佐藤
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P4 chapter3:相縁機縁

5月頃の話。段々と引き寄せられる(全7話)


01.引き金引くのは小市民

鮫川に行ったのは本当に偶然だった。
特にやることもない休日、テスト勉強も行き詰ってきたし、気分転換に散歩でもしようと思った、ただそれだけ。
そんな気まぐれでいつか川に落ちた日と同じように、すぐ横で小さな女の子たちがきゃっきゃとじゃれ合っているのを微笑ましいななんて思いつつ川辺をぼーっと見つめていたら、不意にその女の子たちの内の一人がゆらりと川の方へよろめいて。
あ、と思ったときには咄嗟に身体が動いていた。

「っ……ごめん、大丈夫?!」

腕の中でぱちくりと目を丸くしている少女に私は慌てて声を掛けた。するとそれから一拍遅れて、こくこくと人形のようなどこかぎこちない頷きが返ってくる。急な力に驚いて身体が強ばってしまったのだろうか。

「あー、腕ちょっと強く引っ張っちゃったけど、痛くない?」

ほっと安堵しながら尋ねると、少女はほろりと顔を綻ばせて今度はぶんぶんと強く頷いた。その様子が可愛らしくて、私も思わず笑いを零してしまった。

「何ともなくてよかったよ、ははは……おねーさんも前に落っこちたからね。服なんかずぶ濡れで」

折角綺麗な服を来てるのだから勿体無いだろう、と軽く服を叩いてやりながら私は取り敢えず少女を起こしてやった。下手な受身を取ったせいで自分の服にも多少砂埃がついたが、払えばどうということはないし、若干石がごつごつして痛かったというのもこの際気にしないことにする。あの日を思えば百倍マシだ。
そんなことを思っていると、少女の母親なのだろう、身なりのきちんとした女性が青い顔で駆け寄ってきた。

「すみませんっ、うちの子がご迷惑を……!」
「あぁいや、大丈夫ですよ、悪さしたわけじゃないですし。濡れたり怪我したりが無くてよかったです」

憔悴した様子の女性が哀れでならなくて、私はにこりと軽く笑顔を浮かべ、なんてことはないという風に返してみせた。女性の顔が安堵に緩むのを見て、あぁこの親子こういう顔がすごく似てるな、なんてしみじみ考えつつ改めて女の子を見つめる。

すると、少女と彼女に向かって勢い良く走ってくる自転車の光景が私の頭の中をよぎった。

………予言か、)

「あの…………?」

声をかけられてはっと意識を取り戻すと、女性が不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。いくら窮地を救った相手とはいえ自分の子どもを知らない人間にじっと見られていればそれもそうだろう。
私は慌てて立ち上がると、すみませんと口早に一言述べてから女性の顔を見据え、若干戸惑いつつも一応言葉を続けた。

……えーと……その、妙なことと思われるかもしれませんが」



何、らしくないことしてるんだか)

でしゃばった真似をしたかと言ってから後悔したが、もう親子は河川敷の土手の向こうへ消えてしまった。
いつの間にか私一人きりになった川辺で、私はひたすら川を眺める。
こんな取るに足りない小さな親切では到底ゲームの本筋には関わらないだろうし、ならばこの行動の結果は果たしてどう出るのだろう。

(何も起こらなければ、それでいいんだけど)

関係ないならせめて、少しでもいい方向に進んでくれたらいい。
そう思いながら川に投げた石は、跳ねずにぽちゃんと沈んでいった。


<了>