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匣舟
2024-06-18 20:51:46
27049文字
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東リベ
東リべ短編まとめ
いままで書いたと〜りべ短編(〜10000字)のまとめです
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8
青春ってエモいの代名詞だよね
蝉の声がミーンミーンと聞こえるのと、バイクの排気音が重なる平穏(?)といえば平穏な夜の武蔵神社。不良の溜まり場と言われているこの場所は誰も近寄りたがらない。だからここにいるのはオレたち不良だけである。ここの所大きな抗争はない予定だし、なんとも不良には程遠い、平穏な日々を過ごしている。
集会は先程終わったばかりではあるが、まだ境内には多くの不良たちが屯っていた。集会であった定期報告について話す隊員や、来週の抗争相手について話す隊員もいてなんとも不良らしい会話をしているグループがいる傍ら、明日の授業がダルいだの、あの組のあのコがかわいいだの。自分たちの日常について話す隊員たちもいた。
「あ、オレ明日絶対当てられンじゃん!」
「は?なんでだよ」
「だって、明日15日だろ!オレの出席番号だし!あの数学のセンコー出席番号で例題とか前に出て書かせるじゃん!」
あ〜そういう先生居るよね〜!わかるわかる。オレの苗字は花垣だし、結構出席番号が奥の方だったから、30番だったりそれ以降だったりして出席番号で当てられたりすることはあんまり無かったなあ。そういえば。でも、侮るなかれ。そんな先生は
…
。
「ヤ、アイツたまーに月を足すかもしんねェし、もしかしたらオレかもしんね
…
。7足すってことは22
…
オレ、出席番号、22
…
。」
やっぱりそうなるよね〜!わかる!オレもそれで不意打ち喰らったこと何回もあったし!と心の中で同意する。
不良にしてはすこぶる平和な会話に耳を傾けつつ、そろそろ帰ってくださいね〜!と口を開いた。ほら、君たちに早く家に帰ってもらって数学の予習をしてもらいたいし。なんて言いたかったけれど、それは胸の内に閉まっておくことにした。
はあい、代理〜。また集会で〜!と手をブンブン振って帰っていく彼らを見届けて、ふぅ〜、と息を吐いた。そんな彼らを見て一言。
「中学生、なんか、やっぱりエモいの言葉に尽きるな
…
。」
「わかる、ホントそれ。」
「
…
ま、マイキーくん、いつの間に隣に
…
!?」
「タケミっちがアイツらが駄べってるとこに耳傾けてる時からかな。」
「最初っからじゃないすか
…
!」
いつの間にか隣にいたマイキーくんが肩によりかかりながらそう呟いた。だって二人とも外見は中学生だけど、中身はとっくにもう大人なんだよなあ。特にオレは。
たくさんタイムリープをしてきて、最後にマイキーくんと二人で掴み取ったこの平和な世界。だれも死なないでいて、誰もが笑いあってるこの世界。
これをエモいと言わなくてなんと言えようか!エモすぎてオレの心が浄化されていくだけある。みんな、オレが幸せにしてやるからな!と心の中で叫ぶ。
だけど、ひとつ覚えていて欲しい。エモいという言葉が今、現在を生きる中学生の頃に浸透していないということを。エモいという言葉が流行りだしたのは今より10年先ぐらいの未来だったはずだ。今現在でも少しだけ使われているらしいが、爆発的に流行りだしたのはそれぐらいだし、オレもその時に知ったぐらいだから、今はまだ使われてないんだろう。
マイキーくんとオレはタイムリープをしているから"若者言葉"という言葉を知ってるけど、タイムリープなんぞを分かっていない人からしたら何語喋ってんの?という感じになるわけで。だから極力そういう言葉を使う時は二人っきりの時にしよう。どうせ二人とも言い訳出来ないだろうし。と約束したんだけど、無意識に出てしまってるんだよなァ。これが。
誰も
・・
いないという前提で、石段の上でマイキーくんと中学生って本当に青春って感じがしてエモいよね〜!なんて駄べりながらオレもそろそろ帰路に着くかあ。と思っているとなあ、と誰かがオレを呼ぶ声がした。はい?と振り返るとそこに居たのはドラケンくんだった。
「あれ、どうしました?ドラケンくん。なんかありました?」
「ヤ、なんかあったと言えばなんかあるけど
…
。」
珍しく彼にしては歯切れの悪い返答に首を傾げていると、ちょっと気になることがあンだけどよ。とドラケンくんが呟いた。
「気になることって
…
?」
「大したことじゃねェんだけどよ、マイキーとタケミっちってさ、たまーによくわかんねェ事言う時あるからよ、それが気になってただけで
…
。」
「分かんないこと
…
?例えば?」
「さっきも言ってたヤツ。
…
え、えもい?」
「エモい
…
?あー。」
やべ、これは盛大にフラグを踏んだかもしれない。いや
…
まだドラケンくんだけなら、言い訳を考えられるはず!だとどうにかこの場を切り抜けようとうんうん唸っていると、また一人、この場に踏み込む人物がいた。
「確かに。マイキーもタケミっちも結構言ってるよなァ、えもいって。」
そう言って会話に入ってきたのは双龍の片割れである三ツ谷くんだ。フラグを立てるべきではないとあれほど言ったのに
…
ッ!オレのバカ!と脳内の自分をボコボコにしていると、オレも気になってたんだよなァ。ソレ。とこの軸では幼馴染である場地くん、春千夜くんと、なになに楽しそうじゃーん!といろんな人たちがわらわらと集まってくる始末。え、オレ、そんなに無意識に言ってたんかな!?と隣にいるマイキーくんに目配せをしても、ニコッと返されただけだった。解せぬ。助けてくれ。
「なァ、えもいってどういう意味?」
ずいっと顔をオレの顔の前に持ってきてそう呟いたドラケンくん。
…
無理、顔面が強すぎる。ねぇ、マイキーくん、隣で肩を震わせながら笑うならこの状況をどうにかしてください。本当に。と心の中で思いながら、ヒェッとしか声が出ないオレ。そんなオレを横目に、もしかして、オマエら二人の秘密のアイコトバとか?そういうの?だとしたらずるくね?オレらもえもいって使いてェ。なんてあらぬ方向に話が脱線していく。そんな彼らを止めようと、違いますッ!そんな!大層な意味は無いです!と声をあげようとした途端、さっきまで静観していた隣のマイキーくんがこう呟いた。
「そ〜だよ♡ケンチン。オレとタケミっち
だけ
・・
の
ひみつ
・・・
の
アイコトバ
・・・・・
だから、オレらだけが使っていい言葉なの!」
―
だから、オマエらは使っちゃダメ♡といつの間にか俺の首に腕を巻きつけながら言ってのけたマイキーくん。その瞬間、さっきまで暑かったハズの神社境内の温度が急激に下がった気がした。
…
火に油を注いだな、コレ。と遠い目をするオレを他所に「ア"?」という低音ボイスが何重になって境内に響き渡る。ア〜!オキャクサマ〜!立派な青筋がタッテラッシャイマスネ〜!と現実逃避したくなる。
一刻も早くこの場から立ち去りたいのに、マイキーくんの腕がオレの首に巻きついているので逃げることは無に等しかった。オレ、今日、ここで死ぬのかもしれない。はぁ、短い命だったなァ
…
。今世は老衰がイイのになァ。
「ン?タケミっち〜現実逃避すんなよ?」
遠い目をしていたオレの頬をぺちぺちと叩きながら、ニコニコと微笑むマイキーくん。現実逃避することになった原因がなんか言ってら。それならオレ、逃げてもいいすか?とマイキーくんにこそこそと耳元で囁いたら、だ〜め♡と返ってきた。オレ、まだ死にたくないんスけど!
「なァ、オレらいること忘れてね?マイキーとイチャついてんなよ、タケミっち♡」
「ピェ
…
」
マイキーくんと小競り合いをしてると、ドラケンくんの顔がまた目の前に。マジで、忘れてたわけじゃないんです。本当に。ドラケンくんのこと放っておいて言うのもアレだけど、本当に心臓がとまるからやめて欲しい。ドラケンくんにドキドキしっぱなしのオレに気に食わないのかムスッと顔をしたマイキーくんが、首に巻きついていた腕の力を強めた。
マイキーくん、オレ、マジで窒息死するってば!ギブ、ギブ!という意味を込めて腕を叩いてみてもニコッという微笑み(オマエが悪い♡という副音声付き)をもらった。マイキーくんもそうだけどさ、ドラケンくんイケメンの部類に入ってるの知らないのかな
…
。だってあんなイケメンの顔面目の前にしたらそうなるでしょ。オレが女の子だったら即リアコになってたって。
「いーじゃん!オレのタケミっちなんだし〜?」
「ちょ、マイキーくんっ!煽らないッ!スティッ!」
これ以上火に油を注がれてはこっちの身が持たないと感じたオレは即座にマイキーくんの口を塞いだ。モゴモゴと口を動かしながら少し不貞腐れている我らが総長様。その姿にちょっと可愛いと思ってしまったのはオレだけの秘密ということにしておこう。
「エモいの意味ッスよね!ドラケンくん!」
「おー。」
「エモいの意味は
…
えーっと、その、感情が揺さぶられた時に使う言葉
…
?で良いんスかね
…
?」
「なんでオマエが首傾げてんだよ」
「ヤ、説明しろって言われたらちょっとなんて言うか
…
普段使いしすぎて
…
。」
「え、えもいってそんなに普段使いできンの?」
「そッスね
…
なんていうか
…
、オレにとって青春がまさにもうエモいの代名詞みたいな感じなんで
…
。」
「
…
タケミっちってたまによくわかんない目線入るよな
…
?」
オマエもまだ青春真っ盛りだと思うンだけどな
…
?という三ツ谷くんの問いかけに、それは、精神年齢が中学生では無いからッスね!なんて言えずにハハハ
…
と乾いた笑いしか返せないオレだった。
(オマケ)
無意識にエモいを連発してる総長と総長代理(+それに巻き込まれるドラケン)
「ウワーッ!こんなに暑くない夏なんて久々じゃないッスか!?」
「そうかもな〜」
「は?充分暑いけど
…
?」
「ケンチン、分かってないなあ〜本当に暑いのは30度越えてからだよ?」
「砂漠じゃねェんだし
…
というかその言い草体験したことあるみたいな言い方だな、マイキー。」
「まーね、てかさあ、タケミっちぃ〜!」
「なんすか、マイキーくん!」
「集会後にさ、コンビニ寄ってアイス食べてんのなんかアオハルって感じでエモくね?」
「確かに
…
ッ!エモいっすね!」
「は
…
え?えも、えもい?」
「なんかこう(中学生として)過ごしてるとさ、全部が全部エモく見えてもうダメだワ、オレ。」
「分かります
…
ッ!その気持ち!なんか(中学生のみんなを)見ててエモいッスもんね!」
「ウン
…
。
…
ン?そういえばケンチン、一言も喋ってないけどなんかあった?」
「ドラケンくん、どうかしました!?なんかありました!?」
「ヤ、なんもねェけど
…
。(えもいってどういう事だ
…
?)」
「ふーん?ならいいけど。
…
あ!アイス、あたりだ!」
「エッ!ホントじゃないスか!オレ、初めて見ました!」
「これもエモいな〜」
「エモいっすね〜!」
(だからえもいってなんなんだよ!)
おしまい
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