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mishiadd
2024-08-07 22:45:42
25650文字
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宮本伊織の「薔薇」トリロジー:薔薇の名前
現パロ。令和六年の盈月の儀。子供の頃に誘拐されて「女の子」として「躾け」られていた時期のある宮本伊織くん(14)に召喚されたセイバー。【!】アレルギー表記:モブ伊(未遂)、伊織くんの女装、セイバーの女装、剣陣営のキスシーン、伊織くんの精通シーン
※『宮本伊織の「薔薇」トリロジー』は完全な言い掛かりで伊織くんの幼少期トラウマを捏造するシリーズです
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五、
狭いシングルベッドにふたり並んで寝そべって、天井を見上げている。
伸び盛りの
――
若木のように細くしなやかで薄い体がふたつ並んだところで、安物のパイプベッドは軋み音ひとつ立てない。
伊織に借りたパジャマを乱雑に着込んだセイバーが僅かに身動ぎし、伊織がセイバーに背を向けて横向きになる。申し訳程度にふたりの腹のあたりに横断して掛けていたブランケットが巻き取られ、少しだけセイバーの脇腹が露出した。「あ、」とそれに気付いた伊織が手を伸ばしてブランケットを引っ張り直し、セイバーの腹部を覆う。
「別にいいのに」とも言えず、セイバーは伊織のするがままにさせておく。
再び横臥した伊織に、天井を見上げたまま「イオリ」とセイバーが声をかける。「ん、」と返事がある。
「明日、どうするつもりだ」
「
――
……
」
逡巡するような間があり、やがて「まあ、見ていてくれ」とだけ伊織が言う。セイバーがやや上半身を起こして隣に横たわる伊織の背中に「私に言えないようなことなのか!」と叱責する。
「私に言ったら止められると思って言えないのか。そういうことをするつもりなのか、きみは」
「これが俺の戦い方だしやり方だ。俺はこれしか知らないしできない。手出し無用、口出し無用」
「なにが『手出し無用、口出し無用』だ。私にきみを護れと命じたろう。そういうのは、私に頼らず自分ひとりでなんとかできるようになってから言うものだ」
「なら前言撤回だ。別に護ってくれなくとも構わない。おまえの言う通りこれは儀の進行には無関係だ。おまえが現界し続けるのにマスターが必要だというのだって、別に
俺が死ななきゃそれでいい
んだろう。心配しなくたって死にはしない、おまえに迷惑はかけない」
「きみッ
――
」
頑なに背中を丸めてダンゴムシのようになってしまった伊織の肩を背後から激しく揺らす。勢いをつけて伊織の体ごとひっくり返してやると、ブランケットに顔を半分埋めた伊織の顔がこちら側を向いた。拗ねたような、頑固なような、セイバーの視線を避けてぐっと目線を下げたままの月夜の色をした瞳に、セイバーが何かを言いかけようと大きく息を吸い、そしてそのまま黙ってしまう。
上半身を起こしていたのを、セイバーが勢いをつけてぽふんと再びベッドに倒れ込む。ごろん、と天井を見上げ、それから伊織と向かい合って横になる。
丸まったままの伊織の、癖毛のつむじが見える。「はあ、」と溜め息をついて、そこにこつんと軽く額を合わせた。伊織のふわふわした前髪に顔を埋めたまま言った。
「
……
儀は、今はどうでもいい。きみの心配くらいさせてほしい」
「
――
」
「
……
わかったよ」
はあ、と何度目かの溜め息をつく。セイバーが伊織のつむじに顎を乗せた。
「きみは私の言うことなんか聞かないし、一度決めたことは決して曲げない。
――
更にいうと、
自分を勘定には入れてくれない
」
「
……
セイバー」
「ならせいぜい、きみがきみ自身を大切にしてくれない分、私がきみのことを大切にしてやるしかない。私はきみのサーヴァントだからな」
伊織がゆっくりと顔をあげる。おっと、と伊織のつむじから顎を離したセイバーが、見上げてくる伊織の顔を覗き込んだ。ようやく目が合った、と思う。
「セイバー、」と伊織が密やかな声で言う。「うん
……
?」となんとなく、至近距離でその吸い込まれそうな月夜の色の瞳を眺めていたセイバーが、上の空で答える。
「セイバー。
……
おまえの夢を、見たよ」
「
……
イオリ」
「大人たちはおまえを利用した。おまえを鏖殺のための殺戮装置とした。
――
おまえの中の『少女』すら、搾取して殺人の道具とした」
クマソ
の
――
。
どの逸話のことを言われているのかをすぐに理解する。同時に、このマスターには既に己が真名がバレていることも。
うっとりと、夢見るような瞳で伊織が自分の目を見ているのがわかる。これは
悪い
共感だと
――
痺れ始めている頭のどこかで思う。
「でも
――
だからこそ
――
これは、『武器』なんだ。俺を、おまえを、搾取することで大人たちが自分で証明したんだ。俺たちの『これ』はあいつらに
効く
んだって」
「イオリ」
「だから見ていてくれ、セイバー。俺は
やり遂げて
みせる。
――
おまえの分も、俺が一矢報いてみせるよ」
それはきっと、無意識のうちに伊織の根底に沁み込んだ仕草のうちのひとつだった。あるいは、伊織はそれ以外に己の感情を相手に表現する方法を知らないのかもしれなかった。
幼い頃にインプットされた
、『
アウトプット
』
の方法が間違っていた
。言ってみればそういうことだったのかもしれない。
絶望的なまでに出力の仕方が間違っている
――
それでも。
それでも、伊織がセイバーに対して
何か
を示したかったことだけは、事実だった。
伊織が、うっとりとセイバーの夕陽の色をした瞳を見つめている。ゆっくりと瞬きをして、濃い睫毛に縁どられた広い瞼を閉じる。そのまま、セイバーの唇に唇で触れた。しっとりと、少しだけ乾いた柔らかい感触があって、すぐに離れていく。伊織が目を開く。月夜の色をした瞳が、再びセイバーの瞳を見つめる。
セイバーが目を見開く。ややあって、己の鼓動がだんだんと早まってくるのを感じる。何が起こったのかを認識してようやく、心臓が早鐘を打つ。鼓膜にまでばくばくと、激しい動悸の心音が響くようだった。
――
違う、とセイバーは思う。違う、違う、違う、違う。イオリは
――
イオリはわかっていない。自分が相手に
どういう信号を送っているのか
、理解していない。
だから、汲んでやらねばならないのはセイバーの方なのだ。
「イオリ」とセイバーが平静を装って名を呼ぶ。
「決して無理は
――
してはいけない。きみが
――
何を
――
しようとも
――
」
「見ていてくれ。俺がそうと言うまで、決して手を出すな」
「わ
――
わかった
――
」
――
果たして本当に平静を装えていたものか。
結果として会話自体を有耶無耶にされたようなかたちになったが、伊織の方は満足したようで、そのままセイバーに再び背を向けて横になり、間もなく軽い寝息を立て始めた。
セイバーはといえば
――
再び天井を見上げた。片手で目許を覆う。心中で、「あーあ」と軽い自己嫌悪の声をあげた。
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