佐藤
Public P4
 
499251

P4 chapter3:相縁機縁

5月頃の話。段々と引き寄せられる(全7話)


03.運命と邂逅

……ストーカーか何かですか?」
「いやぁ、悪いねー。これも僕のお仕事なんでさ」

足立による三琴の身辺警護が始まって、四日目。
放課後になると必ず校門の前で待っていて帰路に同行する彼に対して三琴は怪訝な顔をもうほとんど顕にしていたが、足立はそれを物ともしないどころか些か楽しんでいる様子だった。
へらへらと笑う足立に顔を覆って三琴は短く息を吐く。もう癖のようになってしまったこのため息で、何度幸せを逃していることだろう。

「仕事は一つじゃないでしょう……というか、別に私は大丈夫ですから」
「でも実際、生田目が絶対に君を狙わないとは言えないでしょ」
「マヨナカテレビに映らなければいいんですし、そもそも私は映る条件にも当てはまらないのでまず問題ないです」
……ん、映る条件?」
「、あ」

呆れながらに会話をしていたせいか、口が緩んでしまったことに気づいた三琴は慌てて口を覆ったが、足立はそれを聞き逃しても見逃してもくれなかった。きらりと一瞬目を光らせると足立は三琴の両肩をがしりと掴み、歩みを止めさせる。それから僅かに屈んで三琴の顔を覗き込むようにして、にっこりと笑った。
もしも二人の顔がよく似ていたなら、年の離れた兄妹がじゃれているようにしか見えないかもしれないが、気づけばそこは周りに人の少ない夕暮れ時の鮫川土手で、それは明らかに脅迫だった。

「ねぇ、マヨナカテレビに映る条件に当てはまらないって、何か決まりでもあるの?教えてよ」
………………すみません、さっきのはなかったことに」
「だーめ」

目を伏せて合わせようとしない三琴の手を取ると足立は否応なくずるずるとベンチへ引きずっていった。そのまま逃がすまいとしっかり手を取った状態で隣合って腰を降ろす。暫くの間三琴はだんまりを決め込んでいたが、足立の方がいつまでたっても手を離さないのを見て観念したのか、渋々といった様子で口を開いた。

「テレビで報道された人、ですよ」
「テレビで報道?」
……稲羽にいる人間で、皆が見たいと気になる……所謂、稲羽を騒がすような話題の中心人物です」
「へえ、そんな法則があるんだ。それもゲームでの知識?」
「まぁ、一応」

ふーん、そっか、と言うと足立はそれきりぱっと手を離した。てっきりもっと根掘り葉掘り聞き出されるものと思っていた三琴は唐突に失われた熱と圧力に一瞬目を丸くする。

……もういいんですか?」
「うーん、まぁどーせ次に映る奴も知ってるんだろうけど、全部聞いちゃったらつまんないし。
……あ、それとも、もしかして離してほしくなかった?」
「は?…………あ、」

にやにやした顔で抜かす足立にお前は何を言っているんだという顔をしかけたとき、三琴は土手をこちらに向かって歩いて来る人影に見覚えがあることに気づいた。人影は小柄で一人で、それから帽子を被っている。顔がわかるほど近くになってその人影も三琴と足立に気づいたようで、横を通りすぎようとした足を曲げて二人に近づく。

……平和島さん。それに、足立刑事も」

そして人影――白鐘直斗は二人のすぐ目の前にまでやってきた。

「直……白鐘くん、こんにちは」
「名前で構いませんよ。奇遇ですね、こんなところで何を?」
「何をって、さらっと僕の役目忘れてないかな……帰り道一人だと危ないでしょ?そういう白鐘くんも、一人じゃ危ないよ?」
「あぁ……僕はもうすぐ迎えが来るので、ご心配なく。それにここは見通しのいい場所ですから」
「そ……そう。ならいいんだけど」

気遣いをさらりと涼しげに返す直斗に足立が呆れと苛立ちの混じった少し複雑な顔をした。
するとそれを感じ取ったのか否か、直斗はじろりと咎めるような視線を足立に送った。

……それより、足立刑事、僕には身辺警護というより、単にお喋りしているだけのようにも見えましたが」
「あ、あはは……酷いなあ、僕だってちゃんと仕事してるんだってば」
「でしたら、暗くならないうちにお送りしたほうが良いのでは?稲羽署は人手が少ないですから、足立刑事は他にも仕事を任されているでしょうし、平和島さんだって早く帰宅できるに越したことはないでしょう」
「だ……だよね~、ははは…………はぁ。参ったな、二人とも真面目なんだから……もう」

的確に言葉の矢を打ち込む直斗に頬を掻いて苦笑いを浮かべる足立を尻目に、三琴は「二人とも」という言葉を頭の中で復唱した。そういえば、さっき仕事は一つじゃないとか似たようなこと言ったっけ。
そう思ってじっと直斗を見つめるとばちりと視線が噛み合って、三琴は一瞬戸惑ったがゆるりと頬を緩ませた。
それを見て直斗もまた、目を丸くした後ふっと唇に笑みを浮かべる。

「ありがとね」
……いえ。お礼を言われることじゃありませんよ」

それだけで二人の会話は確かに成立していた。


<了>