氷紀
2024-12-31 00:43:33
13064文字
Public
 

今はおやすみ、蛇沢くん

『蛇沢ちゃんの話/10000字くらい』というリクのはずだったんだ……
世界観は5期軸想定、CP的には一応高沢……の、つもり……たぶん、そうじゃないかな……

 朝霧の漂う山の中、道なき道を歩いていく。
 横丁の仲間の誰も知らない、秘密の場所。

 下駄履きの足で地面を踏みしめれば、かさかさと音が鳴る。冬枯れの梢に吹き付ける風は容赦なく冷たい。でも、その枝の中では、次の春に芽吹く葉が眠っている。
 蛇沢くんもそうなんだろうな、と思った。

 蛇沢くん、というのはこの山に住んでいる彼のこと。彼は人間の頭と腕と胴体に、二本足ではなく蛇の体をもっている生き物だ。見た目だけなら、西洋妖怪のラミアと同系統。ただ、彼が妖怪なのかと言われると、そうと断定はできない。
 見た目からして人間でないのは確かで、気配の質は、妖怪より神とか精霊とか呼ばれる存在に近い。じゃあ僕や父さんのような幽霊族なのかも、と思ったものの――父さんに訊いてみたけど、そんな姿の幽霊族がいるという話は聞いたことがない、と言う。
 それで、山に隠れ住む半人半蛇のことを知っているか、と横丁の皆に尋ねてみたことがある。しかしはっきりと姿を見た者は誰もおらず、ただカラスたちが『人蛇の仔』『自分たちの雛を食べる』とだけ教えてくれたのを覚えている。