺りか? アンガ王なら知り合いだ。食事の礼に渡りをつけてやろう」
「商家じゃなくて王にか? 手が早いな」
 アンガ王はスータの生まれだ。クル国の王子の誰だったかと友誼を結び王になったばかり。プライドの高い商人連中の多くは身分が低い相手との取引を見定めている。
 俺の言葉を了承と取ったのか、男はガサゴソと自分の服に付いていた汚れた葉を差し出した。
「アンガ王にこれをドゥリーヨダナからもらったと言うがいい」
「それはこの国の後継ぎの名前じゃねぇか」
 ただの冗談だと笑い飛ばした俺は今、その煙よりも不確かな言葉にすがっている。
 他に頼るものは何ひとつ無い。
 小さな葉に命を掛けて捧げ持つ俺をアンガの異形の王はしばし見つめた。
「報いは受けるべきだろう。──この者に自由と黄金を」
 衛兵が手を離す。
 助かったのだとへたり込んだ俺は思い出した。男が上げた名前はアンガ王の友のものだったと。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

読んでくださってありがとうございます。
少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。

Waveboxはこちら
BlueskySNSはこちら

無断転載、無断使用はしないでください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー