MN*B
2024-06-19 01:05:45
13883文字
Public 蠱毒な夢術廻戦:pixivバックアップ
 

頭に響くは怨嗟の声

 前回はシリアスホラーな戦闘描写有な話でしたが、今回はギャグ有のノリ軽めです。
主人公ネームレスじゃないんですけど、出すタイミング逃しました。次話には出す予定です。
注意書きは1ページ目にあります。(シリーズの説明文のとこにもあります)

 前作の閲覧、ブックマーク、いいね、ありがとうございます。
すごい設定の小説なのに読んでくださって感謝してます。

 アニメの感想になるんですけど…9話を二回見て気づいたんですが、伏線の張り方えげつないですね。
映画館の受付のお姉さんの腕時計。映画館の掃除用具横に落ちている服。
人間の調達先がちゃんと描写されてるの、見習いたいところです。
 
 
 


#オリ主 #五条悟 #夢術廻戦 #伊地知潔高
2021年1月9日 22:00



 手枷を外してやれば、腕を回して身体をほぐす動作をしている。
腑に落ちてはいない顔をしていたが、彼は大人しいままだった。
この手枷には、弱い呪術師の呪力くらいなら封じ込める力がある。使いどころが限られ過ぎていてアンティークだけど。
それを外してもなお、こちらに攻撃してくる様子はない。

 ささ、出口はこっちだよ~と声をかければ素直についてくる。
術で隠されていたドアを開けて、廊下にでる。彼は首をかしげていた。

「あれ?そういえばあの部屋、ドアなんてあったか?」

「現にあるじゃない~。寝ぼけてるんじゃないの、三日も寝てればさ」

目をくらますだけの術にはちゃんとかかってた。
嘘をついている様子もない。


 切れかけた電灯がちらつくだけの、薄暗い通路を歩いていく。
ペタと反響する足音。やっべ、この子裸足だった。
ちらっと後ろをついてくる彼を見てみるが、本人はそのことを気にしてなさそうだ。
気にされたって今ここに履物があるわけじゃないから、結局裸足で歩いてもらうだろうけど。
変わった子だな〜。こんな状況なのに落ち着いてるし無頓着なだけか、それとも

「帰してもらえるなら帰るけどここどこ?」

彼は歩きながら、不審げに質問を投げかけてくる。
僕も止まらずに返答をする。

「東京」

「とうきょうって、東京!?」

 そう、東京だ。
反転術式によって回復した透坂の報告によって、彼は現場近くの病院からこちらに移送された。
本当は京都の方にいくはずだったけど、僕が事件に関わったってことでゴリ押しして、ここにしたのだ。
彼には気になることが多かったから。


「移動に何時間かかるんだ。あっー、スンマセントイレ行きたいん、ですけど」

気まずそうに訴えた彼に、そりゃそうだ。と了解する。
三日も寝てたんだ、むしろ漏らしてないのがすごいよね。さすがにそこまでは声に出さずに案内してあげる。

「いいよ~。おっと、ここを曲ってハイ、ここね」

トイレの標識のついたドアを示してやれば、短い感謝の言葉と共に少し頭を下げてくる話し方的に敬語苦手なんだろなあ。
ごゆっくり~。そう言って手を振れば、少し嫌そうな顔をして中へ入っていく。
さすがに中までついてはいかない、どうせ逃げられやしないんだから。

ここは呪術高専内にある地下だ。トイレの中にも逃げ道はない。
まぁ僕がこんなに近くにいて逃がすわけもないんだけどね。



 通路の壁にもたれて彼を待つ。

「まさか治療を受けた後に逃げ出すとは図太い男だ」

 透坂。そいつが呪詛師と接触していたという報告が上がった。
そして、現場に残された状況を鑑みても、彼には疑わしい部分があることがわかった。
透坂を尋問することが決まった時には手遅れで、すでに本人は逃走済みだったという。足取りも完全に見失ってしまったらしい。
そのため今回の件についての証言は、時間を稼ぐための嘘だとみなされた。
ゆえに、非呪術師だと思われる少年は拘束を解除。事情聴取後は解放していい先ほど受け取った連絡はそういうものだった。
報告書には、彼のことは非呪術師として書いておいたから当然の処置だ。

 だが、自分は見てしまっている。
今でこそ彼は非呪術師の気配になっているが、その身には呪いが巣食っている。
それは彼が眠りから覚める前に顕著になった。
一体何が引き金になっているかはわからないが、呪いの気配が滲み出ていた。枷をしていなければ呪力も溢れていたかもしれない。
透坂が報告した内容も、すべてが嘘というわけでもなかった。

 なぜ僕が報告書に少年の事を非呪術師だなんて書いたのかぶっちゃけ私情だった。
気絶した彼からは呪力も、呪いの気配もぱったりなくなってしまったし。でもこのことを馬鹿正直に書けば、表向きには事件に巻き込まれた被害者として死亡なんて処理をされかねないし。
上の連中は、危うきには近寄らずっていうか危うきは即刻処分って感じなんだもん。相手が子どもでもね。
それにまだ10代の少年が、まるで『死なさせてくれ』と言っている様子は放っておけなかった。


 ポケットからケータイを取り出し、通知を確認するが目当てのものはない。

「いまだに情報はなしか」

 わからないのは彼の戸籍だ。
彼は身に着けていたもの以外所持しておらず、携帯電話がなければ財布も、身分を証明できるものは何もなかった。
現場から見つかったのは、フレームの歪んだ眼鏡と折れた歯。
呪術師二人のものではないとのことで、消去法的におそらく彼のものだという。
だが起きた彼を見たところ、目が悪いようには思えない。むしろ良すぎる印象を受けた。
通路を歩く足取りはしっかりとしていたし、何よりあの部屋ではこちらを視線で捉えていた。

 あの部屋彼が拘束されていた部屋は、光源がない。真っ暗闇だった。
それなのにお互いが見えているかのように振る舞い、尚且つドアがない部屋だということを認識していた。
目をくらます術にはかかっていたが、部屋がどういう造りだったのかを把握できていたということになる。

「一体なんなのかな~彼」



 ドバンッ!!と物凄い音を立てて、トイレのドアが開いた。

個人差はあるけど、用を足すには早すぎない?手ぇ洗った?
そう声をかける前に、彼は血の気の引いた顔で言った。

「っち、ちちちちちっ」

チーズ星人?」

「カップ麺のCMじゃねぇよ!!」

手でポーズをとってみせれば、返ってくる鋭いツッコミ。

「よく知ってるね~、世代じゃないでしょ」

2002年くらいのCMだ。そこからいくつか出たといっても年齢的に覚えていなさそうだけど。

「バッチリ世代だわ!!ちがっ、そうじゃなくて!!」

「え~~」



「チンコついてる!!!」



ポクポクポクチーン。
木魚の音が鳴った気がする。


え~っと。当然じゃない?」

だって男の子でしょ?と返す前に、怒鳴り返される。

「そんなわけねぇだろ!!女だぞ!!」

「それはつまりどゆこと?心が女の子なの?」

彼はどう見ても男だけど、女で、でもついているわけでもなかったのに、今はついている?
自分でも何言ってるかわかんなくなってきた。
混乱している頭へ、さらに意味不明になる言葉が投げ込まれる。

「俺は男だっつーの!!ああもうややこしいなコレ!」

とりあえず用足してくるか!!
そう言って中へ戻っていった彼(?)。


「マジで一体なんなんだろ

置いてけぼりを食らった感じがして、ちょっとだけ呆然とした。