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無窓居室
2024-03-19 16:46:22
10972文字
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Pixiv年越し創作ラリー2023→2024
Pixivの年越し企画に応募したものを収納しました。
あまり時間がなく粗い部分も多いですが、ドタバタからほのぼのまで色んな😈👹😈を書けて楽しかったです。
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『辰・ドラゴン』
大晦日、アカネはブラックの家の広いリビングで第九を聴いていた。
年越しデート、と呼べるほど色気のある逢瀬ではない。さとしや他の友人達がみな家族と過ごす年末年始に、カメラの助手を除いて天涯孤独のブラックと、半ば家出中のアカネだけは当てが無く、話の流れで一緒に過ごすことになったのだ。
そのカメラちゃんももう眠っており、青鬼ちゃんは里帰り中だ。演奏は第三楽章に入っている。クラッシック音楽など聴けばすぐ寝てしまうと思っていたのに、今夜に限って眠気がなかなかやってこない。
ブラックはアカネの座っているソファから少し離れたテーブルに掛け、ワイン──を模した葡萄ジュースを飲んでいる。律儀にも未成年のアカネに合わせてくれたようだ。無意味に高級感のあるラベルに貼られた龍の絵を見て、アカネが何とはなしに口を開いた。
「もうじき辰年だな」
「オレちゃんの年ですね」
返ってきた言葉にアカネは首を傾げる。初めて聞く話だった。反応が期待通りだったらしく悪魔は小さく笑う。
「オレちゃんには色んな呼び名があるんです。明けの明星、古き蛇、そして黙示録の赤い竜
……
レッド・ドラゴン」
「黙示録?」
「この世の終わりと新しい始まりについて書かれた書物ですよ。その竜が現れれば海と陸の獣と共に様々な災いを起こし、人々の心を惑わせて自分を拝ませると言われています」
「あはは。拝ませるとか惑わせるとか、YouTuber向きかも」
「でしょう」
それきり二人とも声を立てなかった。音楽は有名なフレーズに入りつつあるのに、辺りは妙にしんとしているように感じる。
アカネはソファから降り、ブラックに近づいた。自分でグラスへジュースを注ぎ、相手へ向かって傾ける。
「ちょっと早いけど、素敵な年に。
……
ブラック、これからも一緒に居てくれよ」
「アカネさんとですか?」
混ぜ返すような目が少し嬉しそうだ。
ブラックは悪魔で、自由を愛していて、自分の言葉などで何を縛れるわけでもないとアカネも分かっている。
しかしアカネが抱いているこの人恋しさと少しでも似たものをブラックも感じて自分を呼んだのなら、求め、訴えてみるべきなのだろうと思った。ブラックの本性が何であれ、代償がどんなものであれ、怖くはない。
「アタシや、さとしや、友達みんなやファンと」
「ふむ
…
」
思わせぶりに顎へ手をやって考えているフリをするあたり、悪魔の機嫌は悪くなさそうだ。
澄んだ音を鳴らしてグラスが合わされた。
「検討しておきましょう」
合唱が流れだす。
無邪気にグラスの中身を飲み干すアカネを見て、竜を深淵へ封じると言われる天使の姿はこういうものかもしれないと、ブラックが思ったことなど本人は知る由もない。
2024/01/07
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