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アスナショウコ
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【創作|馬子軸】アンシーリーコート
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外伝 バスカヴィルの魔犬【中編】
あらすじ
舞台は英国。不可思議な事件を巡る、残された者の物語――。
ベイカー・ストリート221Bに暮らす小説家、エマ=ジェームズ・ワトソンにある人物からとある純血貴族の不可解な死を解き明かしてほしい、と依頼が届く。忽然と姿を現した魔の犬。青い炎を吐き出す口、真っ黒なその犬に狂気を見出して死んだ男。これは殺人か、それとも神秘の気紛れか? ワトソンとシャルルマーニュはその地、ダートムーアへと向かう。
前編→
https://privatter.me/page/6596ce95596b9
後編→
https://privatter.me/page/659d3ad0c5cc4
2024/1/9追記 終わりそうなので数字消しました。後編の量おかしいやん?とか言わないで。泣くぞ。22歳成人のガチ泣き披露するからな。
感想や応援よければ→
https://wavebox.me/wave/b064pup7uhwd9l39/
スペシャルサンクス:笋様、Littorio様
いつも遊んでくださってありがとうございます。
笋様より『鳥の一族』の皆さまのお名前や一部語録などをお借りしております。
Littorio様より『渡りの一族』の皆さま、アマネセール家の御家名をお借りしております。
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__深夜
犬の遠吠えが新月の夜を劈く。
ベリル・イライザは大地に響き渡るような恐ろしい声に震えながら、明かりを片手に東屋の方向へ向かった。
ダートムーア周辺の夜はとても冷える。霧も出始め視界が悪くなってきた。肩にかけていたカーディガンに袖を通し、ベリルは足早に東屋の方向へ向かう。自分の立てる足音が妙に周囲へ響き、反響しては少し水分を含んだ地面に溶けた。
ガサガサと何かが動く音を聞く。ベリルは薄気味悪さを感じて足を止め周囲を見回す。早く東屋に行こう__そう思いベリルは、風が悲鳴を立てる暗闇の中に進む。
小さな蛾がベリルの持つ懐中電灯に留まる。手で振り払えど蛾は光に集まり、ベリルは数度の格闘の後諦めて放置し、もうすぐだと目の前に見えた東屋にあるガーデンチェアーに手をかけた。
「
……
何よ。誰もいないじゃない」
寒さで体が震える。吐く息が初夏だというのに白く、ベリルは周囲を何度も見まわす。
無音の暗闇が広がる沼沢地から何かが迫ってくるのではないかと思われるほど、生物の気配が色濃くそこにはあった。だがそこには凡そ尋常な生物の気配は無く、黒い面がひたすらに塗りたくられている様は狂気を煽るには十分過ぎた。
「あ
……
!」
ベリルは弾かれたように走る。背後から何かが追いかけてきているのが分かったのだ。だが追撃者の影は無く、音もなく、走っている内に足が縺れて上手く動かせなくなり、重く深く沈み込む。
「嘘、何で
……
!? だって私
……
屋敷の方向に
……
!」
屋敷の方向に走っていたはずなのに、気づけば目の前にはあらゆる生命を飲み込む沼沢地の底なし沼が口を開けている。ベリルは思わず立ち止まって背後を確認した。
背後には何もない。暗闇があるだけである。空の黒と地面の黒が溶けあい境目が分からない。ベリルは逃げなければという焦燥感にかられるが、前へ行けば底なし沼、戻れば追跡者の襲撃を受ける。
ベリルは一か八かと沼沢地へと踏み出す。ずぶ、と足が深く沈み込み、前へ踏み出そうと足を動かすとさらに深く沈む。
足を取られては逃げられない__ベリルは必死で藻掻く。もう片方の足を堅そうな地盤に置き、勢いをつけて沼に刺さった足を引き抜く。この道なら逃げられる。この硬い所を通れば背後から来る『何か』を振り切り逃げ伸びることができる。
「チャールズ卿も馬鹿ね。ちゃんと確かめればこの程度__」
油断。
ざしゅ、と何かが切れる音が響いた。ベリルの顔に生温かいものがかかる。
「あれ?」
左腕があったはずの場所からぼたぼたと赤黒い液体が漏れ出ている。血液? どうして。私の身に何が起きているの? 状況を把握できずベリルは呆然と自分の左腕があったはずの虚空を眺めていた。
直後衝撃が彼女の右腹部を叩く。何かが食いついている。ベリルは漸く自分の置かれている状況を理解した。
__私は今、生きたまま捕食されている。
「あ、あ、あああぁああ!!!! 痛い、痛__痛いッ、痛い、痛い!!」
その絶叫に反応してもう一頭『何か』が顕れる。今度は左肩に強い衝撃があった。深く食い込んだ牙が脳髄まで激痛で犯す。
右太腿、首、左足。犬に似た何かが食いつき、肉を食い千切る。血管が破けて血液が吹き出す。
「嫌だ
……
嫌だぁ
……
!! 死にたくない
……
! 死にたくない
……
!!」
ベリルは泣き叫びながらのたうち回る。魔犬か、それともこの世の理から外れた猟犬たちか。
血が、肉が、犬を呼ぶ。飢えた獣がゆっくりとこちらへ歩みを進めてくる。
線と面が彼らの足だ。時間や空間という首輪から解き放たれている何かは、よく訓練された猟犬のように秩序を持って動いている。
「ゆ、赦して、お願い!! 私が悪かった、私が間違ってた!! だから__」
無駄な祈りが響く。暗闇は死を彩った。
犬の遠吠えが深い夜に溶けていく。
後はありとあらゆる肉を食い千切られた、ベリル・イライザの死体が残るだけだった。
続く
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