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無窓居室
2024-03-19 16:46:22
10972文字
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Pixiv年越し創作ラリー2023→2024
Pixivの年越し企画に応募したものを収納しました。
あまり時間がなく粗い部分も多いですが、ドタバタからほのぼのまで色んな😈👹😈を書けて楽しかったです。
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『うさぎ』
「わぁ、可愛い!」
「可愛いですねぇ〜」
すっかり馴染みになったウサギカフェで、ブラックとアカネは揃ってゲージの中を覗き込んでいた。中には可愛い盛りの仔ウサギが六羽、一口サイズのお餅のように丸まっている。
アカネがラビキャロットの力を借りて助けたウサギが、このカフェで産んだ初めての子ども達だ。
飼いウサギは病気の予防や無秩序な妊娠を防ぐために避妊手術を受けることも多いが、彼女は希少な種のウサギだったこともあり繁殖が選択されたらしい。ゲージの外で気ままに草を食んでいる様子からして、産後の肥立はすこぶる良さそうだ。
ウサギの親は長い期間子どもの世話をするわけではない。乳離れしてしまった仔達にまとわりつきはしないものの、時おりゲージの前まで来て耳や鼻先を動かす仕草は幸せそうに見えた。
ほっとした表情のアカネがカフェの中を見回す。
「もうすぐ一年経つんだな
……
」
アカネがブラックと共にウサギを助け、初めてこのカフェを訪れたのは年始のことだった。数日前までのクリスマスの飾りはもう無く、カフェの内装は去りゆく卯年を惜しむものばかりになっている。
「今年も色々ありましたね」
季節の移ろいを実感して感慨深そうにするアカネに、ブラックが静かに語りかけた。
二人の手の中のホットコーヒーとハニーミルクラテのような、暖かい時間が過ぎていく。
「赤ちゃんか、アタシも欲しいな」
「え」
静けさを破ってアカネが溢した言葉に、ブラックが声を上げた。
「
…
あ、いや、ちょっといいなぁって思っただけ。でもYouTuberとしてもまだ道半ばなのに、無理だよね
…
。迷惑、だよな
……
」
にわかに変わった空気を察したのか、アカネは慌てて弁解し始める。寂しげに消え入る語尾。
ブラックが珍しく返事を慎重に吟味しているので、辺りには沈黙が降りる。それを終わらせたのもやはりアカネだった。
「
……
やっぱり欲しい、お迎えしたいなぁ、ウサギの赤ちゃん!──だけど今は自分の目標を叶えることに集中しなきゃ。青鬼ちゃんに迷惑かけちゃいけないよ」
すっかり和んでしまった気を引き締めるように自分に言い聞かせると、拳を突き上げて叫ぶ。
「来年こそはブラックに勝ってトップYouTuberになるぞー!!」
「アカネさん、ウサギは音に敏感なんですよ。お静かに」
澄まし顔を取り戻したブラックが冷静に忠告した。
ラビキャロットの無い今、悪魔の心臓が一瞬だけ奏でた、甘くほろ苦い音を聞くことができたのは、今はウサギ一羽きりだった。
2024/01/06
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