「ショウメイのヒ」

エガキナマキナ
/ 見上深雪・見上透夏・ヒガン
/ Event:自戒予告


 ある日の食卓を思い出していた。
 作家になると誓ったあの日。テレビに映っていたデモのニュース。

 何年か越しに、今の自分は、その最中にいる。人と人が押し合い、音楽が鳴り響き、時には没が生まれ、そうして退治されては消えていく。
 ここは賑やかだ。なにもかもが濁流のように体に流れ込み、ぐるぐると心臓が動き続ける。
 賑やかすぎるほどに騒がしい。その騒音を心地良いと思う日が来ることを、この世の中にこんなにも息ができる場所があることを、あのときの俺は知らなかった。
 だからあんなに苦しくて、苦しくて、普通の捜索じゃ救われなくて、俺は。

 俺は、俺を救う筆を守るために、ここにいる。

■ ■

 芸術とは、エネルギーの発露である。
 いつだかにそう聞いて、なぜだか不思議と腑に落ちたことを覚えている。夏の日。敗北を受け入れてしまった日から、僕の芸術が喪われたからだろうか。

 それを思えば、彼らこそが芸術家なのかもしれぬ。
 規制されても規制されてもなお声を張り上げる。例えそれが負け犬の遠吠えに終わろうとも、革命に至らず反乱に過ぎぬとも、その声だけは残り続ける。
 それが芸術だ。血を流すほどの痛みを伴ってなお紡がれるのが芸術だ。

 それを知っていて、それを羨んでいて、それを憎んでいて、僕は、それでもここにいる。
 諦めてしまえと、怨嗟の声が臓腑の奥から響いている。
 僕の筆は、 筆は……なんのためにあるのだろうね。