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botanin5
2024-11-14 03:18:50
14147文字
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薬さに♀(小説)
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あと、一息
霊力が無くなりそう!刀剣からもらわないと!設定
骨喰→審神者表現あります
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それから、何も進展のないまま二日が経った。
あのまま薬研が近侍に戻ることは無く、相変わらず歌仙が仕事を手伝ってくれている。骨喰は、時間を見つけては治療を実行に移そうとしているようだが、歌仙がそれとなく流してくれていた。
「はぁ~。どうしようかなぁ
…
」
書庫に入り、先ほどまで読んでいた医療系の書物を棚に戻していく。自分の陥っている状況をもう少し把握できないかと三冊ほど見繕って読んでみたのだが、特にこれといった解決策は見つからない。私の探し方が下手なのかもしれない。
骨喰に治療してもらう覚悟はだんだん固まってきていた。そのうち必ず越えなくてはいけないことだ。骨喰と口づけるという行為に関して嫌悪感があるわけではない。しなければこちらの身が危ないのであれば、拒否する理由は無い。
ただ、薬研じゃない事が寂しいだけで。
「いつまでもうじうじしてられないな
…
。よし、行こう」
「どこへだ?」
「うひょあ!」
突然声をかけられて、持っていた残り一冊を床に落としてしまう。振り向けばそこにいたのは、今まさに会いに行こうと思っていた骨喰だった。彼は、落ちた本を拾い上げて近くの棚の空いたスペースにすっと差し込む。その本、片付けるところはそこじゃないんだけど
…
。たまに本が所定の場所に見当たらないことがあると聞いてはいたが、こんなところで犯人を見つけるとは思わなかった。
「ありがとう骨喰。せっかく片付けてくれたのに申し訳ないんだけど、その本入れるのそこじゃないんだ」
「そうなのか?」
「うん。仕舞う場所は決まってるの。これはこっちの棚」
「そうか、すまない。書庫にはあまり来なくて」
「大丈夫だよ、ありがとう」
少し背伸びをして最後の一冊を押し込んだところで、背中を包み込むように骨喰が後ろに立ったのが分かった。びくりと肩が震える。本に添えたまま動かない手に、骨喰の手が重なった。
「
…
あんたは俺でもいいんだろう?この前、そう言いかけた」
「
…
うん」
「もう、待ちたくない」
ぐっと重なった手に力がこめられた。骨喰は、我慢してくれていたのだ。腹をくくれ、自分。腕を降ろせば手が離れたので、ゆっくりと骨喰に向き直る。少し暗い書庫に居ると、圧迫感からかいつもより骨喰の存在を大きく感じる。再び、骨喰の手は私の頬を這う。
今度こそ、逃場は無い。
ここまで来て、逃げることを考えている自分の心を嘲笑う。そっと目を閉じた。ふわりと息がかかって、手に力がこもる。あぁ、ついに、私は
―――――
ぺしっ
唇に、というか、顔に触れたのは予想外の質感だった。違和感に目を開けば、目に入ってきたのは骨喰のアップ
―――
ではなく、薄緑の紙である。え?なんだこれ。
「
…
いたのか」
「大将が来るよりずっと前にな。急におっぱじめようとするから焦ったぜ」
「どうして邪魔するんだ、薬研」
「
…
」
骨喰と私の間に薄い冊子を差し込んでいたのは薬研だった。なんだか不思議な気分のまま二人をぼんやりと見ていれば、突然薬研に腕を引かれて骨喰から離される。
「俺は、治療するのは歌仙しか認めねぇって言ったはずだぜ」
「なぜだ?」
「
…
だから、相性が」
「俺でも問題ないことは、こんのすけに調べてもらって分かっているはずだ。駄目な理由は無い」
「歌仙の方が大将の霊力に数値が近い。最善を尽くした方がいいだろ」
「
…
薬研。俺には、他に理由があるとしか思えない。何が気にくわないんだ?」
「
…
」
真っ直ぐに問いかける骨喰に、薬研はたじろいで視線を外す。当事者であるはずの私は口を挟む隙がなかなか見つけることができない。私の左腕を掴む薬研の手に力が入る。それに気づいてか、骨喰は空いている私の右手を握ってきた。実に変な状況だ。どうしたらいいのか分からずおろおろと二人の顔を見比べていると、先に動いたのは薬研だった。
再び、ぐっと腕を引かれたかと思えば、頭を抱え込むように抱きしめられていた。少し体勢がきつい。右手は相変わらず骨喰が握ったままだ。頭上の振動で、薬研が口を開いて軽く息を吸ったのが分かった。
「
…
治療じゃなきゃだめなんだよ」
「
…
?どういう、」
「治療だって割り切らねぇと、黙って見てられねぇんだよ」
薬研の言葉がすとんと胸に落ちてきて、まるで木琴を弾いたように心臓はトンと音を立てた。黙って見てられない。今彼はそう言っただろうか。うそだ、これじゃまるで
―――
「なんだ、薬研も主が好きだったのか」
火をつけたように、自分の顔に熱が集まるのが分かった。薬研が、わたしを、好き。まるで夢みたいな言葉は、するりと耳を抜けていく。ああ、もう少し、もう少しだけ留まってほしい。こんなに心地よい音は他にない。
おそるおそる視線を上げると、そこにあったのは真っ赤に染まった薬研の耳だった。骨喰から顔を逸らせて、何かを押しとどめるように唇を食いしばっている。ああ、そんなに強く噛んだら切れてしまいそうだ。触れたくなって手を伸ばそうとすれば、両手が封じられている事を思いだす。
「
…
あぁ、好きだよ」
ようやく骨喰に向き直った薬研は、言い聞かせるようにゆっくりとそう告げた。背筋にぴりりと電流が走った。力が抜けそうだ。好きという言葉が、こんなに強いものだなんて知らなかった。
「なら、どうして治療を断ったんだ。適任者として真っ先に通知が来たのは、薬研だったんだろう」
今、骨喰はなんと言っただろうか。驚いて、薬研を見ていた視線を骨喰に移す。私の視線に気づいた骨喰は、再度右手を握り直した。
「歌仙は次点だったと昨日聞いた」
「
…
知ってたのか、歌仙の奴」
「どうして?」
考えてたことが思わずこぼれてしまって、焦って口を噤む。薬研がこちらを見下ろす気配を感じて、視線を合わせる。少し戸惑ったように灰紫の瞳を揺らしていた。もう一度。軽く空気を吸い込む。
「どうして、薬研じゃだめなの?」
薬研が小さく息を飲んだ。
私を抱きしめる腕に力がこもる。
「
…
通知の手紙を読んだとき、こんな都合のいいことが起こっていいのかと
…
夢かと思った。大将は倒れるくらい仕事に一生懸命で、俺の一方的な恋慕なんぞ伝えたところで邪魔にしかならん。このまま何も言う気は無かったからな
…
治療って形であんたに触れる許可が下りたことに、胸が震えた。」
「
…
」
「でも結局、臆病風に吹かれたんだ。一度でも触れて、“治療”っつう態度を貫ける自信がなかった。“治療”を通して、俺の気持ちが見透かされるんじゃねぇかって思ったら、怖かったんだ。
……
見透かされた先、拒まれたらどうしようかって
…
。今の俺は、あんたのために在るから」
薬研の手が肩に乗って、そっと身体を離される。とん、と押されて、後ろに立っていた骨喰にぶつかる。
「
…
悪かったな、骨喰兄。俺は、何も気にせず自分の気持ちを言えるあんたが羨ましかったんだ。
…
歌仙は、そういう気がなかったみてぇだから、我慢できると思ったんだがな。あんたに取られるのは嫌だと思った」
「
…
そうか」
「だが、もう手を引くよ。俺の都合で治療を遅らせて、大将の身体になにかあったら、それこそ悔やんでも悔やみきれん」
「
…
あ、」
ちらりと、少し寂しそうな視線とぶつかる。しかし、それはすぐに逸らされて、薬研は手をひらひら振りながら書庫を出て行ってしまった。
まって、行かないで。
色んな思いが溢れて言葉が出ない。
待って。好き。行かないで。私だって怖かった。置いていかないで。
とっさに追いかけようとしたが、右手が動かずつんのめる。振り向けば、その先にいたのは骨喰だ。普段あまり動かない表情からは、内面を読み取るのは難しい。でも、いつもより、瞳が揺らいでいる気がした。
「
…
行くな」
ぎゅうと右手を握る力が強くなる。
「ほね、ばみ
…
。ごめん
…
ごめん、私、薬研が」
「どうしても、俺ではだめなのか」
「骨喰がダメなわけじゃない!
…
ただ、わたしが、
…
私が薬研を好きなだけなの」
ずきずきと心臓が軋んで痛い。骨喰のことだって、もちろん好きだ。大切な仲間だ。でも、どうしても、辛い時、困った時、悲しい時
…
嬉しい時、楽しい時、そして、夜眠る前。真っ先に浮かんでくるのが薬研なのだ。考えて、理性でどうにかできるものじゃない。
骨喰の手がそっと頬に伸びてきて、親指をぐっと滑らせたことで涙が落ちていると気づいた。ぽろぽろと零れて止まらない。私が泣くのは、ずるい。でも、いくら擦っても次々と溢れて止まらない。
「ごめ、泣きたいわけじゃなくて、」
「
…
わかった」
「ほねばみ」
「俺はあんたが好きだが、俺が好きなだけではだめなんだな。あんたには、あんたの気持ちがある」
頬の手を少し滑らせて、骨喰は微笑んだ。
「泣き止んでくれ。あんたの泣き顔を見てると、心臓が苦しくなる。笑ってるほうがいい」
「うん、」
「早く行け」
「へ」
「薬研のところだ」
「
…
っ、ありがとう
…
!」
骨喰の手がゆるむ。零れる涙を止められないまま、どうにか笑って書庫を飛び出した。
「
…
あーあ、よかったの?骨喰」
「いたのか、兄弟」
「んー、さっきね。諦めるの?」
「
…
わからない。でも少し、すっきりしている」
「そっか。
…
よし!じゃ、歌仙さんに何か美味しいお菓子もらいに行こう!きっと、今日は良いものくれるよ」
「
…
そうだな、行こう」
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