ゆき
2024-03-24 12:43:50
13020文字
Public さめしし
 

さめしし お片付け箱

さめしし/短いのまとめて置き場。手前ほど新しい。


2023.5.28 Twitter
飯ものネタ

そらまめのポタージュスープ

「何に悩んでる」
「んー」
リビングテーブルにノートとタブレットを広げて論文を読んでいた村雨の意識が、じいっとスマホを見ていた獅子神にうつった。ちらりとこちらを気にした気配があったのだ。

特に予定を決めない休日、各々が好きなことをして過ごしていた。獅子神も先ほどまでは、IRのチェックをしたり経済誌をめくったりしていた。
そろそろ昼食のリクエストを聞かれる頃合いではあったが、どうやら今日のメニューは決まっているようで、たずねられる様子はない。仕事のことであれば、もう少し村雨には関係なさそうにする。
関係があるようでない何かを決めかねているらしい。
さて、何がそんなに彼の気を引いているのか。小首をかしげて、先を促すと、言えばなんと返ってくるのかまでわかります、と言った程で口ごもった。なんだ。
「ハンドブレンダーが、あったら便利かなーと思ってさ」
調理器具の話か。なるほど。
「買えばいいだろう」
「あんま物ふやしたくねぇんだよ」
聞けばすでにミキサーはあるので、できないこともないのだという。村雨には用途の差がわからなかったが、どんな器具にも得意不得意があるのは承知している。
おおよそ悩むような値段のものでもなさそうだし、悩むような狭いキッチンでもない。しかし獅子神は、物が雑多に置かれる事には難色を示すので、出番の少ないものを増やすのには慎重だった。
「気づかれたらあっという間に、バラエティに富んだラインナップが3つも4つも届くぞ」
さらに視線だけで、私も含めてと付け加えると、表情を歪め勘弁してくれと態度で返される。
そうなる前に決めてしまった方がいいことは確かで、指を検索に走らせ始めたところに近寄って、何に必要なのか問う。
画面を切り替えて見せられたのはやさしい色合いの野菜のポタージュ。なるほど。
「お前こういうのだったら文句言わねぇし、夏は冷たいの冬はあったかいのでいけるだろ」
寒い時に生野菜は嫌だって言ってたし。それを聞いて、村雨は思わず顔を綻ばせる。この男はどうしたって偏食気味の村雨の食事に気を使いたがる。実際は職員食堂できちんと栄養管理された食事を摂ることの方が多い事を、もう獅子神は理解しているのにもかかわらず。

そうであれば結論は決まっている。
「決めた。やはり私が買おう。午後は家電量販店に行くぞ、車を出せ」
オレの話聞いてた?!という言葉を無視して、うまくいけば今日の夕飯には間に合うだろうと、村雨はご機嫌に笑っていた。