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玲緒
2021-03-01 23:53:10
8466文字
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#sansterweek2021
Twitter企画#sansterweek2021に寄稿した小説のまとめになります。
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Day 2: Coffee
三月一日
合流した、次の日の朝。
「それじゃあ、行ってくるぞ!」
「おう、しっかり特訓してこいよ」
玄関先で、サンズは弟である長身のスケルトンを見送った。
今日から一週間、弟は合宿とやらで不在となる。
不思議なことに、昨年も似たような経緯で弟は一週間ほど家を空けた。ちょうど、彼が滞在する間だけ、自然と兄から離れるように。
「出かけたのかい?」
パタンと扉の閉まる音がして、すぐさま背後から声がかかった。振り返れば、そこには黒いローブに白いタンクトップのセーターを着た男がひとり。弟が出かけていった事を確認して、サンズの部屋から抜け出してきたのだ。
「あぁ、合宿とやらで出かけたぜ」
「そう、頑張っているんだね」
「
……
」
玄関を見つめ、少し寂しげに目元を緩ませる姿を見て、会ってやればいいのにと思いつつも、口に出すことはできなかった。
そもそも、唐突に姿を消したはずの彼が、今目の前にいること自体が信じられない現象なのだ。
昨年と違う事をしたらどうなってしまうのか
……
この現象にどう作用するのかもわからない以上、サンズにはどうする事もできない。だから、何も言えなかった。
弟が出かけて行った後、二人きりで遅い朝食を摂る。
「ほい、コーヒー」
コトリ、と音を立てて置かれたマグカップには、ちょっとだけ濃いめに淹れたコーヒーが入れられている。
「ありがとう、いただくよ」
そう言って、彼は穴の空いた手でそっとマグカップを手にとった。淹れたてのコーヒーをひと口啜り、目を細める。
「君の淹れてくれるコーヒーも、久しぶりだ
……
」
昔はよく淹れてくれてたよね、と懐かしそうに呟く彼の表情は、やはり何処か寂しげだった。サンズは、昨夜のように笑ってもらいたくて、必死に話題を捻り出す。
「飲みたいんなら、此処に居る間、いくらでも淹れてやるよ。えっと、一週間
……
だったか?」
「うん、一週間だね」
理由は知らないが、彼は一週間しかサンズの前にはいられないと言う。
「それが過ぎたら、また来年
……
何もなければね」
そう告げる彼の表情は、寂しさを通り越して無に近くなってしまった。まるで、わざと表情に表さないようにしているかのようで、それが逆に、見ていて辛い。
かと思えば、どうやったら笑ってくれるのかと模索し始めたサンズの意識に、不意に彼の楽しげな声が響く。
「そういえば、あの頃よりも淹れるのが上手になったね」
わざと明るく振る舞うような声音は、まるでサンズの心境を読み取ったかのようで
……
些か申し訳ない気持ちになった。
寂しく思っているのは、自分だけではないというのに
……
。
「そうか?」
「うん。あの頃のは
……
結構苦かった」
過去を思い出して苦笑いする彼を見て、サンズも過去に思いを馳せた。
研究員時代。徹夜続きだった彼からコーヒーを所望されたことがあった。眠気覚ましに淹れて欲しいと言われたものだから、少し濃いめに淹れたのだ。だが、思えばあの頃は淹れ方なんてほとんど知らなくて、豆の量だって適当だったし、挽いたら挽いた分だけ使っていた。それでも、彼は毎回飲んでくれた。
「今は、苦味はあれど、とても美味しいよ」
淹れてくれてありがとう、と優しく頭を撫でてくれる大きな手に、サンズは照れくさそうに笑みを浮かべた。
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