しちろ
2024-02-14 16:09:54
21598文字
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真夏のロケット

Twitterまとめ。


おいしい食卓

 近頃、瑠璃が料理をするようになった。それも一日三回だ。
 瑠璃の部屋を訪れると、良いにおいがしていることがままある。朝になると食事の支度をしているし、朝食を食べたと思えば昼食の用意をし、昼食を終えれば晩飯なに食おうかななどと言ったりする。若い瑠璃だが、珠魅なのだから別に食べなくても死ぬわけじゃないし、それほど腹が減っているわけでもないだろうに。
「瑠璃。君はそんなにマメだったかな」
「ううん、そういうわけでもないんだが」
 今日は煮込み料理らしい。簡素なかまどの上でぐつぐつと鍋が煮込まれている。
 作るの意外と楽しいし、食べると活力沸くよな~などという瑠璃は珠魅というより人間寄りになりつつある気もする。
「一日何度も何度も、最初は面倒だと思っていたんだが、アイツと一緒にいるうちにすっかり習慣になっちまって。今じゃあ、朝昼晩喰わないと物足りなくなっちまった」
「非効率的だな。その鍋だって、さっきからずいぶん煮込んでいるだろう」
「それはそうなんだが」瑠璃は小皿を取り、煮込んでいた鍋の中身をひとすくいすると、レディーパールに差し出した。
「うまいだろ?」
……まあ、うまいといえば、うまい」
 ひとなめしてみた瑠璃のシチューは、濃厚な茶色のスープによく煮込まれた肉のうまみがほろっと溶け出していて、実に味わい深い。
「な? いつもこんなに時間をかけられるわけじゃないが、手間暇かけるとうまいものができるんだって、シャイロもセラフィナも口をそろえて言うんだよな」
 シャイロのほうは、わりと適当料理だったが……と言いながら、瑠璃は二人分のパンとシチューとサラダをテーブルに並べ、飲み物をグラスに注いで置いた。
「瑠璃。私は食い気旺盛な君とは違って、食に興味はないぞ。今だって少し寄ってみただけで、これから仕事だ」
「もう、二人分作っちまったぜ。せっかく並べたから食って行ってくれ。味はさっき確認してもらった通りだ、悪くはないだろう」
 瑠璃はレディパールに座すよう促すと、自分も腰かけた。
「いただきます」
 何の呪文だ。
 レディパールが訝しんでいると、瑠璃に手を合わせるよう言われ真似をさせられた。
「これには何の意味があるのだ」
「よくわからん。わからんが、これをしないと、シャイロとセラフィナとコロナの注意(最後のが一番怖い)が一斉にオレに向けられるからな……人間の重要な儀式なんだろう」
 何やら覚えがあるのか、一瞬物憂げな顔を見せた瑠璃は「なんでもない」とつぶやいて自分の作った料理をもくもくと食べはじめた。
 レディパールもそれをまねし、よく冷えた水を一口飲むと食事を始めた。シンプルだが新鮮な野菜のサラダを食べ、パンをちぎってスープに浸し口に運ぶ。
 瑠璃とはとくに会話があるわけでもなく、二人が立てる食器の音と、時計の秒針が時を刻む音、外から聞こえる珠魅たちの笑い声がじんわりと部屋を満たしていた。

――うまいな。

 心からそう思う。
 ふと、瑠璃をちらっと見ると、レディパールのグラスが空になっていることに気付いた彼は、冷えた水を注ぎ足してくれた。この水、ライムだかレモンだかを絞ってあるらしく、さわやかでいい香りがする。

――確かに、こういう時間は悪くはないが。

 水で口を潤しそんなことを思えば、すかさす「でしょう!」と真珠姫がころころ笑う声が聞こえる。真珠姫、お前もか。
 こうして瑠璃と何気ないひと時を過ごし、それでも、レディパールにはやっぱりいまいち理解できない。理解できないが、エメロードなどは瑠璃の様子を知って「料理男子! イイと思います!」と手を叩いて喜んだ。
「あたしもジオに住んで分かったんですけど、とにかく、食べるってのは幸せなんです! 食べないと栄養が取れないとか死んじゃうとかじゃなくって、もう、ハッピー! おいしー! って感じです! 口から、ものを食べるだけで、この幸福感が得られるわけです! パール様、これは珠魅もぜひとも取り入れるべき習慣だと思います!」
「そうか? 時間と手間とカネの無駄なだけだと思うが……食にかける時間があれば、そのぶん鍛錬なり仕事なりこなすことができるだろう」
「もう、パール様ったらそんなこと言っちゃって! あたしは絶っ対、瑠璃さんに賛同するわ! 美味しいものを食べれば仕事にやる気も沸くってもんですよ! 煌めきの都市にもジュースやケーキやパフェが出てくるフルーツパーラーや、お肉やお魚、パスタやカレーライスやハンバーグや、もう挙げればきりがないですけど、とにかくたくさん食べられるレストランを作るべきです、でへへ。ちなみにディアナ様は『なるほど……ちょっといいかもしれませんね……』っておっしゃってました」
 ここまで聞いた時点で、レディパールは額に手を当てていた。
「なんということだ。ディアナまで懐柔されていたとは……
 一見、無意味な娯楽には厳しそうなディアナだが、長い付き合いのレディパールは、実はそうでもないことは知っている。今回は、エメロード渾身の説得、『ルーベンス様とディナーデート☆満天の星の下、二人でお酒などいかがですか!』が効いたらしい。
「ディアナ様、こうも仰ってました! 『職務の後に楽しみがあるとあれば、一日の務めに身が入るやもしれませんね。座に関わらず、自由に卓を囲める機会が自然に設けられるのもよい。……実は蛍姫様も甘いものがお好きなようですし、ルーベンスも、ガトのお酒をちょっぴり恋しがっていましたし、ね』って」
「そうか……であるならば、私も一考してみよう」
 頭が痛くなってきた。ルーベンスも……どころか蛍姫までが、すでに食のハンターたちの手のうちであった。ジェネレーションギャップやら同僚たちの乗り気発言に軽いめまいを覚えながら、自分の立場が劣勢であることを悟りつつあるレディパールである。
 というか、蛍にスイーツを教えたのは誰だ。アレクサンドルか。愚か者め。
「パール様、どうかお願いします! ここでもアップルパイやチョコレートやショートケーキが食べたいです! スイーツがなければ、もはや生きられない身体になっちゃったんです! シャイロさんの差し入れだけではもう無理です! これ以上食べられないと、あたし泣いちゃうかも!」
……
 こんなことで涙を流されてはたまらない。
 しかし、エメロード、いろいろ言っているが結局自分が食べたいだけなのではないだろうか。
 
 都市の住民たちを観察しながら、レディパールは思案していた。
 レディパールも気づいてはいる。都市崩壊後、人間の世界で食の魅力に取りつかれた者たちが、再び煌めきの都市に集い話題にするのはもっぱら食べ物についてである。
「ドミナって町知ってる? そこのレストランが出す飯! まあ田舎料理なんだけどさ、それが素朴でうまくって。素材がいいんだよな、畑で採れたばかりの野菜が使われてんだ」
「ロアの酒また飲みたいな~。つまみにラビ肉のジャーキー付けてさ、ワインをちろちろなめるんだよ。ただダラダラ過ぎていく、この時間がたまらないわけ」
「いやいや、そこはポルポタのエールとシーフードだろ! エールをあおりながらかぶりつく、あそこの海鮮料理はうまかった……! カニもエビもぷりっぷりでたまらなくってな」
「ポルポタと言えば、サフォー様もいらっしゃったんですよね? 海の幸いかがでした? やっぱり忘れられないほどうまかったんですか?」
「そうだね、僕の友人がふるまってくれたスープは、本当においしかったな。とても優しい味がして。うん、もう一度食べられるものなら食べたいな」

 ああ、ついに姫長まで……
 都市崩壊からのおよそ100年、珠魅たちは人間に紛れて暮らし、場合によっては人間のふりをし……ある意味――いい意味か悪い意味か知らないが――珠魅の在り方を変えるには十分な時間だったのかもしれない。

――パールぅ、わたしも都市でおいしいものたべたいけどなぁ。おにいさまのおうちでとれたフルーツ、とってもおいしかったよね? おねえさまのつくってくれたおりょうりも。ねえ、わたししってるんだからね? おにいさまのそだてたいちごや、おねえさまがやいてくれたクッキー、パールがこっそりたべてたの。
――ああ、もう。わかったわかった! 私は出かける。少し黙っていてくれ。
――もう! パールだってほんとうは、瑠璃くんのお料理きらいじゃないくせに。さっきだって、とってもうれしかったくせに。あなた、いつだってすなおじゃないんだわ。

 真珠はうるさいし……
 レディパールは玉石の間に赴くと、蛍姫の許しを得て外出することにした。
 食は人間の文化だ。ならば一度、人間に訊いてみるがいいだろう。



「という流れになりつつあってな。主に若い珠魅が中心だが」
「へぇ~、なるほど。珠魅もずいぶん変わってきたのね」
 レディパールの話を聞いて、大樹の家の住人の一人――セラフィナは、感心したように相槌を打った。彼女がこの家に住むようになった経緯は、レディパールは知らないが、セラフィナがマイホームに来たことでこの家はいっそう明るく華やかになった。
 それにしても、セラフィナの用意してくれた紅茶、おしゃれなティーセット、クロス、手作りのお菓子、テーブルに飾られた花……どれもが可愛らしく完璧で、これぞおもてなし! の見本である。
「ところで私、ひとつ気になっていたんだけど」
 両手に顎を乗せ、セラフィナがにっこり笑った。違和感を覚えて、レディパールは片眉を上げる。こういう時のセラフィナは、たいてい『よくない』
「瑠璃が料理して、あなたはいつもどうしてるの? 食べるだけ?」
「は?」
 つい変な声が出た。いま、やけに話が飛躍しなかったか。
「セラフィナ。私は珠魅の今後について、君に意見を聞きたいのだが」
「うんうん。それは大事だと私も思うわ。都市でも食事を提供するなら食材を確保しなきゃいけないし、手に入らないものについてはほかの街との取引だって考えなきゃいけないしね。でもその前に、私は瑠璃とあなたについて知っておきたいわ」
 どうなの? と妙な圧で聞かれ、レディパールは気まずそうに答えた。
「それはまあ……真珠姫が作ることもあるが」
 マイホームでの滞在経験が生きているのか、真珠姫が料理を手掛けることもある。腕前はさておき、「瑠璃くん、きょうはわたしがつくるね」「ああ。おまえのつくる料理。オレは好きだよ」「うふふ、うれしい」なんて砂を吐きそうな場面もたびたびある。
「真珠姫じゃなくてパール、あなたは?」
「私は……
 レディパールは、ついセラフィナから目を逸らしていた。
……瑠璃から提供を受ける側だな」
「いつも?」
……ああ」
「常に? 100%? 食べさせてもらってばっかりなの? まさか、配膳や後片付けまで全部、瑠璃にお任せなわけじゃないわよね?」
…………その通りだ」
「よくないわ! それはとってもよくないわ!」
 セラフィナが両手をついて立ち上がった。ものすごく嫌な予感がする。
 どこから取り出したものか、セラフィナは包丁とおたまを手に、決然とした眼差しで言い切った。
「パール、あなたも作れるようになりましょう。きっとその方が瑠璃も喜ぶわ。洗い物のやり方も覚えましょう。それに、自分で料理をするようになれば、瑠璃やエメロードたちの言うことがわかるかも」
 ね?
 セラフィナに天使のような笑顔を向けられながら、相談相手を間違えたとレディパールは思った。セラフィナは可愛い顔とおっとりした口調に反して、言うことやることいちいちエグイ。見た目通りに中身もやんわりしているシャイロにしておけばよかったのだ。


 セラフィナの指導は厳しかった。
「パール、エプロンはちゃんとつけて! そんなもの私には不要だ? なに言ってるの、エプロンは台所の戦闘服よ! ラビ柄がいやですって? 贅沢言わないの! どうしてもいやなら、赤いハート柄のや白いフリルのもあるけど……ラビでいい? そう?」
 だの、
「パール、もっと優しく混ぜて! 勢い良すぎて、お鍋の中に渦潮が発生しているわ! 料理はラヴよ! なれないうちは時間かかってもいいわ、もっと丁寧に愛情込めて! 肉を潰すのもそんな一撃じゃダメよ、キッチン壊れちゃう! ハンマーで叩き潰すとは違うの! 倒すんじゃなくて食べてもらうの!」
 だの、
「盛りつけはおいしそうに美しく! 料理は見た目も大事よ! 腹に入れば何でも同じ? そんな、前の瑠璃みたいな無粋なこと言わないで!」
 だの。
 かつて、これほどの困難があったであろうか。珠魅の脅威となるすべての敵と戦ってきたレディパールだが、珠魅を狂喜させる敵と戦ったのは初めてであった。そして、今日の敵はレディパールが戦ってきたどんな敵よりも手ごわかった。どんなって、不死皇帝と百回戦った方がましだと思ったくらい。
 食材を切り、鍋を煮込み、副菜を用意し、出来上がった料理をよそって何とか体裁が整う頃には、レディパールは精魂尽き果てていた。
「うん、これでまずはできあがりね。おつかれさま。今日作った料理のレシピは渡しておくわ。いい? 料理はくれぐれも、愛情もって丁寧に、よ」
 ニコニコ笑うセラフィナは、先ほどこの家を訪問した時と変わらない。
 だがこの地獄の特訓を終えるころには、レディパールには、セラフィナの棒飾りが鬼の角に見えていた。
「食材は渡しておくわ。あとね、これをやれば完璧よ」
 セラフィナに耳打ちされて、レディパールは絶句した。
「それは……本気かね」
「もちろん。これは人間には大切なコミュニケーションなの。とっても大事な人にしかやらないのよ。そうそう。煌めきの都市にフルーツパーラーがオープンしたら、ふたりで飲めるトロピカルドリンクはかならず置いてね。シャイロとお邪魔するから」
……そうか。蛍に進言してみよう」
 来た時よりむしろ濃くなった悩みを胸に、レディパールはマイホームを後にした。
 大事な人……シャイロとやっているのか、と聞くのは野暮な気がした。



 煌めきの都市に戻ったレディパールは、瑠璃の元を訪ねた。
「今日の夕食は、私が作ろう」
 レディパールがさっそく提案すると、瑠璃はそれは意外そうな顔をした。それから、彼女が野菜やら肉やら持っていることに気付いて改めて驚いた顔をした。
「あなたが? いいのか?」
「いつも馳走になっているから、たまには、な」
 レディパールが言うと、そうか、ありがとうと瑠璃は笑った。レディパールはいつもの涼しい顔をしているから、セラフィナによる地獄の特訓のことなど彼は知る由もない。瑠璃は慣れた手つきでかまどに火をおこし、調理器具を出してくれた。
「水はそこに汲んである。食器と飲み物は出しておこう。ほかに手伝えることがあればなんでも言ってくれ」
「ああ、ならば野菜の皮むきを……いや、いい。忘れないうちに、今日はひとりでやってみたい」
「忘れないうち?」
「こちらの話だ。気にしなくてよい」
「そうか。ならば遠慮しないで待たせてもらうよ」
 セラフィナにプレゼントされたエプロンを身に着け、レディパールは料理にとりかかった。すこしぎこちない彼女の背を、瑠璃がじっと見つめている。
「瑠璃、そんなに律儀に待たなくていいぞ。できるまで剣の練習なり散歩なりしてくるか、部屋にいるならば本でも読んでいたまえ」
「いや、オレはここでいい」
「そうか」
 なんだか非常にやりづらい。
 背中に瑠璃の視線を感じつつ、レディパールは教わった通りの手順で作業を進める。
 相変わらず、瑠璃との会話はなかった。まな板を包丁が叩く音だとか、ぐつぐつ鍋が煮込まれている音だとか、炎がはぜる音だとか、帰路につく珠魅たちの声が聞こえてくる。瑠璃め、せめて、窓の外でも見ていてくれればいいものを。レディパールは、レシピを見ながらにもかかわらず何度か間違えそうになった。
「できたぞ。君のメニューとあまり変わらずすまないな。ポトフとサラダ、丸パンだ。野菜とパンはセラフィナからもらってきたものだから、間違いないはずだ」
「なるほど。久しぶりだな。楽しみだ」
 表面上は努めて冷静に、実際には悪戦苦闘しながらレディパールは料理を作り、瑠璃の前に並べることができた。蒸気の向こうに見える、自分の騎士の顔がすこしほころんで見えたのは気のせいだろうか。
 作法通りのいただきますをし、二人は食べはじめた。
「うまい」
……本当か」
「ああ。さすが玉石の騎士だ。滋味深く、染み渡るようにうまい。あなたが長い旅の間に得た経験は、やはりオレとは違うものだな。あなたに剣でも料理でも敵わないんじゃ、オレはいったいどうすればいいんだか」
 苦笑している瑠璃は、なにやら盛大に勘違いしているらしい。レディパールは一人旅の間料理などしなかったし、今作った料理の腕前だって、数時間に凝縮された旅の末だったワケだが。
 レディパールは自分でもスープを飲み、我ながら味に感心した。塩で味付けしたシンプルなスープに、マイホームでとれた新鮮な食材と干し肉をごろごろと煮込んだだけだが、素材のうまみが存分に生かされている。
 瑠璃は、野菜と肉をほおばりスープを飲み干すと、もう一杯もらえるかと皿を差し出した。

 ああ、なるほど。こういうことなのか。

「どうした、パール?」
……いや、ようやく、君やエメロードの言うことが少しわかった気がする。ほかの珠魅たちの言うこともな。明日にでもみなと相談してみよう」
「なにか見えたのならばそれは良かった。だが」
 瑠璃が椅子を引き、立ち上がった。
「なんだ」
「今は、仕事の話は止めようぜ。パール、オレはあなたとの時間を楽しみたい」
 瑠璃は棚からワインボトルを取り出すと、「記念日用の、とっておきだったんだが」と言って栓を抜いた。ラベルには『シュタインベルガー』と書いてある。
「なんだ、ずいぶんな上物じゃないか。今日などに抜いてしまって良かったのか」
「ふふ。あなたには何でもない日かもしれないが、オレにとっては記念日だよ」
 瑠璃は二つのグラスにシュタインベルガーを注ぎ、ひとつをレディパールに渡した。次に自分の分のグラスを手に取り、軽く掲げる。蝋燭の明かりに、琥珀色のアルコールが揺れている。
「『いただきます』と同じで、これも人間の作法らしいが」
「それくらいは、私でも知っている」
 瑠璃に合わせ、レディパールも目の高さにグラスを持ち上げていた。
 瑠璃は笑い、乾杯と声をそろえ、二人はグラスを合わせた。
 珠魅に食事は必須ではない。こんなものは無駄な時間かもしれない。
 しかしレディパールは思う。その無駄の代わりに、このような時間が得られるのであれば、それも悪くはないだろう。

 




※おまけ

 セラフィナに出された宿題。
『はい、あーん♡』

……パール、そのスプーンはなんだ?」
 瑠璃の顔はまともに見られなかった。パール、わたしよりまっかよという真珠姫の声が聞こえる。黙っていてくれ頼むから。
「なにも言うな。言わなくていいから、黙ってこれを口に運びたまえ……