無窓居室
2024-03-19 16:46:22
10972文字
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Pixiv年越し創作ラリー2023→2024

Pixivの年越し企画に応募したものを収納しました。
あまり時間がなく粗い部分も多いですが、ドタバタからほのぼのまで色んな😈👹😈を書けて楽しかったです。



『年賀状』


 自宅のパソコンの前に座り込み、アカネは頭を抱えていた。ディスプレイには必要項目を入力しても一向に動かない年賀状用の宛名ソフト。
 年末は青鬼ちゃんに地獄へ帰る用事があるというので、しきりに心配してくれるのを宥めてソフトだけをダウンロードしてもらい、後は大丈夫と送り出したのだが、いざアカネが一人で使ってみようとするとこの有様だ。

「なるほど、こうなってるわけですか」

 絶望してキーボードに突っ伏したアカネにブラックが声をかけてきた。藁にもすがる気持ちでさとしに電話をかけてみたところ、会話を聞かれていたらしい。
 当然さとしにはどうすることもできず、代わりに面白がったこの悪魔が首を突っ込んできたというわけだ。

「笑いたきゃ笑えよ、どうせ頭の悪い鬼だって思ってるんだろ」
「いいえ、調べたところかなり話題になってる動作不良のようですよ。アカネさんのせいじゃありません。オレちゃんなら何とかできるかもしれないので試してみて良いですか?」
「ブラック……

 優しい言葉をかけられて、アカネは自分のひねくれた考えを申し訳なく思った。素直に礼を言ってキッチンへ立つ。
 湯気の立つコーヒーを持って戻ると、ブラックがソフトにデータを読み込ませようとしているところだった。カップを受け取ったブラックは会釈して微笑んだ。

「上手くいきそうです、安心して下さい」

 もし上手くいかなくたって感謝の気持ちは変わらないのにな、とか、やっぱりブラックは何でもできて今の自分には全然敵わない、とか、温かいような痛いような気分を交互に味わいながら、アカネはソファ代わりにしているベッドの端へ腰を下ろした。
 ブラックの背中は細身だが頼もしい。器用な指がキーボードを叩く音。コーヒーに混じる微かな甘い、チョコレートのような香り……年の瀬の疲れが溜まっていたこともあり、いつの間にかアカネはうとうとと寝入ってしまっていた。


「ブラックー!!どういうことだこれ!?」
「オレちゃん特製のアカネさん年賀状ですけど?これで出しますよ、って確認したのにアカネさんたら全然起きないんですから」
「いつの間にこんなの……ぶっとばしてやるー!!」

 年始早々、アカネは叫び声を上げながらブラックを追い回していた。
 大写しのアカネの寝顔に龍のヒゲのような落描きがされた年賀状が、知り合いに一人残らず届いていたのだから怒らないはずがない。

「アカネさんの寝顔があんまり可愛かったので、ついプロデュースしたくなっちゃいまして」
「うるさい!よくもあんなのバラ撒いてくれたな、この悪魔ー!!」
「すみません、オレちゃんの悪戯だって皆さんにお詫びしておきます」

 あっさり謝ってブラックは飛び去る。
 犯人がブラックだと広まったせいで、例の写真が知り合いの間で〝マウンティング年賀状〟と噂されてしまうことなど、肩で息をしながら見送るアカネには予想できもしなかった。


  2024/01/07