黑野羊
2024-03-24 00:33:08
4636文字
Public 意味不明小説
 

意味不明小説《2》

意味不明で、ちょっと怖い、不条理だったり、シュールだったりする、短いお話集
掲載作品)
白い悪魔/カランからん/質問。/少年と猫/小噺:マクラ/檻/歪/櫃/書/白



ナイフを持った手が震えていた。
ぎらついた赤い色が、自分を責めているようだ。


だって、こうでもしなければ。


私はとある男に監禁されていた。

見ためのいい、優しい男だった。
しかし、あるときから、男は豹変した。

機嫌の悪い時は暴力を、良い時はまるで子供のように。
どちらが本物の彼か分からないまま、ずるずると付き合い続けた。

彼は私の全てを拘束していた。
着る物から日々の予定、揚げ句、トイレの時間すらも。

嫌だった。

けれど、逆らえば殴られる。
私は逃げられなかった。


彼の口癖はいつも

「お前のためなんだ」

痣だらけの私を見つめて、どうしてソンナコトを言うのだろう。




果てた彼の側にナイフを置き、私は服を着替えた。
腕や首にくっつけられていた透明の柔らかい鎖を外し、淡い水色の、何の飾りもない服を脱ぎ捨てる。
肌触りの不思議な、それは素晴らしい装飾を施された服に着替える。

そう、これが着たかったの。
女ですもの。

棚の奥にしまわれていた化粧ポーチを取り出す。私が先程まで横たわっていたベットに腰掛け、鼻唄を歌いながらファンデーションを叩く。
アイライナーもきっちりと、引いた。

そう、これがやりたかったの。
女ですもの。

足元には、赤黒く染まりゆく遺体。

知らないわ、もう。

私はこの白い部屋の檻から出られるのだから。



颯爽と扉を開け、廊下を出る。
白くて飾り気のない服を着た女性達に呼び止められたが、知らないふりをした。
彼女らは私に嫉妬してるの。
ただそれだけ。


自由への扉を開き、私は走り出した。