Hizuki
2018-09-16 10:07:35
10500文字
Public FF14
 

14ふせったーログ[オル光・ルン光・アイ光・その他]

【FF14】オル光・ルン光・アイ光・その他。ふせったーに上げていた分のSSまとめ。




『砕けぬ絆』(オル光)


お茶というには少し外れた時間。
表通りから外れた裏道でひっそりと営業している喫茶店は私のお気に入りの店の一つだった。

「またおしゃれな店を
「フフ、ここの紅茶が気に入っていてな」

この街に来てから約3ヶ月。
来て早々にトラブルに巻き込まれ、最初は一体どうなることかと思っていた。
だが同じ場所に居合わせた彼が窮地を救ってくれたおかげで事無きを得た。
そして礼を兼ねて誘った食事から始まり、今は大体1週間に一度、こうして顔を合わせて時間を共にするという付き合いが続いていた。
席に案内され、いつもの紅茶を注文すると、彼も同じものをと続いた。

「そのペンダントは?」

店内を見回す彼の首元に見慣れない銀色のペンダントが揺れている。
確か以前会った時には付けていなかったはずのもの。

「あぁ、これ?ちょっと前に買ったんだ」

彼は首の後ろに手を回して外すと、テーブルの上にそのペンダントを置いた。
やや太めのシルバーのチェーン、そして亀裂の入った盾の形のペンダントトップ。
見覚えのある盾に思わず目を見開いた。

「友達の買い物に着いてった店で見つけてさ、一目ぼれ、っていうのかな。即決だった」
そうか」

できる限り声を抑えてそう言うのが精一杯だった。
盾には頭に1本の角を持つ馬のような獣が彫られている。
あの盾の一角獣は仕えていた家の紋章だった。
とある雪国のとある貴族の紋章。

「何でか分からないけど、見た瞬間これだってなって、財布の手持ち全部はたいて買っちゃった」

遠い昔の記憶が蘇る。
私がその雪国の騎士だった頃のこと。
『彼』が冒険者として、初めて私の元を訪ねてきた日のこと。
『彼』が砂の国の反逆者としてでっち上げられ、私に助けを求めてきた日のこと。

「一目ぼれだったってことは、きっとこの盾に何かあるんだと思う」

きっと、ではない。
彼が持つペンダントの元となった盾は、かつて私が使っていたものを元にしているのだから。

「友人を守った騎士の盾、なんだって。だからお守りにしようかなって」

敵の放った光の槍が『彼』を射抜こうとした。
ただ私は『彼』を守りたかった。
『彼』を必要とする者のため、何より自分の愛する人を守るために。
そして槍は盾を穿ち、私の身を貫いた。
盾の亀裂はその時に生じたもの。
血の赤と日没の朱色が混じった空。

「オルシュファン?」
いや、何でもない。大丈夫だ」

様子がおかしいのを察したのか、心配そうに声をかけられる。
何も知らない彼に今の自分は奇妙に映るだろう。
彼はただ私の質問に答えただけなのだ。

「よかった」

意識を失いつつある中、確かに見たのは『彼』の笑顔だった。
彼の笑顔が、『彼』の笑顔と重なる。
こちらで初めて出会った時は似ている、というくらいの認識だった。

「やはりお前は笑顔がイイ」
「えっ、あっ、あのありがと

けれどこうして何度も顔を合わせているうちに気付いた。
彼は『彼の生まれ変わり』なのだと。
同じように窓の外も黄昏色に染まっている。
うろたえている彼を気に留める様子もなく、お待たせしました、と店員の女性が注文した紅茶をテーブルに置いた。
追加を、と呼び止め、メニューを開いて注文をもう一つ。

「何頼んだんだ?」
「サンドウィッチを。メニューを見ている時に気になっているようだったからな」

顔を左右に振って、普段の様子に戻った彼の問いにメニューを元の場所に戻しながら答える。
きっと2、3時間後には夕食だろうが、2人で分けるのならばそう大した量ではない。

「うわ、見られてた?」
「しかとこの目で見ていたぞ」
正直うまそうだなって思ってました」

自身の目を強調して見せれば、彼は恥ずかしそうに視線を逸らした。
自分の気持ちに素直なところも同じ。

「ああ、美味いぞ。もちろん、この紅茶もな」
「いただきます」

律儀にそう言ってからカップを持ち上げた。
彼の口に合うとイイのだが。
いつもと同じはずなのに、今日の紅茶は一段と美味しい気がした。

こうして彼を見ていると、『彼』と共に過ごしていた日々を思い出す。
決してそう長い期間ではなかった。
それでも十分すぎるほどに幸せな時間だった。
彼がこの盾に巡り合ったのは偶然か、それとも必然か。
何も覚えていなくてもいい。
何も思い出さなくてもいい。
ただ、彼と同じ時を過ごせることに感謝を。
どうかまた、彼を守れますように。
そして、もしも叶うのならば、もう一度『彼』の笑顔が見られますように。