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2023-06-16 23:54:21
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Public 拳コユ
 

【よよ恋2展示作品】day by days (わやわや学パロ拳コユ)

今年の1月に頒布し完売済の再録集に収録していたわやわや学パロ拳コユのweb再録に書き下ろし追加したものです。自分でも設定はよくわかってないので、一ページ目のなんとなくの設定をお読みいただき、あとはフィーリングでお願いします。※公式で出た学パロとは全く別物です一切踏襲してません※気が向くと増える



4.

 進路について悩んでいて、ご相談したいんです。
 そう伝えれば、先生は気を使って人払いをして、進路指導室で待っていてくれた。相談したかったのは嘘ではない。気になっている大学のパンフレットと学部の案内、直近のテスト結果を入れたクリアファイルを先生に渡す。
 先生はどれどれ、とおどけながら紙を取り出して数字を確認すると、至極まっとうなアドバイスをいくつかくれた。
 机を挟んで向かい側、先生の顔をぼんやり眺める。
 心地よい声で空気が揺れる。この声が教科書を読み上げるとき、わたしはいつもうっとりしてしまう。小説も論文も詩も随想も、勉強しているときはただの文字の羅列にしか思えなかったものたちが、彼の声に乗せられた瞬間、世界が広がって深みが増す。
 テーブルにはマグカップが二つ。先生のにはコーヒー、わたしにはココア。インスタントなのはわかっている。先生が淹れてくれた安っぽい味が大好きだった。
 先生は紙見ながら何か言ってる。お前さんはどう思う? そう聞かれた。ので、答えた。

〝好きです〟
…………ン?」

 数秒置いて、先生がひっくり返った声を上げた。
………………あれ?〟
 ココアの香りと心地よい響きでぼやけていた世界が急速に戻ってくる。今わたし、何か、いけないことを口走ったような。
 思考がゆっくりと回り始めた、瞬間。ガラガラーッとけたたましい音を立てて、進路指導室のドアが開いた。ドア枠に板がぶつかり、大きな音が上がる。わたしも先生もびくんと肩が跳ねた。
「理事長がお呼びだ」
 凛とした声で空気を割いたのは、数学のミカエラ先生だった。ミカエラ先生は目元を覆うマスク越しでもわかるほど長いまつ毛に縁どられた目でわたしを見ると、器用に片眉を上げた。宝石のように美しい双眸で射貫かれて、怒られていないのに思わず居ずまいを正す。
……すまない、先約か」
「っ、お、あぁ、いや」
「急ぎらしいが出られるか?」
〝っあの、大丈夫です。帰ります〟
 一応話は済んでいる。お父さんに確認してくるように言われたことも聞けたし、先生は丁寧にメモを添えてくれていた。全ての書類を受け取って鞄にしまう。
「コユキ、すまんな、気をつけて帰れよ」
……はい、ありがとうございました。さよなら拳先生、ミカエラ先生〟
「さようなら、また明日」
 拳先生はどこかぼんやり、ミカエラ先生はほほ笑んでわたしに手を振ってくれた。
ぺこりとお辞儀して、進路指導室を出る。ココア、飲み切れなかった。もったいないことをした。

 家でパンフレットに挟まったメモを見た瞬間自分が何を言ってしまったのかをようやく自覚して、枕を抱えて悶絶したのはまた、別の話。



……た、助かった。どうも、先生」
……
……み、ミカエラ?」
「私に話しかけるな淫交教師」
「何にもしてねえされてねえするつもりもねえ!」