botanin5
2024-11-14 03:18:50
14147文字
Public 薬さに♀(小説)
 

あと、一息

霊力が無くなりそう!刀剣からもらわないと!設定
骨喰→審神者表現あります




ひやりと風が通った気がして目が覚めた。
視界いっぱいに広がったのは見慣れた天井で、自分の部屋で布団に寝ているのだと分かる。はて、一体どうして自分は寝ているのだったか。ゆっくりと目を閉じて、眠る前のことを思い出す。そうだ、廊下で突然呼吸ができなくなって、くるしくて、それで
あれ、私、

「生きてる!!!」
「死んでもらっちゃ困る」

ばさりと布団を押しのけながら飛び起きると、障子の柱に背を預けて片膝を立てて座る薬研がこちらを見据えていた。状況が飲みこめなくてぽかんとアホ面を晒していれば、そっと立ち上がった薬研が布団の横に座る。

「もう苦しくないか?」
「あうん。そういえば苦しくない。息できる」
はぁそりゃ良かった」

苦笑いする薬研を見て、なんだか安心する。普通に話せている。よかった。あれほど胸を占めていた焦燥感は落ち着いていた。肺が苦しくなったのは、告げられていた霊力の衰耗による影響だろう。まだ時間はあると思っていたが、想像より身体の状況は悪かったらしい。

薬研による簡単な診察がなされて、とりあえず今は身体に問題はないと言われた。息が苦しくなることなんてこれまで全く無かったので意識したことが無かったが、ああも毎回苦しまなくてはならないと思うと怖い。もう限界はきていたのだ。再発を防ぐためにも、やはり治療は必要だと実感する。それに、症状が治まればあの苦しみは幻だったかのように何も不調は現れない。今、息苦しくない事がとても嬉しい。

ほっとしたところで新たな疑問が生まれた。
今はもう肺が痛くないということは、誰かが私に霊力を送ってくれたということだ。
そう思い至って、じわりと緊張が生まれる。そりゃもちろん、助けてもらって文句は言わないけれど、

「あの、誰が?」
「ん?」

こちらを見ずに体温計を片付けていた薬研には、声が届かなかったらしい。自分の中の緊張が一回り大きくなるような気がしながら、もう一度聞きなおした。

「誰が、私を助けてくれたの?」
「知りたいか?」

視線は手元のままに、薬研が聞き返してくる。かちゃかちゃと道具を片付ける音が、いつもより大きく聞こえる気がした。

そりゃ、気になるに決まっている。あの状況で気を失ったのだ。小さな期待はあるけれど、実際は誰が口づけて助けてくれたのか、後のことなんて私には分からない。

「知りたい」

ぴたりと薬研の手が止まる。
ゆっくりとこちらを見る目と視線が絡む。

そのままぐいっと近づいてきたので、思わず身を引く。下がり損ねて、布団にぽすっと倒れ込んだ。慌てて起き上がろうとしたが、足の間、布団越しに薬研の膝が滑り込んできて失敗に終わる。覆いかぶさってきた薬研の目は、見たことがないくらい熱を帯びていた。


「いいのか?味占めちまうぜ」


薬研は、赤い舌で自身の薄い唇を撫でた。

甘そうだ。




こくりと頷けば、艶やかな唇は口角をあげた。



「さぁ――――、治療の時間だ」