ひさね
2023-09-02 20:41:17
8222文字
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納涼祭

夏が終わるそうなので書いたホラーっぽいの。少しだけグロめの気色悪〜い話もある。


(ソウの話)
 出し抜けになに? 納涼のために怖い話、聞いて回ってるの? わざわざ皆に。皆答えてくれたって。……じゃあ、少しだけ話すよ。怖い、というか、釈然としない感じだけれど。
 
 大分昔の話だよ。まだこの街にいなかった頃の話。
 その街に、変な噂、というかニュースがあったんだ。首が切られた鳩の死体が見つかったって。頭は見つかってない。しかも一つとか二つじゃなくて、小さめのゴミ袋にみっちり入るぐらいの数が、路地裏に転がってたみたい。
 誰がやったかも、目的もわからない。悪魔信仰とか、何かの予兆だとか、結構な騒ぎになってた。
 おれはあまり気にしてなかったよ。そんなの気にしていたって、仕方がないから。
 だから、普通に、いつも通り夜に出かけてた。……朝とか、太陽が上がっている時間帯だと、目が痛くて動けないからさ。
 確か月もなかった日だと思う。真っ暗で本当に何も見えなかったから、多分そう。
 少し、路地裏の辺りで捜し物をしていたら、ふと変な臭いがしたんだ。かび臭いというより、なんか鉄臭さとか生ゴミの臭さとか、色々混ざってて、凄く不快だった。
 不快だったけど、どうしても離れるわけには行かなかったから、臭いの元になるべく近づかないために、場所の方向を特定する必要があると思って。臭いがする方を見たんだ。
 そうしたら、案外近くにあったんだ。首のない鳩が。目の前の路地に転がってた。
 ああ、あのニュースは本当だったんだ、とか、気色悪いな、とか。それなりに驚いたから、呑気にそんなこと、考えてた。
 その胴体、路地の奥に点々と転がっていて、気がついたら目で辿ってたんだ。そして、最後の胴の先にあったんだよ。
 鳩の頭。
 変な図柄が描かれた円の上に、ぐるりと並んでた。……今思うと、いわゆる魔法陣だったのかも。あの円。
 びっくりして声も出なかったよ。流石に。
 しかも、その円の中に黒いローブみたいなのを着た人もいたんだ。ぼうっと突っ立って、空というか、虚空を見てた。我ここにあらず、みたいな、そんな感じに見えたんだよ。本当に。
 さっさと逃げようと思って、そっと後ずさりしたら。そのローブの人の、足元に何かあるのに気がついたんだ。本当に暗くて、しかもその人の足越しに見たから、あまり確かではないけれど。
 それは鳩の頭よりずっと大きくて、確か、その人の身長がわからないけど、多分脛の半分ぐらいの高さだった。丸みもあって自立してたし、あと、白いというか銀糸の束があったのか、少しキラキラしてた。
 でも、それが付いている地面が、影が落ちているにしたって、ものすごく暗く見えて。しかも広がっているようにも思えて。
 少しだけ声を出しちゃったんだ。そうしたら、ローブの人がゆっくりと首を回したんだ。こっちに顔を向けられた顔もよくわからない。フードを目深に被ってると、意外と見えないんだよ。それでも、目があった気がして。
 ここで、ようやく、逃げ出したんだ。全速力で走ったよ。振り返らず、なるべく明るい方へ。繁華街のまあむあ人通りがあるところまで逃げてきて、やっと後ろを確認したよ。ローブを着た人は、どこにもいなかった。でも寝ることもできなかったから、ずっとうるさい繁華街にいたよ。この時ほど、繁華街のネオンに感謝したことはないね。
 で、その後すぐに、おれはその街を出ることにした。それでここに来て現在に至る、という話。
 
 結局目的は知らないよ。そんなのに深入りして火傷するのは嫌だし。魔法陣を、鳩の首で囲むような変なのに突っ込んでいったら、生きていけないよ。
 ……それに、今思えば、だけど。
 あの、足元のあれ、首だったのかもしれないなって。だって、あれも魔法陣の上にあったから。