リース
2024-08-24 17:02:14
41947文字
Public ドラゴンズドグマ
 

オルグの独白(完結)

ドラゴンズドグマ2にて
本アカウントの覚者リースのメインポーンのオルグが、サブアカウントの覚者、叢雲さん宅のラルスさんと、そのポーンに転生した異界のリースに出会うお話。
※過去作であるDDON、DDDAのエンディング要素も少し含まれています。
※ゲーム内で語られていない部分は多少捏造が入っています。

叢雲さん宅のラルスさん
Lさん宅のスアくんをお借りしています。

※ラルス×リース
オルグ×スア
それぞれのBLCP要素あり

※2/20
4章、エピローグ他更新(4ページ目から)で完結




『3章』 2/2更新



物見塔で休息を取るラルス様とリースと別れ、用意された宿まで足を運んだ私とスア。
部屋に通されたところで装備と大杖のベルトを外して寝台の側に置くと自身も寝台に腰掛けてやっと一息をつくことが出来た。

「さぁ、ラルス様が私達に用意してくださったのですから、今は体を休めないと

マスクを下げて息を吐いた後、スアの言葉に顔を上げる。

……スア、少しだけでいいんです。今だけは……

そこで目の前に立っているスアに声をかけて腕を伸ばせば、彼はほんの微かに戸惑ったような表情を浮かべる。

この世界に今だ理解が追いつかない上、立て続けに戦闘したことで心身ともにかなり疲弊しているのがわかる。
正直少しだけで済ませられる自信はないが、こうでもしないとやっていられない。

本当に欲しいんですよ。頼みます。」


…………

……仕方ありませんね、本当に少しだけですよオルグ様。非常時ですので、何かあればすぐに対応できるようにしないといけませんから。」


暫くの沈黙の後ついに折れてくれたスアは腕に抱えた酒瓶と小ぶりな杯を渋々と渡してきた。










ラルス様とリースが物見塔の自室から出てきたのは、私達が宿から出てだいぶ時間が経過した後だった。

……お二人とも、随分とごゆっくりされてたようですね。」

そこまで言ったところで横に立っていたスアに小突かれた。思わず彼の方を振り向けば少しだけ怒ったような表情をしていた、ようなら見えた。

この世界になってから時間の流れがおかしくなっているため正確な時間まではわからないが、私とスアが宿で睡眠を取り、ラルス様とリースを物見塔まで迎えに行った時には既に1日近く時間が経過していたように感じた。


私の言葉に少し気まずそうにしている様子が見て取れるが、それでもお二人もなんとか休息を取れたようで、ラルス様の顔色もだいぶ良くなっている。まぁ、本当にゆっくり休めたかは定かではないが、こちらもその分体を休められたので良しとしよう。

「それはすまない……
だがおかげでよく休めた、ありがとう。」

その、先輩方もありがとうございます。マスターも元気になって何よりです。」

嬉しそうな笑顔を浮かべるリースも、すっかりいつもの調子に戻ったようだ。

「本当によかったですね。では、行きましょうか。」

どこか嬉しそうなスアの言葉に頷きつつ、この世界についての情報を得るため、我々は漸く海底神殿に向かうことになった。


かつて、海から突如として隆起してきた海底神殿は、以前マスターと訪れたことはある。あの時は海に沈んでいたため神殿の全体像を見ることはできなかったが、海が干上がったことで、その全貌が明らかになっていた。
見たところ、ここはかなり広い敷地のようだ。



崩れ落ちた城壁の間を抜けて広場のような開けた場所に出ると、そこには初めて来訪した時に海底神殿の地下にいたロセイエスという人物が広場に立っていた。

ロセイエスは獣人でありながら、ヴェルムントを建国した初代王とされているが、歴史からほとんどその名を聞くことはなかったとされている。
人々が噂していた、かつてヴェルムントは獣人の国だった、というのは史実だったということになる。

ロセイエスは我々の存在に気づき、こちらを見つめると口を開いた。
彼は覚者として竜を討ち、その旅路の果てに界王になり世界を見守る存在となった。

彼の姿は初めて会った時と同じく、途方もない長い年月を経てなのか、力を使いすぎて界王としての存在を保つことすら難しいのか、霊体のように佇むその姿は今にも消えそうなほどに揺らいでいる。それでも彼は私達に語りかける。

『"観る者"の視線が消えた

この世界はその観る者によって監視されている作り物でしかなく、覚者やポーンはそんな与えられた舞台で動く役者に過ぎないということ。

そして、彼がその"観る者"を探し出すため、界王の力を使い世界に介入し大勢の人を殺害したことで、その時代の覚者によって封印されていたということ。そしてそれが後に狂王と呼ばれる所以になったこと。

黙ってロセイエスの話を聴いていたラルス様とリースを見ると、二人とも何か思い詰めたような表情をしていた。


突然そんなことを告げられてもはいそうですかと納得出来るわけがない。わかったことは、つまり私とマスターとのこれまでの軌跡も全ては、その"観る者"とやらが楽しむためだけに用意されたものに過ぎないということになる。


「それでは!ラマスターが今までやってきたことは

声を上げたのはリースだった。ラルス様がこれまで成してきたことを誰よりも近くで見てきた彼にとって、今の話は受け入れ難いはず。

しかしそれは、私も我がマスターとのこれまでの旅を思えば彼らと同じ思いではある。
ラルス様は、悔しそうに俯くリースの肩に手を置き、ロセイエスに向き直る。

……なら、尚更そいつらの思うようになるわけにはいかないな。」

そう言い放つラルス様に、顔を上げたリースも力強く頷いた。

どうやらこの世界は、その"観る者"の目が届かない場所ということらしい。自分の思うような物語が見られないとなれば、こんな世界はもはや観る価値もないとでも言うのだろうか。
滅びる、というよりは思い通りにならないこの世界を消してもう一度作り直す、ということなのだろうか。全ては憶測の域を越えないが


……俺たちは、これからどうすればいい。このまま世界が滅びるのを待つしかできないのか。」

まるでラルス様の声が聴こえていなかったのか、彼はその問いかけに答えることなく再び口を開く

今世の覚者よ、迷いを捨てよ
己を信じるのだ

『我が命の灯火は今、絶える
だがその前に貴様の助力となり得る者を、この地に

そう言い残すと、ロセイエスの幽体は大きく揺らめいた後、静かに霧散していった。

その後、各地にいる"かつて覚者だった者達"がロセイエスの呼びかけに応え海底神殿に合流したのだった。




ロセイエスが言うには海底神殿には赤い雲の侵食を防ぐ結界が張られているらしい。ここに人々を避難させれば暫くはあの赤い雲からいくらか逃れることが出来るだろうと言い残していた。

封印され力をほとんど失っているとはいえ、この結界も界王の彼だからこそ出来たことなのだろうが、それもいつまで保つのかわからない。
それでも出来ることがそれしかないのなら、今やれる精一杯のことをしようとラルス様は再び各地へ赴くことになる。

滅んでしまうのなら、全てを捨てて横にいる愛するポーンと最期の時を過ごすことだって出来るだろうに。
それをしないのは自分とリースが覚者とポーンだからということを忘れていないからだろう。
進むことをやめ、覚者としての意志を手放すことがあれば、我らポーンは覚者様の元を離れ再びリムへと還ることになる。だからもし、本当に全てを捨ててしまうような男であれば私もスアもこれから先ついていくことはなかっただろう。

弛まぬ向上心こそが、覚者様と我々ポーンとを繋ぐ絆なのだから。ラルス様がこんな世界でも覚者であろうとするのは、無意識にそれを感じ取っているというのもあるかもしれない。こんな状況でもラルス様がまだ前に進むと決めた以上、私達は黙って従うほかない。
私としても、自信を持ってマスターの元へ帰るためにも、このままおとなしく滅ぼされてやる気はない。


それにしても、極限状態の時ほど人の本性が顕になる、というのはまさにその通りで。
ヴェルンワースやバクバタルでも人々の諍いは起こっていて、その度にラルス様が介入することになった。









そして現在、避難誘導と同時に各地に出現した巨大な赤い柱の正体を突き止め対処するためにここまでやってきたというわけだ。

赤い光の柱を目指し、ヴェルンワース西側の海に沈んでいた建物に足を踏み入れる。街から伸びる巨大な石橋を渡っている時何かが海から突き出ているのを毎回見ていたが、近づいてみると思ったよりも建物全体はかなり大きい。

ほとんど崩れているが、壁が地面に埋まっているのを見ると、実際はかなり高い建物だったらしい。

「どうやらあの光は、この建物の中心に繋がっているようですね。」

スアの視線の先を追うと、赤く巨大な光の柱が、空に赤い雲の中から地面に伸びているのが見える。


やはり、大きく崩れてはいるがこの塔の外観にはどこか見覚えがある。
海底神殿にせよ、かつてマスターや私がいた別の世界の面影を感じさせる建物が各地に点在しているのはどういうことなのか。
数多の世界が存在するのなら、似たような、あるいは同じものがあっても不思議ではないが。
この敷地も相当な広さだが、これよりも更に巨大な建造物である"月光の塔"とも造りが似ている。同じ時代のものなのか、何かしらの関係があるのだろうか。


そんなことを思いながら、円を描くように崩れかけの階段を登っていくと広場へ出た。かつてはもっと高い建物だったようだが、崩壊しているせいかこれ以上上に続く階段が見当たらないため、恐らくここが塔の最上部にあたる場所だったのだろう。

その広場の中心には、遠くから見えていた赤い光の柱があった。問題はここからどうすればいいかだがするとラルス様は自身の荷物を漁り始めた。

「これは剣が

ラルス様が取り出した魂魄の剣がまるで光の柱に呼応するかのように光っている。

「これ、何か意味があるんですかね。
バクバタルにあった扉や、床が上昇する装置に向けてやったみたいに掲げてみたらどうです?」

リースが横からダガーを使い、ラルス様に剣を掲げるポーズをして見せている。

「そうだな。それしか方法がないみたいだ

ラルス様も頷くと魂魄の剣を光の柱にむけて掲げる。


すると光の柱が空に吸い込まれるように消失し、直後空から激しい雷鳴と共に何かが降ってきていた。
あれは、何かの生き物のようだが奇声のような咆哮を放ちながら、その生き物は翼を広げ地上へと舞い降りた。

全身に赤く蠢く膜のようなものを纏った、翼のある四つ脚の生物。初めて見るがあれも竜の類だろうか。
全体的にドレイクに比べかなり細身ではあるが、脚が長いため高さがある。
剣で直接切りつけるにはややリーチが足りない。

「構えろ!」

分析している余裕もなく、ラルス様の指示に従い各々武器を構える。スアが詠唱を開始しエスコートアニマを張り巡らせるとともにラルス様とリースは竜のところへ向かっていく。

しかし、竜は首がもたげると口からブレスのようなものを出して攻撃してきた。

何にせよ正体がわからないままあの竜に近づくのはあまり得策ではない。それに、竜によって足元に吐き出された物体からは、ヒュージブルに似た赤い触手が伸びていた。迂闊に触れれば何かしらの被害を被るのは目に見えている。

ならば近づかずに倒せるのがベスト。

「ここは私にお任せを!」


ラルス様とリースの位置を確認した後、目を閉じてメテオフォールの詠唱を開始する。これもヴォルテクスレイジと同様にかなりの集中力とスタミナを削るものの火力は非常に高い攻撃魔法だ。
自身を中心に魔力を巡らせ、火を纏うイメージで詠唱を続ける。やがてふわりと体が軽くなり足が地面から離れるのを感じながら、身に纏っていた火球を一気に空に解き放つ。やがてそれが隕石となり空から降り注いだ。

「スアっ、支援を頼みます

再び地面に足が付くと同時に重力と脱力感に襲われる。駆け寄るスアに触れられて少しだけ呼吸が楽になるのを感じながら、爆音と竜の悲鳴を聴きながら立ち上る煙が収まるのを待った。

「オルグ様、次が来ますよ。」

彼は既にエスコートアニマを詠唱し直している。視線を竜のいた方へと移すと、舞い上がる土煙の向こう側に影が見えた。

流石に、これだけでは倒れてくれませんか

倒れててくれれば御の字だったのだが、やはりそう簡単には倒せないらしい。
絶大な威力を誇るメテオフォールを数発直撃したにも関わらず悍ましい竜はゆらりと起きあがり、威嚇するように咆哮を轟かせる。竜が怒りに任せて暴れ回る度にその体表に広がる赤い触手が蠢いて何とも不気味な光景である。

スアがいつでも詠唱できる体勢になるのを見てもう一度メテオフォールをお見舞いしてやろうとしていたところで、リースが近くにいないことに気づく。周囲を見渡すとリースが再び竜に飛び乗っているのが見えた。

「リース様、危険です!急ぎ離脱を!」

スアが暴れ回る竜にしがみついているリースに向かって叫ぶが、竜はリースをくっつけたまま再び空へと飛び上がってしまう。
リースは暴れる竜の体にダガーを刺して振り落とされないようにしているが、竜の外皮は硬く安定しないのかいつ落ちてもおかしくない。

「これくらい平気、ですよっ!」

リースはいかにも弱点と主張するかのような赤く光る部位目掛けてダガーを片方突き立てる。案の定竜はその度に酷く暴れる。


すると、自身の体によじ登る無法者を排除しようというのか、はたまた弱点に近づかせないためか、リースの背後には竜にまとわりつくように覆っているヒュージブルと思われる赤い触手が迫っていた。

「リース!そこから離れろ!」

ラルス様も竜の異変に気づき叫ぶが、少し遅かった
討伐を目前に油断していたのだろうか、竜の体から一瞬逃げ遅れたリースの脚に赤い触手が絡みつく。

「しまっ……

リースの動きを捉えた触手は脚から腰へ、更に上半身へと伸びていき、捕まえた獲物を逃すまいというように彼の体に巻きつき締め上げていく。

……!?うっ……くっ、そ……!」

動きが鈍ったリースが抜け出そうと足掻こうとすればするほど、触手はその体に絡みつく。
このままではリースが力尽きてヒュージブルに取り込まれてしまうだろう。

私のサンダーレインで狙えるか。こんな時に弓があればピンポイントであの触手を狙えるのだが
そもそも、あのヒュージブルの触手に攻撃が通るものなのか。そうこうしている間にも竜は咆哮と共に身を捩り、その度にまた触手が激しく動く。

すると地面から薄紫色の光が伸び始めた。見たところ落雷魔法の前兆に近い。竜が何かしらの魔法を仕掛けてくる。

「二人とも下がれ!」

ラルス様が声を上げた後、竜が空に向かって咆哮するとともに体をのけ反らせると、雷を帯びた竜巻がいくつも発生した。竜巻は地面を抉りながら不規則に動き回り、近づくことが更に困難になってしまった。

竜巻の隙間から見えた竜はまだ激しく飛び回っているが、リースはまだ落ちずにくっついているだろうか。




視界が晴れた頃、触手により竜の体から逆さ吊り状態になっているリースが、唯一まだ使える右腕を動かしダガーの柄を握り直していた。

こん、のっ!いい加減に!!」

ちょうど逆さになったリースの真横にきていた竜の首元、そこに1つだけ残った光る部位を見つけると、そこへ目掛け勢いよくダガーを突き刺した。

鈍い音と共に竜の体液が吹き出し、部位から光が失われる。

直後、まるで痛みに身を捩るように締めつけられた触手により、リースはダガーの柄から手を離してしまう。


竜は痛みに悶えるように首を大きく振り乱し、それにより触手の締めつけが弱まったことで、捕まっていたリースは空中に放り投げ出されてしまった。

リースはとても受け身を取れる状態には見えず、力なく空中に四肢を投げ出している。このままでは地面に叩きつけられてしまう

「オルグ様!」
「わかってます!」

スアの言葉と同時に駆け出し、大杖を放ると両手を広げリースをしっかり受け止める。それと同時にリースについていた最後の防御魔法が発動し、光が弾けて落下の衝撃を和らげた。

「う

受け止められた衝撃と締めつけからの解放により一拍遅れて咳き込むリース。深めに息を吐くと、閉じていた瞳をゆっくりと開ける。

「やれやれ本当に無茶をしますね貴方は。」

私の言葉を聞いて、リースも言い返せる元気がないのか、少しホッとしたような顔を見せる。

受け止めたのがラルス様でなく私で悪いですね。とは言わないでおこう。
スアも駆け寄ってきてリースにヒーリングをかける。



一方、痛みで飛ぶことができなくなった竜が落下し始める頃には、既にラルス様が走り出していた。

激しく地面に叩きつけられ、横たわる竜はパニックに陥り上手く起き上がれなくなっている。
よく見れば、竜の頭部を覆っていた赤い靄が取り払われて、いかにも弱点ですと言わんばかりの禍々しい角が剥き出し状態になっていた。

どうやら先程のリースの一撃が効いていたと見える。転んでもタダでは起きない彼らしいなと思ってしまった。
竜の元へ距離を詰めていたラルス様は、力の源であろう角を目掛け、渾身の一振りをお見舞いした。

剣を深く突き刺し、グッと押し込んだ後に勢いよく引き抜いたことで大きくひび割れた角が音を立てて砕けた。


広場に耳を劈くような烈しい断末魔が響き、暴れる竜の挙動は徐々に衰えたかと思うと、やがて石の彫像のようにバラバラに砕け、竜の体内で蠢いていたヒュージブルがまるで再び空に帰るように昇っていくのが見えた。

先程まで竜に突き刺さっていたリースのダガーが地面に落ち、乾いた金属音が響くのを最後に静寂が訪れた。

これは撃退できた、ということでしょうか

スアの言葉に空を見上げていたラルス様も息をついて剣を収める。

おそらく、一時凌ぎなんだろうが……兎に角一度ここから離れるぞ。リース立てるか?」

「勿論、もう大丈夫ですよ。」

リースは落ちたダガーを回収し、問題ないと言わんばかりにその場で軽快に跳ねてみせる。全くこのポーンは、本当に無茶ばかりして懲りていないのだろうか。そういうところもとことんマスターに似ていて嫌になる。

それにしてもこんな厄介な敵がまだ他にいるというのだろうか。
遠くからでもはっきり見える赤い柱を見つめて目を細めた。



そんな嫌な予感通り

避難の呼びかけのためにエルフ達のいる森、聖樹の里に赴いた我々は、あの悍ましい竜の仲間と思われるワームのような魔物ともう一度戦う羽目になってしまったのだった。

満身創痍になりながらもなんとかこれを退け、人々の避難誘導を進めていた。

赤い雲は、時間経過と共に徐々に大きくなっていった。