まよこ
2024-10-10 18:02:32
7045文字
Public 神田
 

怪談

昭和初期の極道神田の語る怪談七話
登場人物: 神田。昭和初期の極道


五話


 俺の育った山じゃ冬ともなると、どこもかしこも雪で覆われる。そんな真っ白い雪原で、点々と続く動物の足跡がふっと途切れることがある。まるで、そこで急に空中に引っ張られたみたいに。足跡をたどって後退しただけだろって? もしくは周囲のくさっぱらに飛び込んだか?
 ま、そうなんだろうが。話の腰を折るなよ。動物ってのは人間様よか賢いもんよ。

 俺は一度、人間の足跡が途切れるのを見たことがある。点々と続く二本の足跡。大人の人間の大きさのそれは、雪原の真ん中でふいに途絶えていた。周囲に飛び移れるような草原もない。それこそ、途中で忘れ物でもして戻ったか。同じ足跡をたどって。その時はそう理解した。
 途切れた足跡の横を通り過ぎしばらく歩き続けていくと、白一色の平面に、鮮やかな赤い点をみた。動物でも撃たれたかと思い、近づいてみればだんだんと何かが倒れているのが見えてくる。キツネやテンなんかよりも大きい。遠目でもわかるくらいの赤だったから、そこそこの大きさだろうとは見ていたが、はたしてそれは人間の大人だった。
 頭は砕けて中身が飛び散り、降り積もった雪を赤く彩って、放り出された四肢はぐちゃぐちゃに折れ曲がっていた。
 まるで、かなりの高さから落とされたみたいにな。