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無窓居室
2024-03-19 16:46:22
10972文字
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Pixiv年越し創作ラリー2023→2024
Pixivの年越し企画に応募したものを収納しました。
あまり時間がなく粗い部分も多いですが、ドタバタからほのぼのまで色んな😈👹😈を書けて楽しかったです。
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『書き初め・描き初め』
新年三日。さとしはブラック、カメラちゃん、アカネ、青鬼ちゃんと連れ立って初詣へ出かけた。
途中の商店街で餅つきを見たり、神社で振る舞い酒の代わりにノンアルコールの甘酒をもらったり
……
皆で楽しく過ごしたというのに、アカネの表情がどこか浮かない。そういえば合流したときから何だか疲れているようでもあったなと、思い出したさとしは尋ねた。
「アカネちゃん、どうかした?もしかして具合悪い?」
「ん?
……
あぁ、いや
…
」
アカネにしては珍しい元気の無い返事に、本当に心配になってくる。眉を寄せたさとしを見て、アカネが慌てて腕を捲り上げ力こぶを作った。晴れ着の華やかさに実に不似合いなポーズだ。
「元気元気!あり余ってるくらいだよ!
…
ただ、ちょっと書き初めが」
「書き初めぇ?」
素っ頓狂なさとしの声に、ブラックとカメラちゃんまで振り向いた。
二日は事始めの日だったので、アカネは今年の抱負を書き初めにしようと、慣れない和装で丸一昼夜、筆や墨と格闘していたらしい。しかし何ぶん初めてのこと、夜を徹して練習しても納得のいく字は書けなかったようだ。
「一睡もしてないの!?それでこの人混みじゃしんどいはずだよ」
「だよな
…
さすがに鬼のアタシでもちょっと
……
でも、やらなきゃ上手くならないし」
珍しく芯の定まらなそうな背中を青鬼ちゃんが支えている。半紙を買い足して帰ろうなどと話しているあたり、帰ってからも休まず書道に励む気なのだろうか。
さとしにとっては年上かつ遥かに強い力を持つアカネだが、小さな子どもになったところを世話したことがあるせいか、いつもブラックにおちょくられている者同士の連帯感めいたもののせいか、何かと力添えしてあげたくなる相手でもある。
二人を一瞥したきり、参道の人混みばかり見ているブラックを小突いて小声で話し掛けた。
「何してるんだよ、アカネちゃんが困ってるんだぞ」
「オレちゃんと何か関係が?」
「助けてあげたいって思わないの?」
「そうは言っても、オレちゃんが練習すればアカネさんの字が上達するとかでもありませんし」
「意地悪!」
はぐらかすような物言いにさとしは焦れる。会話は聞こえていないはずだが、さとしにつれないブラックの態度はアカネにも伝わったらしい。
「あはは、さとしがアタシの心配してくれてるもんだからブラックが拗ねちゃってるよ。お前ら本当に仲がいいよな〜!」
あっけらかんと笑われて肩を落とした。せっかく一肌脱ごうとしたのに、当の本人に囃し立てられてしまうとは。
そんなさとしの様子が幾らかブラックを面白がらせたらしい。目元と口を歪めて楽しそうに提案した。
「お稽古ごとは真剣にやることも大切ですが、たまには楽しみも取り入れないと行き詰まってしまいますよ。こういうのはどうでしょう?」
「またアタシの勝ち!ほら動くなよさとし!!次は〝賀〟でハネとはらいの練習するんだから!」
「助けて〜!!」
翌日、近所の公園には元気に羽子板を持って走り回るアカネと、顔中に墨を塗りたくられたさとしの姿があった。アカネが羽子板を筆に持ち替えて迫ると、ブラック、カメラちゃん、青鬼ちゃんが揃ってさとしを動けないように押さえ込む。首尾よく〝賀正〟の字を書き切ったアカネは満足そうだ。
「流れるようでしかも力強い筆使い
…
完璧です!」
「えへへ、そうかな?もっと頑張っちゃおう」
「やめろぉお〜〜!!」
〝正月〟〝新年〟など定番の文字の他に〝打倒ブラック〟〝魔界一〟など目標を片っ端から書き殴られたさとしの顔面にはもう感覚がない。反撃したくてもアカネの身体能力に、人間の子どもの中でも弱々のさとしが叶うはずもない。
「俺が勝てるわけないって、いつかの正月にも言ったじゃん
……
」
この世への名残りのように呟きながら、二度とこの二人の間を取り持とうなどとするまいとさとしは思う。
そして、思ったそばから頭の隅で、また一年振り回されることになるのだろうなと、まんざら暗いばかりでもない気分で考えるのだった。
2024/01/07
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