04.道化の誘い
車内にはカーステレオからのラジオと雨音だけが流れていてた。
助手席には
三琴が乗っていたが、ただただじっと外の景色を眺めているばかりだ。
ここ最近はずっと身辺警護と称して学校が終わった彼女の迎えに行っていたから、実際その度いよいよ話すことも少なくなってきていたが、それでも足立にはさして気にならなかった。
「そういえば、テストはもう終わったんだっけ。どうだった?」
「まあまあです」
「便利な言葉だよねぇ、それ。できてなくても言い訳になるもん」
「
……一回目のテストだからだと思いますが、それほど難しくはなかったです」
(負けず嫌いだなぁ)
適当に思いついたほんの小さな話題から、少女の顔はころころ変わる。初めて会ったときは大人しそうに澄ました良い子というだけだったのに、こうして何度もやりとりをするに連れ意外にも素直に感情を出すことがわかったし、そういう表情の引き出し方も多少わかってきた。とはいえまだ怪訝そうな顔しか引き出せないのだけれども、そこは気を許しているのだろうと考えることにする。とにかく、この少女と言葉を交わし、自分の発言で少女の表情が変わるのを眺めるのがなかなか楽しいことは確かだった。それもおそらくはこの少女の内に潜んでいたもう一人の自分を目の当たりにしたからこそ、今見ることが出来ているのだろう。
そう考えたところで、そういえば、と足立は思い出す。
そういえば、今日は終日雨模様だと聞いた。
「今日、映るの?」
「
……まだ、誰かわかるくらいはっきりとは映らないと思いますが」
「そっか。つまんないなあ」
ぽそりと返された言葉に足立が応えると、はぁ、と小さいため息が聞こえた気がした。おそらくこれは、他人事だと楽しむ足立に呆れている。
良い方向にではなくとも少女の表情を変えたと思うと何だか楽しくて、足立はひっそりとほくそ笑んだ。
「
……はっきり映るかどうかわかんないのに遅くまで起きてるのやだし、映る日になったら教えに来てよ。晩ご飯くらいは出すからさ」
もっと少女と時間を共にしてみたい。
そう思いながら足立は緩やかにハンドルを切った。
<了>
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