匣舟
2024-06-18 20:51:46
27049文字
Public 東リベ
 

東リべ短編まとめ

いままで書いたと〜りべ短編(〜10000字)のまとめです


Her princess theory.

 まだ保育園に通ってたぐらいの頃、シンデレラみたいなプリンセスに憧れたことがある。お母さんとおねえさん達にいじめられていて舞踏会に行くことができないシンデレラを、魔法使いがお姫様に変身させて舞踏会へと行かせてもらえて。そして運良く王子様に見初められて。ガラスの靴を落とした彼女を探すために王子様は国中を回って、シンデレラを見つけるのだ。

"あなたがわたしの運命のひと。そうでしょう?"

 ガラスの靴がピッタリとハマった彼女をみて、王子様がシンデレラを見つめながら笑顔で問いかけるページには、何度も読み返したのかいつでもそのページにいけるようにと上の紙が三角に折られていた。
 いつか、わたしもこんな風にシンデレラになってみたいなあ。なんて子どもの頃は思ってたけれど、今の私は幼い頃自分が想像していたシンデレラとは程遠い見た目だ。
 保育園の頃の私が今、現れたとして今の私を見たら、こんなのわたしじゃない!とギャン泣きするだろう。

 今の私は、シンデレラのように可愛くもなければきれいな肌を持っている訳でもない。髪は傷んでばかりだし、暴走族なるものに所属していて喧嘩ばかりに明け暮れているから手にはタコが出来ていて、顔を始め身体中に傷ができている始末だ。シンデレラになれる子というのは、エマちゃんやヒナみたいにかわいい子のことを指すんだろうと思う。かわいいフリルのスカートや短いスカートを履いたり、花柄のワンピースを着たり、シンデレラのようなガラスの靴では無いけれど、ヒールを履いていたり。
 そんな可愛いものが似合う女の子が私にとってシンデレラのような"プリンセス"になり得るのだと思うのだ。
 そんなオシャレには程遠くて、しかも興味もなくて喧嘩だけしている私なんて、お姫様になんてなり得ないのだとその時は思っていた。

「イヌピーくんって、ハイヒールほんとに似合いますよねぇ……

 どうしても見たい映画があってあっくんとかタクヤとか千冬を誘ってみたけれど、誰も予定が合わなくてやむを得ず一人で映画館に行って、さぁ帰ろうと映画館の自動ドアをくぐり抜けたところ、ミチ。という声が聞こえて顔を上げると、そこにはイヌピーくんとココくんがいた。
 二人ともここら辺でショッピングをしていたらしく、二人の手にはショッピングバッグがちらほら握られていた。
 今帰るところか?と聞かれて、そうです!と答えると連れは?と聞かれたのでいや、一人ですけど?と答えると、こんな時間に一人なんて危ないだろというイヌピーくんの優しさにより、私はイヌピーくんと巻き添えを食らったであろうココくんと私の家に向かっている最中だ。
 コツ、コツと地面とハイヒールがぶつかり合う度に響くその音は聞いていても癪に障らないほど綺麗な音で、むしろずっと聞いていたいくらいだった。ボソッと独り言のように呟いた私の声を聞き逃さなかったのか彼の顔がこちらに向いた。

「ありがとう、ミチ。そう言ってもらえて嬉しい。」

 綺麗なご尊顔がこちらに微笑んでいるのが間近に来てしまい、私はハウァッという謎の声が出る始末だ。イヌピーくんの顔はとても綺麗で美しい。その顔見れば誰もがイケメンと言うであろうと思う。そんなことを考えているその間にもニコニコと微笑んで隙あらばと私に近づいてくるイヌピーくんの前と私の顔の間にストップとでも言うように手が私たちを拒んだ。

「こら、イヌピー。顔近づけすぎだ。」

 ミチの顔見て見ろ、もうすぐ顔から火吹きそうじゃねえか。なんて言って助け舟を出してくれたのは私の隣、イヌピーくんとは真逆の位置にいるココくんである。ココくんもイヌピーくんに劣らずの端正な顔立ちで、彼の綺麗なつり目がよりいっそうココくんの魅力を掻き立てていると思う。
 ココ、邪魔だ。と不貞腐れながら詰め寄って手を退けようとするイヌピーくんにはいはい、どうどう。と慣れた手つきであしらう二人はとてもこの世のものとは思えないほどの美しい光景だと思う。絵で描いて売ったら絶対億は行くと思う。

(それに比べて私は。)

 何もかも整っている彼らに挟まれて歩いている私は、彼らに似つかわしくない姿なんだろうと思う。街ゆくお姉さんたちの視線が怖い。多分なんでアンタなんかがそこに!って感じなんだろうなあ。うん、それはわたしも充分承知してます。
 今のワタシの姿はしわくちゃでダボダボのTシャツに短パン、そして極めつけには動きやすいようにとサンダルを履いている。ファッションのファの字もない服装だ。
 わざわざイチャイチャしている百合に突っ込みに行っているモブAの立ち位置ぐらいなんじゃないだろうか。それなら早く帰りたいなあ。と少し二人には申し訳ないような考えをして大股で歩こうとすると、ココくんがミチ、とわたしの名前を呼んだ。

「なに?ココくん。」

「まーたオマエは良くないことでも考えてンだろ?」

 いつの間にか顔にも出てしまっていたのか分からないが図星です☆とでも言うようにヒェッと声が出てしまった。わたしは優しい力でココくんに頬をつねられる。

「いたいれすぅ、ここくん、」

「オマエが変なこと考えてるからだワ。」

 いつの間にか私をつねっていた手は私の手に絡まっていていて、離そうにもココくんの力が強くて離せなかった。チョット!ココくん!私の考え分かってるんスよね!ねえ!と小声でココくんの耳元でコソコソ喋っているとイヌピーくんがココと何してんだ、オレも混ぜろとでもいうようにずいっと私の顔に近づいてきた。

「ヒェイヌピー、くん、ちか、い!」

「ココばっかりずるい。」

「なにも、してませんけどッ!?」

「ココとミチの顔が近かったから。」

 オレには手で邪魔してきたのにと不貞腐れるイヌピーくんにちょっとかわいい!と悶えていたらいつの間にかイヌピーくんも私の手を握っていた。ヤバい、女性陣の顔が修羅を背負ったマイキーくんより怖いかもしれない。私、明日からお天道様の下歩けない!ヤバい!と焦る私。

「こっ、ココくん!」

「オレに助け舟出されてもな〜

 結局私の家に着くまでずっとふたりは私の手を握ったままだったし、それを見たお母さんはあらあら〜♡と言いながらミチにも青い春が来たわね〜ッ!と興奮気味だった。ちょっと、母さん!と制してみるものの、母さんは止められず結局イヌピーくんとココくんだったかしら?ぜひうちでご飯食べていかない?と母さんの余計な一言でイヌピーくんとココくんと一緒に食卓を囲むことになってしまった。マジで申し訳ない……

「二人ともすんません母さん止められなくて

「大丈夫だ。ミチのお母さんにも挨拶できたしな。」

「そうそう、1歩リードしたしな。」

?なんかよくわかんないスけどよかったっす……?」

 イヌピーくんとココくんがよくわかんないことを言ってるけどまあ良かったならいっか!とホッとしていると、ミチ、とイヌピーくんが私を呼ぶ。

「なんスか?」

次の集会ンとき、よかったらオレたちと一緒に行かないか?」

大体集会の時は誰かしらが私の家まで迎えに来てくれる約束になっている。私は一人でもいいって言っているんだけどマイキーくんが首を縦に振ってくれないので私はその約束を守るしかないのだ。大体迎えに来てくれる人はその日によって違うけれど、最近はイヌピーくんとココくんが二人で迎えに来てくれることが多かったのである。だからなんでそんなに改まって言ってくるのかが私にとっては謎だったのだ。

いいっスけどなんでそんなに改まって……?」

「まあ、いろいろとあるんだよ。期待しててくれ。な?」

 いろいろとは?と頭上にはてなマークを飛ばす私に、じゃあな。また3日後。と二人が私の頭を撫でて私の家を出ていく。二人が出ていった瞬間、リビングのドアからそれを見守っていた母さんがミチ!私はどんな風になっても応援するからね!と興奮気味に肩を揺らされて私が泡を吹くまであと五秒。