05.そぞろな雨音
(これはなんというか、思っていた以上に)
「うわ、キっツいなぁ
……かわいそー」
「足立さん、若干笑いながら言っても説得力ないです」
5月17日改め5月18日の0時、足立宅、ソファの上。こらえきれない笑いが顔に滲み出てきている足立を
三琴はジト目で諌めた。
テレビ画面ではふんどし姿の男
――巽完二がくねくねとした動きをしつつ妙にハイテンションな調子で、やけに熱気が凄まじいサウナのリポートをしている。その様はどう見ても深夜のイロモノ特番、ヘタをするとそういう企画物のビデオみたいだ。こういう番組であることを事前にわかっていた
三琴でも、実際に目の前にするとその何とも言えないインパクトに言葉を失ってしまった。
「あの巽完二に、こんな願望があったなんてねぇ。潰されたゾクの奴らが見てたらどう思ってんだろ」
「あれは別に、彼の願望そのままじゃないですよ、おそらく。
ちょっと
……うん、ちょっと歪んでああなってしまってるだけです」
「そういう風に見れる奴なんていないって。事情を知ってなけりゃ面白いってだけ。
仮に事情を知ったって、歪めて見るほうが面白けりゃ大抵の人間はそのままにするだろうさ」
「
……そうですけど、ね」
あまりの出来にもはや哀れに思えてきて咄嗟にフォローを入れたが、返す足立の言葉は確かで、
三琴はやむなく閉口した。
そう、人は見たいように見る。だからこの番組ができるのだと。
それはそうだが、
三琴にはやはりどこか引っかかるような気分がしていた。
足立は相変わらずおかしそうにくつくつと喉の奥で笑っていたが、そんな彼女の様子を見るとようやく笑みを消し素の表情になった。
「巽完二と何かあったの?」
「いや、別に。ただ、あっちはよく知らなくても私は知ってるものですから、
いざこうして前にするとなんというか、同情心が湧くといいますか」
「
……君、何だかんだで案外お人好しだよね。顔も知らない子供を助けるとか、大して話したこともない相手に同情するとか」
妙に神妙な顔をしている
三琴がなんとなく気に入らなくて、足立は呆れ顔をしながら揶揄する。
三琴はテレビを食い入るように見つめていたがその顔にはからかいも笑いも見えなくて、足立には自分が見ているものと
三琴が見ているものが違うのではないかという気さえした。
そう思うと急に興が冷めて足立はほとんどつまらなそうな顔をしてぼうっとテレビを見ることしかできなくなる。
「
……知らなければ多分何もしないですけど、
知ってて何もしないのは、ちょっとすっきりしないだけです。個人的に」
じっとテレビを見つめていた
三琴はぼそりと言った。足立がちらりと彼女を横目で見ても、未だ彼女の目はテレビに夢中だ。話す時くらいこっちを向けばいいのに、なんて思いつつ足立は肘を付きながら
三琴を見下ろした。
「
……ご立派な心がけ、大変結構だけどさ。ミイラ取りがミイラにならないようにね」
<了>
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