氷紀
2024-12-31 00:43:33
13064文字
Public
 

今はおやすみ、蛇沢くん

『蛇沢ちゃんの話/10000字くらい』というリクのはずだったんだ……
世界観は5期軸想定、CP的には一応高沢……の、つもり……たぶん、そうじゃないかな……



 ……このことを父さんに話したら、父さんは何か考え込むような声音でこう言った。
「西洋妖怪ならラミアの眷属と考えて良いじゃろうが、場所からして考えにくいのう。とすれば、人に忘れられた神格……といっても、あのあたりに社が建つようなことは、確か一度もなかったはずじゃが」
「ですよね。山菜を探して歩き回りましたけど、そういうものはありませんでしたし……参道のあとみたいなものも、見当たらなかったので」
「じゃろうなあ。となればおそらく、蛇と共生する類の精霊が力を持って、人を真似だしたようなモノかもしれん。人の言葉が話せるなら、なんらかの形で人間との縁はあるはずじゃ」
「そうなると、なんで彼がひとりで山にいたのか……、何か隠れている理由があるんでしょうか」
 いつもの茶碗風呂に入っている父さんが、目玉だけを僕に向ける。
「いくら力あるモノといえど、はっきり蛇と言えるくらいの体があるなら、蛇の性は持っておるはずじゃ。……むしろワシは、鬼太郎を警戒しなかった理由の方が気になるのう。しかも名を付けられて頷くとは……蛇は元々、群れて暮らす生き物ではないんじゃが」
「警戒心がない、ってこともないはずですよね。隠れ住んでるんですから」
「気になるなら、時々様子を見にいってはどうじゃ。横丁に危害を加えるモノではないじゃろうが、万一何かもめ事になったときのことを考えると……得体の知れないハグレモノではなく、『鬼太郎の知り合い』となれば、話はいろいろと違ってくるじゃろう?」
「はい、父さん」
「ワシも気にはなるが……、ワシが会うのは、止めた方がいいじゃろうな。蛇を相手にことを構えると、面倒なことになるからのう」
 僕は心の内で苦笑した。やっぱり父さんには分かるんだろう――僕が、彼のことをもっと知りたいと感じていることに。
 妖怪横丁は、関わるモノを傷つけない妖怪や精霊だったら、誰でも住んでいい場所だ。でも蛇沢くんが、これだけ近くにいながらひとりで隠れ住んでいたということは、多分、彼はそれを望んでいない。……そこが無性に、気になる。