mishiadd
2024-08-07 22:45:42
25650文字
Public
 

宮本伊織の「薔薇」トリロジー:薔薇の名前

現パロ。令和六年の盈月の儀。子供の頃に誘拐されて「女の子」として「躾け」られていた時期のある宮本伊織くん(14)に召喚されたセイバー。【!】アレルギー表記:モブ伊(未遂)、伊織くんの女装、セイバーの女装、剣陣営のキスシーン、伊織くんの精通シーン
※『宮本伊織の「薔薇」トリロジー』は完全な言い掛かりで伊織くんの幼少期トラウマを捏造するシリーズです


八、



ふたりでシングルベッドに向かい合って眠っていた。
――朝、先に目を覚ましたのは伊織の方だった。

ひゅ、と喉の鳴る音と、どこか戸惑ったような気配に、寝入っていた筈のセイバーも「んん、」と起き出してくる。

――あ、セイバー」

伊織がセイバーを見る。その端正な幼い顔が、蒼褪めているようにも、赤らんでいるようにも見えた。
「どうした、イオリ」と眠い目を擦りながらセイバーが身を起こす。腰のあたりに掛けていたブランケットを、おもむろに伊織が持ち上げる。中を覗き見て、「――ああ」とセイバーが小さな声をあげた。

伊織とセイバーが顔を見合わせる。――それは。



子供時代の終わり。――未分化の、何者にもなれる時代の、終焉だった。












盈月を喰らった巨大な獣を、セイバーの界剣が真っ二つに薙ぎ払う。

「タケル」、とその真名を呼んでくれた己がマスターを見遣り、別れの目配せをする。儀よりも、このマスター自身の事情に振り回された時間の方が、結局は長かったように思う。
――きっと、これから座に還ったとしても、この名を忘れることは決してないのだと思う

すべてが光の粒となって消えゆく視界の中、伊織と目線が絡み合う。その瞳が、うっとりと、まるでどこか遠くの夢を見るように――細められるのが見えた。



ああきっと、彼女はまだそこにいるのだ。



伊織の体がたとえ精通を迎えて未分化の時代が終わろうと―― 一度伊織自身が受け止めて、ひとつに融け合ったのであるならば。
きっと彼女は伊織の中に居続けて――そして、伊織はきっと、あのように生き続けるのだろう。

何者でもあるその引力を湛えたまま、周囲の目を惹きつける。どうしようもない程に。

望もうが望むまいが、それが伊織という生き物の本質であり――それ自体はもはや、セイバーにはどうしてやることもできなかった。
ただ、その心のつかえがひとつでも取れる、そのほんの手助けでもしてやれたならば。――その無茶な生き方に、ほんの少しでも手綱をかけてやれたのならば。

どうしようもなく生きづらい、愛おしく狂わしい、その魔性に。




その生に、幸多からんことを。