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mishiadd
2024-08-07 22:45:42
25650文字
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宮本伊織の「薔薇」トリロジー:薔薇の名前
現パロ。令和六年の盈月の儀。子供の頃に誘拐されて「女の子」として「躾け」られていた時期のある宮本伊織くん(14)に召喚されたセイバー。【!】アレルギー表記:モブ伊(未遂)、伊織くんの女装、セイバーの女装、剣陣営のキスシーン、伊織くんの精通シーン
※『宮本伊織の「薔薇」トリロジー』は完全な言い掛かりで伊織くんの幼少期トラウマを捏造するシリーズです
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四、
伊織の周囲には割と『級友』が集まってくることに、セイバーは気付いた。
昼食の時間になり、待ちに待った総菜パンをようやく伊織から受け取ったセイバーが上機嫌でぐるぐる巻かれたサランラップを剥いていると、あっと言う間に机の向きを変えて島を作った級友たちが伊織を取り囲んだ。おっと、と今日から加わったセイバーの存在に気付いた一人が島を一回り大きくして、セイバーも輪の中に加え入れる。
「イオリは人気者なのだな
……
?」
呆気にとられたセイバーがぽつりと零すと、伊織の座っているのとは反対側のセイバーの隣席を陣取った女生徒が誇らしげに言った。
「伊織くん、優しいからね! 誰かが何か困ってたらすぐ手伝ってくれるし。なんでもできるしかっこいいのに威張らないし」
「女子にも人気あるけど、結構男子でも宮本くんに憧れてる人多いんだよ。剣道強いしね」
ひそ、ととっておきの秘密を打ち明けるようにもうひとりの女子がセイバーに耳打ちする。セイバーは伊織の彼女だと思い込まれているので、これは彼女たちにとっては恋バナの一環だ。
ほお、と素直に感心した様子のセイバーが伊織の横顔を眺めながら総菜パンをぱくつく。それをどう勘違いしたのか、きゃあきゃあと盛り上がった彼女たちに「惚れ直した!?」と息せき切って尋ねられる。
「
……
そういえば聞いたか伊織、あの噂」
伊織の斜め前方で弁当を食べていた男子生徒が、ぽつりと言った。
なんとなく伊織の周辺に集まりつつもそれぞれで話をしていた面々が、一斉にそちらに顔を向ける。伊織もパンから顔をあげてそちらを見た。
「
……
噂?」
「体育のヤマセンいるだろ。
……
あいつにさ」
ひそ、と声を潜めた彼がすぐ隣の別の男子生徒に耳打ちする。聞いた方が「ゲッ」と蛙の潰れたような声をあげ、慌てて更に隣の女生徒に耳打ちする。そうして数人を介した伝言ゲームがようやく伊織とセイバーの元に届いた。
「体触られた女子が何人かいるって。
……
証拠ないし、恥ずかしいし、あいつ怖えから親にも言えなくて泣き寝入りしてるって」
伊織が目を見開く。隣でセイバーも怒りを露わにしたが、すぐに我にかえって隣の伊織を見遣った。
「イオリ」
「
……
そうか。泣き寝入りしているのが誰かわかるか?」
伊織が話を持ち込んできた当の男子生徒に問う。
「ん
――
多分。
……
最近、急にガッコ休んでる子に心当たりがある。この噂聞いてから考えてみると、もしかしたらその子かもって」
「そうか」
「イオリ」
セイバーの呼び声が険しくなる。「なんだ」とうるさそうに伊織が振り向くと、「ちょっとこっちへ来い」とセイバーに腕を掴まれて乱暴に引き摺られる。きゃあきゃあと騒ぐ女生徒たちの声を遠くに聞きながら、教室の隅でこそこそとふたりで声を潜める。
「セイバー、なんだ急に」
「なんだ急に、ではない。きみ、一体なにをしようとしている?」
「
やって当然
のことをしようとしているだけだ」
「なぜきみが? きみには関係ないだろう? それこそ、きみの言う『大人』に任せておけばよい。これは儀の進行とは無関係だ」
「
大人が子供を搾取している
。
――
もし、狙われたのがカヤだったら? 俺に無関係とは到底思えない。これは
悪しき
ことだ。排除しなければならない」
「
……
きみは
子供
だ。剣も魔術も扱えない、ただの無力な子供なのだ。危険だ」
「だったらおまえが俺を護ればいい」
――
なんと傲慢な物言いだろう、とセイバーは絶句する。
紆余曲折あって盈月の儀を勝ち抜くためのパートナーになった覚えこそあるが、伊織個人のボディーガードになった覚えはついぞない。ましてや、好んで要らぬ火の粉を浴びようとしているような人間の。
セイバーが自分の言うことを聞いてくれないわけがない
と信じて決して疑わない、とんでもない
信頼
じしん
。
「セイバー」
「
……
いいだろう。きみがやろうとしているのは
正しき
ことだ。『善』だ。
おめでたい、お人好し極まりない、その上儀の進行とはこれっぽっちも関係ない愚行だが、いいだろう。
――
その大義をもって、私がきみを護ろう」
「まあ、きみが何をしようとしているのかは知らんがな」とセイバーが諦めたように付け加える。
話はまとまったとばかりに伊織が軽く頷き、ふたりで席に戻る。伊織たちの様子を窺っていたらしい女生徒が、「話、もう終わった?」と興味津々で尋ねてきた。
着席すると同時に伊織が言った。
「新井、あとで被害者のLINEを教えてくれ。俺の方で話を聞いてみる」
「伊織、これも首突っ込むのかよ」
黙って話を聞いていた男子生徒のひとりが呆れたように声をあげた。「新井もよくねえぞ、こうなるってわかってんのに伊織に話持ってくんの」。
新井がバツの悪そうに「へへへ」と頭を掻いた。
「悪い。
――
伊織
さん
に相談すると、いつもなんとかしてくれるからさ。
俺、実は休んじゃった子のことちょっと気になってて。なんとかしてあげたかったんだけど、俺じゃあどうにもなんねえから」
「伊織ぃ。
……
無理すんなよ」
「ああ」とだけ短く答え、伊織が残りの総菜パンの欠片を口の中に押し込んだ。
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