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まよこ
2024-10-10 18:02:32
7045文字
Public
神田
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怪談
昭和初期の極道神田の語る怪談七話
登場人物: 神田。昭和初期の極道
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一話
俺は釣りが趣味なんだけどよ。といっても適当に釣っては戻すばかりだが。
これは、珍しく列車で遠出をして釣りにいこうと思い立った日の話だ。
ひどく天気のいい日だったが、駅は人気がなく線路の端に駅員が一人いるだけ。たいして乗る機会もねえがこんなもんかと待っていると、駅員のアナウンスに次いで列車が駅内にやってくる。耳に痛いひび割れたアナウンスに送られ列車に乗り込んだ。がたがたと揺れる列車は山道をひたすら進んでいく。車窓に流れていく自然は懐かしい実家のあった田舎を思わせる。
気が抜けたかうつらうつらとしていたらしい。
いつの間にか乗客が増えていた。
車内はがやがやと騒がしくなり、気を紛らわせようと窓の外に目をやった。遠目に川の上にのびる鉄橋がみえる。列車は流れるように眺めの良い橋の上へと差し掛かる。
山々の合間には存外広い川が流れていた。随分と高度のある橋の上をごとごとと列車は走り抜けていく。この辺じゃ何が釣れるもんかと頬杖をついて車窓を眺めていれば、
突然、轟音が響いた。
車内を衝撃が突き上げる。そこからは絵に描いた阿鼻叫喚だ。
絶叫、浮遊感。飛び交う荷物と人間。
車内はゴミをぶちまけた路地裏以上の乱雑さだ。
上下左右もわからないまま、真っ逆さまに落ちていく。
どぶんと音を立て沈み、水の冷たさだけがあたりに満ちた。
…
気がつけばそこは未だ駅構内。全身が水に浸かったかのようにじっとりと湿っていた。
拡声器でひび割れた駅員のアナウンスが聞こえる。駅構内へ流れ込んでくる列車のきしむ甲高い高音が、耳障りな悲鳴にも笑い声にも聞こえた。
そんときゃ、白昼夢でもみたかと思ったが、気分も悪くなって釣りに行くのはやめた。
後日聞いた話だが、あの路線の列車が事故で鉄橋から墜落したらしい。
あんまま乗ってたらどうなってたもんかなぁ。
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