ゆき
2024-03-24 12:43:50
13020文字
Public さめしし
 

さめしし お片付け箱

さめしし/短いのまとめて置き場。手前ほど新しい。


2024.2.2 メモ帳サルベージ
100話カラーとメディコス描き下ろしのやつ

いっとう目を引く


「あなた、なぜこれを?」

それぞれ与えられた控室から着替えとヘアメイクを済ませ、スタジオに入るなり村雨が眉間にしわを寄せて声をかけてくる。いつものスーツのような色の重そうな上等なウールのコートに、華やかな色で艶のあるシルクのシャツの取り合わせが、村雨によく似合っていた。こちらだって、自分に似合いのものを選んだつもりだ。厚みのある体にしっかり沿ったオーダーメイドのフォーマルは、前回よりシックな色を選んだ分襟や袖などを派手に飾った。
「似合ってねえ?」
「似合っている」
「だろ?」
「あれ、獅子神さん今回は金色じゃないんだね」
そう言う本人が、金色と見まごうようなドレスシャツを仕込んで赤いタイを垂らしている。とんでもない色合わせに見えて、そのすべてが明るい肌と髪の色になじんで、真経津を引き立てている。
「今回には派手すぎんだろ」
「へえ、でも何で敬一君はその生地にしたんだ?」
最後に入ってきた叶は、その派手なピンクが悔しいほど似合っていた。どういう構造になっているかわからない装飾のついた、すこしやわらかそうな布地のジャケット。襟のラインが、動くたびきらきらと反射する。すべての着こなしの色も生地もてんでバラバラなのに、そのすべてが叶の存在感に負けていないのが不思議でならない。
なんか、オレが一番おとなしくないか?
「なんだよ、目に留まったからだろ、オメーらとも被らないし……んだよ」
「見るな」
「礼二君の珍しい顔が見れたな」
答えているのはこちらなのに、二人は村雨の方を見る。
「獅子神さんあのね、前回のパーティで村雨さんが着てた服、忘れちゃったの?」
前回の、村雨の。たしか、織の調子で光が当たると艶の出る、葡萄茶の生地。襟は生地を変えて、確か模様の入った——
「あ"ッ」
「マヌケ……
「無意識だったんだ……
「本当に無意識なんだ……
「村雨さんなんてわかりやすく色合わせてるのに」
「黙ってろ」
「え、そうなのおまえ」
「すごいね〜、恋ってこんな人をおかしくさせるんだ」
「今なら敬一君でも礼二君負かせそう」
「実際負かされてるでしょ」
「たしかにな」
「でも獅子神さんがもっと節穴で盲目だからな〜」
「でも敬一君が意識的にやってたら、礼二君はドヤ顔してただろうし、あんな固まんなかったよな?」
「そうだね。獅子神さんの勝ちではないけど、村雨さんの負け、って感じかな」
あー、おもしろい!そういってけらけらと笑う真経津に、顔を覆いたい気持ちになるが、多少メイクを施しているせいで顔を触るわけにいかない。
「あ、ボクからだ。いってくるね」
「いってら〜」
「襟、よれてんぞ」
首元だけでこんなに色が渋滞しているのに、絶妙なバランスで溶け合っている。みんな、自分を魅せるのがうまいやつらだ。そりゃ、相手に見せたい自分を見せるのも、テクニックの一つだからだろう。
「え〜、直して〜〜」
しょうがないなと寄って行って、絶妙なバランスでタイからのぞかせた襟の調子を整えてやった。

ーーー

(村雨と入れ替わりで、獅子神の撮影中)

「おかえり礼二君。いい夜になりそうだね」
「タチが悪すぎる」
「またまた〜、その真っ青なシャツ、似合ってるよ」
「ありがとう、あなたのその目に痛い毒々しい色のシャツも似合っている」
「かわされちゃった。前みたいに一緒に行ったのかと思ったのに」
「前回は仮装のようなものだが、今回はフォーマル寄りだろう。そうなるとお互いに贔屓が違う」
「なるほどね、で、当日のお楽しみで礼二君は轟沈、と」
「沈んでない」
「でもあんなの横に立たせてたら、匂わせどころじゃないだろ」
「そこまで理解しているように見えるか?」
「見えないね。終わるまで気づかない方に賭ける」
「私もだ」